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数学基礎論序説

数の体系への論理的アプローチ

著:田中 一之

紙版

内容紹介

 意味と形式の織り成す世界へ――。

 数学基礎論の入門から最先端までを、大胆な構成と精緻な記述で探る。21世紀の数学基礎論を切り開く力作。

● 「第1部 数理論理学入門」では、数学基礎論の基本ツールとなる数理論理学を初学者に向けて丁寧に解説する。1階論理のエッセンスをゲーデルの完全性定理を中心に学ぶ。

● 「第2部 自然数と実数の形式体系」は数学基礎論の入門編で、自然数論に関するゲーデルの不完全性定理や、実数論に関するタルスキの完全性など、1970年頃まで(「逆数学」誕生以前)の数学基礎論を展望する。

● 「第3部 2階算術と逆数学」では、数学基礎論の新しいプログラム「逆数学」とその周辺に焦点を当て、数学の基礎に対するロジックのさまざまな分析法を案内する。古典的な結果とともに、ラムジーの定理、無限ゲーム、超準モデルなどに関する最近の話題を紹介。とくに代数学の基本定理の超準的証明を完全収録した。

■ 数学基礎論のルネサンス
20世紀の終わりが見えてくると、技術を追求するだけのロジック研究に分野内外から批判の声が上がった。とくにアメリカ数学協会やアメリカ数学会の会長を歴任したマックレーン氏の随筆『数学の健康』(1983)に始まる一連の論争(田中一之 編・監訳『数学の基礎をめぐる論争』[シュプリンガー・フェアラーク東京,1999]に所収)に刺激されて、この分野の研究者たちは数学基礎論がどうあるべきか再考を迫られ、「ホトトギス」があちこちで鳴き出した。(「まえがき」より抜粋・一部修正)

目次

まえがき
 はじめに
 数学基礎論からロジックへ
 数学基礎論のルネサンス
 本書の構成

序章 数学基礎論の考え方
 1 数学の意味と形式
 2 射影幾何の双対原理
 3 代数構造――群を例として

第1部 数理論理学入門

第1章 等式理論
 1.1 等式の形式体系
 1.2 代数構造と準同型
 1.3 自由代数とバーコフの完全性定理
 1.4 ブール代数
 1.5 計算可能関数と一般再帰的関数

第2章 1階論理
 2.1 言語と構造
 2.2 ゲンツェン-テイトの形式体系 GT
 2.3 ゲーデルの完全性定理
 2.4 言語の拡張と理論の翻訳
 付録 多領域論理と2階論理

第3章 モデルの理論
 3.1 初等的部分構造
 3.2 ∀ 理論と ∀∃ 理論
 3.3 ホーン理論と約積
 3.4 超積
 3.5 超準解析入門

第2部 自然数と実数の形式体系

第4章 1階算術と不完全性定理
 4.1 ペアノ算術と部分体系
 4.2 算術の最弱体系 R
 4.3 体系 IΣ_1 と原始再帰的関数
 4.4 第一不完全性定理
 4.5 第二不完全性定理
 4.6 プレスバーガー算術と量化記号消去

第5章 1階算術の超準モデル
 5.1 超準モデルと過剰原理
 5.2 排除タイプ定理と終拡大
 5.3 再帰的飽和モデルと自己埋め込み定理
 5.4 麗質モデルと充足関係
 付録A 往復論法
 付録B 麗質モデルの応用

第6章 実閉体の完全性と決定可能性
 6.1 実係数の1変数多項式
 6.2 実閉順序体
 6.3 実閉順序体の量化記号消去
 6.4 複素数と零点定理
 付録A ヒルベルトの第17問題
 付録B 順序極小理論

第3部 2階算術と逆数学

第7章 実数論と逆数学
 7.1 逆数学と基本体系 RCA_0
 7.2 RCA_0 上の実数論
 7.3 実数の完備性とコンパクト性
 7.4 ケーニヒの補題とラムジーの定理
 7.5 無限ゲームの決定性
 付録A 差階層(エフェクティブ版)
 付録B ヒルベルトのプログラム

第8章 2階算術と超準的方法
 8.1 強制法とハーリントンの定理
 8.2 半正則切断とフリードマンの定理
 8.3 WKL_0 の自己埋め込み定理と超準的手法
 8.4 STY 定理――∀X∃!Yφ(X,Y) の保存性
 8.5 代数学の基本定理と RCA_0 における証明

文献案内
問題の略解とヒント
あとがき
記号一覧
索引

著者略歴

著:田中 一之
1955年 東京都に生まれる。東京工業大学理学部卒業、カリフォルニア大学バークレー校博士課程修了、Ph.D.(数学)。現在 東北大学大学院理学研究科数学専攻教授。

ISBN:9784785315757
出版社:裳華房
判型:A5
ページ数:384ページ
定価:5400円(本体)
発行年月日:2019年06月
発売日:2019年06月17日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PBC