出版社を探す

量子力学選書

場の量子論 II

ファインマン・グラフとくりこみを中心にして

著:坂本 眞人

紙版

内容紹介

 好評既刊『場の量子論-不変性と自由場を中心にして-』(ISBN 978-4-7853-2511-4)の続刊として、本書ではファインマン・グラフを駆使しつつ、場の量子論において相互作用をどのように取り扱うかをできる限りわかり易く説明し、くりこみなどの理論的枠組みを理解してもらうよう努めた。
 論理の飛躍をなくして、議論の流れを一歩一歩着実に追えるよう、他書では省かれているようなことがらにも紙面を割き、特に、すべての式を読者が確実に導けるよう導出過程を省略することなく丁寧に解説した。さらに重要な式に対してはその物理的な意味を詳しく述べた。

【主要目次】
1.場の量子論への招待 -自然法則を記述する基本言語- 2.散乱行列と漸近場 3.スペクトル表示 4.散乱行列の一般的性質とLSZ簡約公式 5.散乱断面積 6.ガウス積分とフレネル積分 7.経路積分 -量子力学- 8.経路積分 -場の量子論- 9.摂動論におけるウィックの定理 10.摂動計算とファインマン・グラフ 11.ファインマン則 12.生成汎関数と連結グリーン関数 13.有効作用と有効ポテンシャル 14.対称性の自発的破れ 15.対称性の自発的破れから見た標準模型 16.くりこみ 17.裸の量とくりこまれた量 18.くりこみ条件 19.1 ループのくりこみ 20.2 ループのくりこみ 21.正則化 22.くりこみ可能性

目次

第1章 場の量子論への招待 -自然法則を記述する基本言語-
 1.1 本書の目的 -我々は自然の真理の一端をつかむことができたか?-
 1.2 記法
 1.3 自由場の物理的解釈
 1.4 相互作用場の物理的解釈
 1.5 相互作用ハミルトニアンの物理的解釈
 1.6 場の量子論では何を計算するのか?
 1.7 量子論のもう1つの定式化 -ファインマン経路積分-
 1.8 偉大な発明 -ファインマン・グラフ-
 1.9 力とは何か? -力に対する新しい見方-
 1.10 観測量は,「裸の量」か「くりこまれた量」か?
 1.11 対称性と対称性の破れ
 1.12 自然を記述する基本言語としての場の量子論

第2章 散乱行列と漸近場
 2.1 相互作用をもつ場の量子論と散乱問題
 2.2 散乱問題と漸近場
 2.3 漸近条件
 2.4 ヤン-フェルドマン方程式
 2.5 多粒子生成・消滅演算子としての相互作用場
 2.6 物理的質量と裸の質量

第3章 スペクトル表示
 3.1 相互作用場の一般的要請
 3.2 スペクトル表示とスペクトル関数
 3.3 スペクトル表示の導出
 3.4 不変デルタ関数とスペクトル関数の性質
 3.5 ファインマン伝播関数と漸近場

第4章 散乱行列の一般的性質とLSZ簡約公式
 4.1 散乱行列の一般的性質
 4.2 一般的性質の導出
 4.3 LSZ簡約公式
 4.4 漸近条件と弱極限

第5章 散乱断面積
 5.1 断面積の幾何学的意味
 5.2 1 粒子状態の規格化
 5.3 散乱行列と断面積
 5.4 不変散乱振幅と断面積
 5.5 2 体から 2 体への散乱
 5.6 崩壊確率

第6章 ガウス積分とフレネル積分
 6.1 1 変数ガウス積分
 6.2 多変数ガウス積分
 6.3 n 点相関関数と生成関数
 6.4 フレネル積分

第7章 経路積分 -量子力学-
 7.1 ファインマンのアイデア
 7.2 シュレディンガー方程式から演算子形式へ
 7.3 シュレディンガー描像とハイゼンベルグ描像
 7.4 座標と運動量の固有状態
 7.5 ファインマン核とシュレディンガー方程式
 7.6 ファインマン核とファインマンのアイデアの実現
 7.7 位相空間での経路積分表示
 7.8 配位空間での経路積分表示
 7.9 古典極限
 7.10 自由粒子の例
 7.11 アハロノフ-ボーム効果
 7.12 時間順序積と n 点関数
 7.13 2 点グリーン関数と真空の波動関数

第8章 経路積分 -場の量子論-
 8.1 多自由度の量力学系に対する経路積分表示
 8.2 実スカラー場に対する経路積分表示
 8.3 自由実スカラー場のファインマン伝播関数
 8.4 真空期待値と iε 処方
 8.5 T 積と T∗ 積
 8.6 汎関数微分
 8.7 シュウィンガー-ダイソン方程式
 8.8 ユークリッド経路積分と有限温度の場の理論

第9章 摂動論におけるウィックの定理
 9.1 経路積分と摂動展開
 9.2 2 点グリーン関数の計算
 9.3 ウィック縮約とウィックの定理

第10章 摂動計算とファインマン・グラフ
 10.1 λ0 次の摂動計算
 10.2 λ1 次の摂動計算
 10.3 λ2 次の摂動計算
 10.4 対称因子 
 10.5 ウィックの定理と対称因子
 10.6 ウィックの定理を用いた重複度の計算
 10.7 真空泡グラフとグリーン関数

第11章 ファインマン則
 11.1 実空間でのファインマン則
 11.2 運動量空間でのファインマン・グラフ
 11.3 運動量空間でのファインマン則

第12章 生成汎関数と連結グリーン関数
 12.1 グリーン関数の生成汎関数
 12.2 生成汎関数の J2 項と J4 項
 12.3 連結グラフと非連結グラフ
 12.4 連結グリーン関数と生成汎関数

第13章 有効作用と有効ポテンシャル
 13.1 連結グリーン関数と有効作用
 13.2 有効作用とは何者か?
 13.3 連結グリーン関数と頂点関数の関係
 13.4 頂点関数と 1 粒子既約なグラフ
 13.5 有効作用の 1 粒子既約性の証明
 13.6 散乱断面積とグリーン関数の関係
 13.7 湯川ポテンシャルと力を媒介する粒子
 13.8 ℏ 展開とループ展開
 13.9 量子作用積分としての有効作用
 13.10 有効作用とエネルギー
 13.11 有効ポテンシャルと場の真空期待値
 13.12 有効作用の不変性
 13.13 有効作用の経路積分表示
 13.14 有効ポテンシャルとループ展開
 13.15 有効ポテンシャルの 1 ループ計算
 13.16 紫外発散
 13.17 くりこみのアイデア
 13.18 有限温度での 1 ループ有限ポテンシャル

第14章 対称性の自発的破れ
 14.1 対称性と対称性の破れ
 14.2 対称性の破れに対する幾何学的イメージ
 14.3 保存量のもう1つの役割
 14.4 対称性の自発的破れの指標
 14.5 Z2 対称性の破れ
 14.6 連続的対称性の破れとゼロ質量粒子
 14.7 O(N) シグマ模型
 14.8 縮退した真空状態の直交性
 14.9 マーミン-ワグナー-コールマンの定理
 14.10 南部-ゴールドストンの定理の一般証明1
 14.11 南部-ゴールドストンの定理の一般証明2

第15章 対称性の自発的破れから見た標準模型
 15.1 SU(2)×U(1)Y ゲージ対称性とヒッグス場の真空期待値
 15.2 ゲージボソンの質量とゲージ対称性の破れ
 15.3 U(1)em ゲージ対称性と電荷
 15.4 ヒッグス機構
 15.5 標準模型におけるヒッグス機構
 15.6 ユニタリーゲージにおけるゲージ場とヒッグス場
 15.7 クォーク・レプトンの質量起源
 15.8 クォーク質量行列の対角化と世代間混合
 15.9 CP対称性の破れ

第16章 くりこみ
 16.1 くりこみの必要性
 16.2 1 ループグラフの発散
 16.3 見かけの発散次数
 16.4 外線の数と見かけの発散次数
 16.5 E=6 の 2 ループグラフ
 16.6 次数勘定定理
 16.7 任意のループグラフと部分グラフの発散

第17章 裸の量とくりこまれた量
 17.1 くりこまれた摂動論と相殺項
 17.2 くりこまれた摂動論とファインマン則
 17.3 裸の頂点関数とくりこまれた頂点関数

第18章 くりこみ条件
 18.1 相殺項の任意性
 18.2 質量殻上のくりこみ条件
 18.3 くりこみ条件の物理的意味
 18.4 くりこまれた結合定数と観測量の関係
 18.5 くりこみ条件の一般化
 18.6 有限くりこみ

第19章 1 ループのくりこみ
 19.1 2 点頂点関数の 1 ループ量子補正
 19.2 くりこまれた 2 点頂点関数と発散の除去
 19.3 4 点頂点関数の 1 ループ量子補正
 19.4 くりこまれた 4 点頂点関数と発散の除去
 19.5 外線運動量と発散の関係
 19.6 結合定数に対する新しい解釈

第20章 2 ループのくりこみ
 20.1 中間的くりこみ条件と 1 ループ相殺項
 20.2 2 ループ 4 点頂点関数のファインマン・グラフ
 20.3 2 ループ 4 点頂点関数のくりこみ Is
 20.4 2 ループ 4 点頂点関数のくりこみ IIs
 20.5 2 ループ 4 点頂点関数のくりこみ IIIs
 20.6 2 ループ 2 点頂点関数とファインマン・グラフ
 20.7 2 ループ 2 点頂点関数のくりこみ V
 20.8 2 ループ 2 点頂点関数のくりこみ VI
 20.9 ループ展開とくりこみの一般的手続き

第21章 正則化
 21.1 運動量切断正則化
 21.2 パウリ-ヴィラス正則化
 21.3 パウリ-ヴィラス正則化と 4 点頂点関数のくりこみ
 21.4 パウリ-ヴィラス正則化と 2 点頂点関数のくりこみ
 21.5 次元正則化のアイデアと利点
 21.6 次元正則化と 2 点頂点関数のくりこみ
 21.7 次元正則化と 4 点頂点関数のくりこみ
 21.8 次元正則化における注意点
 21.9 MS スキームと MS¯¯¯¯¯¯¯ スキーム
 21.10 ループ積分で使われる有用な公式

第22章 くりこみ可能性
 22.1 自然の法則を記述する言語としての場の量子論
 22.2 相互作用と次元解析
 22.3 一般の相互作用に対する見かけの発散次数
 22.4 相殺項
 22.5 くりこみ可能性と理論の分類
 22.6 くりこみ可能な理論としての標準模型
 22.7 くりこみ不可能な理論は意味のない理論か?

著者略歴

著:坂本 眞人
神戸大学准教授、理学博士。1985年 九州大学大学院理学研究科博士後期課程修了。日本学術振興会奨励研究員、京都大学基礎物理学研究所研究員、神戸大学助手・助教等を経て現職。

ISBN:9784785325121
出版社:裳華房
判型:A5
ページ数:592ページ
定価:6500円(本体)
発行年月日:2020年09月
発売日:2020年09月23日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PH