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第一次大戦の〈影〉

世界大戦と日本文学

著:中山 弘明

紙版

内容紹介

◆あれは「海の彼方の戦争」だったのか?◆

従来、第一次世界大戦は、海の彼方で行なわれた戦争で、日本人にとっては、高見の見物であり、漁夫の利を得た戦争、と言われてきました。しかし、この初めての〈世界戦争〉は、ヨーロッパに甚大な被害をもたらしたのはもちろんですが、日本にも重大な影響を与えました。日米決戦の台本はこの時に作られたと言ってもいいでしょう。本書は、当時の新聞や雑誌、さらには「社会講談」、演劇、短歌、落首などの一見「些末な」題材を手がかりに、世界戦争が人々に与えた影響を具体的に明らかにします。レマルク『西部戦線異状なし』の日本での人気、米騒動と落首、民主主義と戦争の密接な関係など、興味深い視点から〈文学〉と〈戦争〉の関係をさぐる、気鋭の意欲的な試みです。

目次

第一次大戦の〈影〉─目次

序章 第一次大戦と日本文学
1 世界戦争を問う 
2 本書の見取り図 
3 「第一次大戦」という用語 

Ⅰ 戦争論の時空
第一章 生田長江の戦争論─第一次大戦期の批評言説
1 論争の暴力性 
2 生田長江の不快感 
3 文士、立候補する 
4 二つの戦争論 

第二章 中澤臨川の批評言説─世界戦争と〈科学〉
1 忘れられた批評家 
2 「狂熱せる工学士」 
3 ベルグソンの時代 
4 盗用と批評言説 

Ⅱ 世界戦争とメディア言説
第三章 報道言語の中の世界戦争─杉村楚人冠と大庭柯公
1 紙の中の戦争 
2 『神経病時代』と新聞 
3 「印象批評」論争 
4 二つの戦時報告 

第四章 『第三帝国』の岩野泡鳴
     ─第一次大戦期のメディアとジェンダー
1 『第三帝国』という雑誌 
2 「二重生活」論争 
3 離婚闘争とジェンダー 
4 戦争論と選挙論 

Ⅲ 第一次大戦とパフォーマンス
第五章 〈社会講談〉という戦法─世界戦争と民衆芸術
1 〈社会講談〉という試み 
2 伝統主義とは何か? 
3 講談を創りかえる 
4 〈社会講談〉の戦略 
第六章 坪内逍遙のデモクラシー─世界戦争とページェント
1 「文化戦争」とは何か? 
2 早稲田騒動 
3 ページェントとデモクラシー 
4 ページェントの出典 
第七章 現象としての〈レマルク〉─舞台の上の世界戦争
1 『西部戦線異状なし』ブーム 
2 秦豊吉という翻訳者 
3 戦争の劇化 
4 検閲と戦争 

Ⅳ 第一次大戦の現象学
第八章 〈赤光〉の時代─第一次大戦期の短歌表現
1 「短歌滅亡論」の周辺 
2 伊藤左千夫の死因 
3 短歌と世界戦争 
4 『赤光』模倣歌 
第九章 落首と米騒動─危機の時代の短歌
1 落首というコンセプト 
2 与謝野晶子と河上肇 
3 米騒動と戯れ歌 
4 安成二郎の落首 

第一〇章 野口米次郎の翻訳言語─第一次大戦期の日本文化論
1 二人のノグチ 
2 タゴール来日 
3 野口の英国講演 
4 三つのテクスト 

Ⅴ 〈戦後〉へ
第一一章 〈荒地〉のメディア論─戦争・コラム・ミステリー
1 二つの世界戦争 
2 『荒地』とミステリー 
3 鮎川の中のアメリカ 
4 コラムの諸相 

注 
あとがき 
関連略年譜 
索引 
装幀─虎尾隆


ISBN:9784788513150
出版社:新曜社
判型:4-6
ページ数:336ページ
定価:3200円(本体)
発行年月日:2012年12月
発売日:2012年12月14日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ