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環境と差別のクリティーク

屠場・「不法占拠」・部落差別

著:三浦 耕吉郎

紙版

内容紹介

屠場つまり食肉センター(牛や豚を屠畜・解体して食肉を生産する工場)は環境を悪化させる迷惑施設であるという周辺住民の建設反対運動から、著者の被差別部落の調査は始まりました。「そんなこと聞いてどうするん」という調査拒否と沈黙に真摯に向き合い、対話困難な相手から深い語りを導いた調査の過程が、手紙やエッセイのスタイルでいきいきと描き出されます。著者は〈批判的ソシオグラフィ〉を編み出して聞き取りを重ね、被差別の生活文化を掘り起こしてきました。〈構造的差別〉を支える規範の正体に迫るとともに、環境と差別の見えない絡み合いを解きほぐそうと試みています。

目次

◆環境と差別のクリティーク 目次
 序章 〈見えないもの〉を書く技法――批判的分析としてのソシオグラフ
1 出来事の深みへ
2〈見えないもの〉へのアプローチ
3 理論のモデル化/脱モデル化の運動のなかへ
4 表象研究からヘゲモニー分析へ

第1章 〈対話〉としての環境調査
 1 「住民参加」の諸相
 2 アセスメントと「ヒルのいない川」
 3 ホタルはいなくなったのか?
 4 治水の二つの知

第2章 屠場建設問題と環境表象の生成-- 環境の定義と規範化の力
 1 規範が生成する場所へ
 2 生活環境主義の飛躍
 3 規範化作用について
 4 「遊水地」という表象
 5 表象しえぬものの表象
 6 現代的課題としてのエコ・ファシズム

第3章構造的差別と環境の言説のあいだ
 1 二つの情景から
 2 屠場をめぐる構造的差別
 3 中小屠場と環境問題
 4 用地選定をめぐって
 5 教育環境としての屠場
 6 屠(ほふ)るということ

第4章屠場にて――私のフィールドノートから

第5章牛を丸ごと活かす文化とBSE

 1 肉骨粉の謎を追って
 2 牛を丸ごと活かす文化
 3 〈牛を丸ごと溶かす文化〉の到来
 4 BSE問題と私たち

第6章 環境のヘゲモニーと構造的差別――大阪国際空港「不法占拠」問題の歴史にふれて
 1 環境利用と構造的差別
 2 大阪国際空港「不法占拠」問題と集団移転施策
 3 「環境をめぐる支配」のヘゲモニー分析

第7章 被差別部落で聞く
 1 調査を断られるとき
 2 聞き取り調査がうみだすもの
 3 差別と向きあう方法としての聞き取り調査

第8章 「よそ者」としての解放運動――湖北における朝野温知の運動の軌跡
 1 むらのなかの「オンチさん」
 2 むらの気風と同和対策事業
 3 蜜月
 4 むらの生活文化
 5 距離
 6 信楽会館
 7 運動と自治

第9章 被差別部落への手紙
 「手紙」に託すメッセージ
 第一の手紙 生活の深みへ
 第二の手紙 穢(けが)れとつきあう
 第三の手紙 処世の知恵

あとがき
参考文献

ISBN:9784788511491
出版社:新曜社
判型:A5
ページ数:232ページ
定価:2200円(本体)
発行年月日:2009年03月
発売日:2009年03月30日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JHB