甦る『ゴンドラの唄』
「いのち短し、恋せよ、少女」の誕生と変容
著:相沢 直樹
内容紹介
◆流行歌のなかに「永遠」をさぐる!◆
「ゴンドラの唄」をご存じでしょうか。大正時代に一世を風靡した流行唄です。同じ頃にはやった『カチューシャの唄』に比べて、現在ではあまり知られていませんが、「いのち短し、恋せよ乙女」の歌詞を聴くと、ほとんどの人は、「ああ知っている、聞いたことがある」と反応します。本書は、この歌が、どのようにして誕生したか、作者は?など、誕生にまつわる話をさぐったあと、忘れられていたこの歌を戦後甦らせた黒澤明監督の映画『生きる』に、どういう経緯で主題歌として採用されたかなどを紹介します。さらに、この歌のことなどほとんど知らない現代の若い人たちが好むコミックや音楽にまで、「いのち短し、恋せよ乙女」のフレーズが使われている現状を紹介します。『その前夜』という新劇の劇中歌に使われたこの歌が、なぜいまなお歌い継がれているのか、その秘密をさぐる、学問的にも、読み物としても面白い一冊です。
目次
甦る「ゴンドラの唄」─目次
序 『ゴンドラの唄』とは
第Ⅰ部 『ゴンドラの唄』の誕生
第1章 芸術座と『その前夜』劇
1 芸術座の旗揚げ
2 第五回公演
3 『その前夜』劇登場の背景
4 楠山正雄の脚本
5 『その前夜』劇の舞台
第2章 抱月の思惑、須磨子の舞台
1 劇評
2 名倉生の酷評
3 小山内薫の注文
4 抱月の妥協芸術論と劇中歌戦略
5 浅草オペラと女優髷
第3章 失われた明日のドラマ
1 頽唐詩人の憧憬と憂鬱
2 中村吉蔵の総括
3 失われた明日
第4章 劇中歌から流行歌へ
1 中山晋平と『ゴンドラの唄』
2 六拍子のむずかしさ
3 ヨナ抜き音階と流行歌
4 三大劇中歌の命運
第Ⅱ部 『ゴンドラの唄』の詩学
第5章 歌詠みの芸当
1 『即興詩人』の影の下に
2 『ゴンドラの唄』のレトリック
3 詩人の屈折
第6章 スキアヴォーニに死す
1 ツルゲーネフと長篇小説『その前夜』
2 小説『その前夜』の作品世界
3 『その前夜』における音楽
4 水都の魔力
第7章 歌をなくしたゴンドラ漕ぎ
1 原作と脚本の齟
2 楠山脚本と劇中歌
3 アルブーゾフ脚本との比較
4 『ゴンドラの唄』挿入の謎
5 原作と翻訳・脚本の功罪
第8章 主題と変奏
1 『ゴンドラの唄』の詩想
2 ホラティウスと《カルペ・ディエム》
3 『バッカスの歌』
4 「薔薇を摘め」(1)
5 「薔薇を摘め」(2)
6 「人生の短さ」をめぐるラテン語詩句
7 『乾杯の歌』
8 「ゴンドラに乗りなさい」
9 『ルバイヤート』
10 『春夜桃李の園に宴するの序』
11 黒髪の少女
第Ⅲ部 映画『生きる』
第9章 『ゴンドラの唄』の復活
1 映画『生きる』と『ゴンドラの唄』
2 限界状況の物語
3 主題歌としての『ゴンドラの唄』
4 嘆きの歌から人生讃歌へ
第10章 死と再生のバルカローラ
1 三種の神器と開かれた物語
2 リメイクとドラマ化
第11章 数奇な縁
1 黒澤組と『ゴンドラの唄』
2 ロシア文学との因縁
3 うたのわかれ
第Ⅳ部 『ゴンドラの唄』と現代文化
第12章 『ゴンドラの唄』を歌う人びと
1 残照
2 孤独な闘い
3 愛唱されて
4 『ゴンドラの唄』の合唱
5 ステージ・パフォーマンス
6 二〇世紀のメロディー
第13章 『ゴンドラの唄』のこだま
1 平成文化と『ゴンドラの唄』
2 伝統とパロディー──大正浪漫と『ゴンドラの唄』
3 ブランコの呪縛
4 『ブギーポップは笑わない』
5 乱舞する「恋せよ乙女」
注
あとがき
略年譜
引用・参考文献
索引
装幀──難波園子
ISBN:9784788513112
。出版社:新曜社
。判型:4-6
。ページ数:336ページ
。定価:3200円(本体)
。発行年月日:2012年11月
。発売日:2012年11月20日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:AVP。