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「認知科学のススメ」シリーズ 2

コワイの認知科学

監:日本認知科学会
著:川合 伸幸
著:内村 直之

紙版

内容紹介

◆コワさを知ることの意味
  コワいということを縦糸に,進化,発達,脳内メカニズム,遺伝子多型性,子どものおかれた社会状況などについてみてきました。コワいという気持ちはやっかいです。できれば,こういう気持ちを持たずに暮らしたいと誰しもが考えるでしょう。しかし,わたしたちは,コワいという気持ちから逃げることはできません。うまくつきあっていくためには,それがどのようなものであるのかよく知ることです。
 ここまで書いていてふと思い出しました。わたしの指導教授の研究室にはさまざまなカエルの置物がありました。さぞかしカエル好きなのかとお思いでしょうが,そうではありません。先生はカエルがコワいのです。なんとかして,カエルの恐怖に慣れようとしていました。そのことを代々の研究室の学生たちは知っているので,旅行に行っては珍しいカエルの置物を見つけて買って来るので,やがて先生の部屋はカエルだらけになったのです。落語のオチのような話です。
――(エピローグより)

 第2巻では、できれば無くしたい「コワさ」の謎を探求します。あの生き物はなぜコワいのか、コワいという気持ちはどのように生まれるのか。コワさを和らげるヒントも分かるかも?

目次

コワイの認知科学 目次
まえがき
1 章 コワいってなんだろう?
 子どもにとって「コワい」は一大事
 「コワい」と似て非なる「不安」
 楽しさとしての「コワさ」
 「コワい」を題材にした文学
 ホラー映画の文化的違い
 「コワい」は「悪く」ない
  Box 情動と感情
  Column 病気としての「恐怖症」

2 章 コワいのは生まれつきか,経験か?
 コワいことは「経験」によるものか?
  Box 経験によって好き嫌いを形成する学習――古典的条件づけ
 進化の過程で脳に保存されたコワがるメカニズム
  Box 味覚嫌悪学習と準備性
 こころに刻まれた恐怖とは……
  消し去りがたい恐怖
  実際に生じた以上に見積もるコワいできごと
 コワい対象を検出するシステム
 ヘビは早く見つけられる
  Box 仲間はずれを見つける実験――視覚探索実験
  ヘビの姿は眼に飛び込む
  Column ヒトとヘビ
 ヒトは生まれつきヘビをコワがるか?
 ヘビに敏感な幼児たち
  幼児もヘビに敏感に反応
 赤ちゃんもヘビをコワがるか?
 ヘビとコワがっている声を結びつける赤ちゃん

3 章 サルはヘビのなにがコワいのか?
 これまでに見たことがないヘビに対するサルの反応
 ヘビのコワさはウロコがポイント?
 ヒトはウロコのないヘビをコワがらない
 サルもウロコのないヘビをコワがらない
  Column ヒトのこころ,動物のこころ――比較認知科学の世界
 恐怖反応の強さは「それぞれ」
 遺伝子の個人的違いが生むこころの多様性
 サルと遺伝子多型性

4 章 ヘビに対する敏感反応
――脳波やノイズテストによる検証
 ヘビを見ると大きな脳波が出現する
 ノイズからヘビを探す
  Box 脳の情報処理とマーの3 つのレベル
 ヘビを見つけるシステムにおける3 つのレベル

5 章 クモはヘビのようにコワいのか?
 クモは危険ではない
 ヘビとクモのコワさを比べる
  仲間はずれを探す実験でのヘビとクモ
  ヘビとクモはどのくらい注意を「拘束」するか
 クモはヘビほど注意を惹きつけない
  Column ゴキブリはコワいのか,気持ち悪いのか
 脳波の測定やノイズテストからみるクモ恐怖
  脳波で調べる
  ノイズの中から見つける
 サルはクモをコワがらない
 ヘビ恐怖とクモ恐怖の起源は違う!?
  Box 昆虫学者はクモを「コワがる」?

6 章 コワさを抑える
 コワさを克服する秘訣
 恐怖抑制のメカニズムとは?
 コワがらない人とは?
  Box ジェットコースターとお化け屋敷

7 章 他人をコワがるとき
 経験して知るコワさ
 怒り顔も注意を惹く
 サルも怒り顔を早く見つける
 怒り顔に恐怖を感じやすい人たち
 幼少期の虐待は恐怖の抑制機能を弱める
 仲間はずれにされるコワさ
  Column ケータイが使えないことの恐怖

エピローグ――コワさを知ることの意味

あとがき
文献一覧
索引

                          装幀=荒川伸生
                          イラスト=大橋慶子

ISBN:9784788514591
出版社:新曜社
判型:4-6
ページ数:130ページ
価格:1600円(本体)
発行年月日:2016年02月
発売日:2016年02月26日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:VSP