原初性に基づく知の錬成
アインシュタイン・戦争・ドヤ街生活圏
著:石塚正英
内容紹介
〔文明を支える原初性〕シリーズ第6弾。
「人類は、衣食住や医職自由の獲得を目指して大地を駆け回り、大地を掘り返してきた。辛く苦しい環境ほど人類を賢く育てあげた。その成果は身体知となって文化的に遺伝して今日に至っている。私が研究上で座右の銘にしている「文明を支える原初性」は、人類のそのような歩みの通奏低音をなしている。
カール・マルクスが『資本論』第1部第7編第24章に書いた一文、「大きな財産がきのこのように一日でできあがり、本源的蓄積は一シリングの前貸しも必要としないで進行した」の箇所は、実に含蓄がある。その情景には、謹厳実直な職人よりも損得勘定にたけた貿易商人の姿が浮かんでくる。辛く苦しい環境は人類をずる賢く育てもする。その歩んできた歴史については、科学的思考で杓子定規に組み立てないほうがいい。エゴイズムは、自分の道を切り拓く意味では尊い思想だが、他人の道を横取りしたりする意味では狡猾な思想である。けれども、尊いか狡猾か、それは当事者が存在する諸関係、アンサンブルの中で決まる。
本書に収められている諸論文は、概ねそうした当事者関係性を下地にして書かれている。」(はしがきより)
目次
Ⅰ 原初性の探究は未来学の構築に至る
第1章 量子力学に対する文明論的疑義
第2章 ブロッホ思想の21世紀以降的可能性
第3章 原初性の探究は未来学の構築に至る
第4章 コミューンからアソシエーションへの社会転換
第5章 マルクスの自然観・労働観・価値観
第6章 『資本論』は『呪物論』でもある
第7章 布村一夫の共同体関係術語に関するコメント
第8章 〔原始乱婚〕という術語の曖昧さについて
Ⅱ 生産・消費・戦争と教養
第9章 〔生産する教養〕と〔消費する教養〕および〔知の錬成〕
第10章 〈Art & Métier〉を標語とするアルテス·リベラレス
第11章 戦時報国農場(1943-45)に対する農本主義的評価
第12章 エステラ・フィンチにおける戦争と宗教
第13章 ウィルソンの十四カ条とコアリション(合従連衡)による集団的自衛
第14章 諸類型横倒しの世界史
第15章 ドヤ街生活圏への21世紀的視線
Ⅲ 間欠泉のような原初的精神史
第16章 神の〔あらわれ〕は〔表れ 現れ 露れ 顕れ〕のどれが適切か
第17章 先史古代端境期の物証か
第18章 桑取谷の小正月行事〔オーマラ〕について
第19章 伏見稲荷大社の〔お塚信仰〕に垣間見える原初性
第20章 子ども遊び〔エンガチョ〕についての文化史的考察
第21章 アジール
第22章 欧羅巴に掠奪されたバンワ人のフェティシュ神像とベニンブロンズ
第23章 スルタンガリエフとオジャランあるいはタタールとクルド
ISBN:9784784528028
。出版社:社会評論社
。判型:A5
。ページ数:344ページ
。定価:3400円(本体)
。発行年月日:2023年12月
。発売日:2023年12月05日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JB。