内容紹介
様々な地域と領域で〝価値転倒〟が起きている。最たるは、二度にわたる世界大戦の反省に立ちながらも再び対立へ逆戻りしている国際社会。本書は〝価値転倒〟をモティーフにした研究遍歴を通し、歴史が創った思想と現代をつなぐ思念の意義を伝える学問論。
*はしがき 抜粋
現状を憂える私は、ジェネレーション・ギャップよりもヴァリュー・ギャップを強く感じる。多様性といえば聞こえはいいが、ようするに価値観の断絶・隔絶、あるいはその転倒・転変が頻発しているのである。
現代はいわば、様々な地域・領域における価値転倒の社会なのである。
本書は、そのような研究テーマをもって執筆活動を続けている私の論文集成である。いずれの章節においても、どこかしらに、何かしらの〔価値転倒〕が見え隠れしている。
また、これまでにもしばしば言及してきた私なりの〔多様化史観〕は、共時的・空間的な場に加え、通時的・時系列的なイメージが備わっていたが、後者は、直近三部作の副題「文明を支える原初性」の通り、いっそう強まった。
*アネクドータの語原はギリシア語アネクドトス。「逸話」「落穂ひろい」などの意味。
目次
Ⅰ 探究と叙述(Forschung & Darstellung)
第1章 武士神道と武士道の類型的相違
第2章 正倉院籍帳に読まれる家父長像の歴史知的二類型
第3章 幸徳秋水『基督抹殺論』の中のヘーゲル左派
第4章 超自然は文明固有の概念である
―フレイザー『サイキス・タスク』批評
第5章 国家の興亡に立ち会った歴史家たち
―ロシアのウクライナ侵攻に鑑みて
第6章 啓蒙期歴史学とルソーの叙述―歴史知的考察
第7章 シュタインの自治国家構想―not国家連邦but自治連邦
Ⅱ 研究の使命(not Job but Mission)
第8章 学徒の決意と権威への反抗
第9章 研究活動の実践開始
第10章 フィールドワークとデスクワーク
Ⅲ 時系列の学問共同体(From Senior to Junior)
第11章 歴史学の酒井三郎
第12章 民族学の布村一夫
第13章 哲学の大井正
第14章 社会思想の柴田隆行
Ⅳ たゆまぬ学び(The roads to learning)
第15章 武蔵野の学徒帰りなんいざ頸城野へ
著者略歴
著:石塚正英
東京電機大学名誉教授。NPO法人頸城野郷土資料室(新潟県知事認証)理事長。著作『石塚正英著作選【社会思想史の窓】』全6巻『革命職人ヴァイトリング―コミューンからアソシエーションへ』『地域文化の沃土 頸城野往還』『マルクスの「フェティシズム・ノート」を読む―偉大なる、聖なる人間の発見』ほか多数
ISBN:9784784518920
。出版社:社会評論社
。判型:A5
。ページ数:368ページ
。定価:3200円(本体)
。発行年月日:2022年09月
。発売日:2022年09月29日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:NHA。