出版社を探す

物理学講義 量子力学入門

その誕生と発展に沿って

著:松下 貢

紙版

内容紹介

 量子力学とは、私たちの直観が通じないミクロな世界の現象を、どのようにとらえ、どのように考えるのかについての学問分野である。本書は、初学者にはわかりにくい量子力学の世界を、おおむね科学の歴史を辿りながら解きほぐし、量子力学の誕生から現代科学への応用までの発展に沿って丁寧に紹介した入門書である。
 他書で多く見られるように、初めから量子力学が出来上がったものとして解説するのではなく、量子力学がどうして必要とされるようになったのかをスモールステップで解説することで、量子力学と古典物理学との違いをはっきりと浮き上がらせ、初学者が量子力学を学習する上での“早道”となることを目標にした。
 なお、量子力学の既習者には、かつての物理学者が古典物理学の範囲内でどのように格闘したかを学習することで、物理学一般の復習と理解にも繋がるであろう。

目次

はじめに -なぜ量子力学を学ぶのか-

1.原子・分子の実在
 1.1 化学における原子・分子の概念の確立
 1.2 元素の周期表と原子番号
 1.3 ブラウン運動とアボガドロ定数の決定
 1.4 まとめとポイントチェック

2.電子の発見
 2.1 電気分解とファラデーの法則
 2.2 電子の発見と比電荷の測定
 2.3 ゼーマン効果
 2.4 電気素量の測定
 2.5 まとめとポイントチェック

3.原子の構造
 3.1 トムソンの原子モデル
 3.2  α 線による散乱実験
 3.3 ラザフォードの散乱公式
 3.4 まとめとポイントチェック

4.原子の世界の不思議な現象
 4.1 水素原子の発光スペクトル
 4.2 異常ゼーマン効果
 4.3 物質の比熱
 4.4 金属の電気伝導
 4.5 まとめとポイントチェック

5.量子という考え方の誕生
 5.1 空洞放射
 5.2 熱放射の分布則
 5.3 プランクの熱放射式とプランク定数
 5.4 エネルギーの量子化
 5.5 固体の比熱の量子論
 5.6 光電効果と光量子仮説
 5.7 まとめとポイントチェック

6.ボーアの古典量子論
 6.1 ラザフォードの原子構造の困難
 6.2 ボーアの量子論
 6.3 まとめとポイントチェック

7.粒子・波動の2重性
 7.1 結晶によるX線回折
 7.2 コンプトン効果
 7.3 ド・ブロイの物質波
 7.4 波動力学の誕生
 7.5 水素原子のエネルギー準位
 7.6 まとめとポイントチェック

8.量子力学の誕生
 8.1 シュレーディンガー方程式
 8.2 確率振幅としての波動関数
 8.3 電子の位置,運動量,エネルギーの平均値
 8.4 不確定性原理
 8.5 1次元調和振動子のエネルギー準位
 8.6 井戸型ポテンシャルのエネルギー準位
 8.7 まとめとポイントチェック

9.量子力学の基本原理と法則
 9.1 量子力学の基本原理
 9.2 演算子の基本的な性質
 9.3 物理量の測定に関する基本法則
 9.4 固有関数の規格化直交性
 9.5 物理量の測定値の確率と平均値
 9.6 物理量を表す演算子の特性
 9.7 運動の法則
 9.8 まとめとポイントチェック

10.量子力学の応用
 10.1 自由粒子
 10.2 2状態系
 10.3 同種粒子系の量子力学
 10.4 結晶中の電子
 10.5 まとめとポイントチェック

付録
 付録A 物理の立場から見た気体の原子・分子
 付録B アインシュタインのブラウン運動の理論
 付録C 電場および磁場がかかっているときの電子の軌道計算
 付録D ローレンツによるゼーマン効果の説明
 付録E 微分散乱断面積
 付録F ラザフォードの散乱公式
 付録G 空洞内の電磁場のエネルギー密度
 付録H ブラッグ反射の公式

著者略歴

著:松下 貢
中央大学名誉教授、理学博士。 1943年 富山県生まれ。東京大学工学部卒業、東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。日本電子株式会社開発部、東北大学助手、中央大学助教授、同 教授等を歴任。

ISBN:9784785322540
出版社:裳華房
判型:A5
ページ数:292ページ
定価:2900円(本体)
発行年月日:2017年06月
発売日:2017年06月30日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PH