はじめに
序 労働力、社会、文化の越境。
「思想の科学」研究会の不朽の業績/すぐれた標本、カナダの日本人
第1章 バンクーバー市を追い立てられて
さいごの日本町、ウッドファイバーの社宅町/静かなウッドファイバーを追いたてられ/クートネイ谷の廃屋の整備進む
第2章 クートネイ谷へ落ち着く
カッスルガー→スローカン谷の廃村の修理/『ニュー・カナディアン』も商業新聞へ転換/“最大”の町・カズローの日本人コミュニティへ
第3章 懐深いロッキー西麗の村々
クートネイ湖巡るレンタカーの旅/カズローとはどんな「町」、留置場に入る/一九四二年初夏の大移動、「日本人は『棄てられた民』」か
第4章 オーシャン・フォールズからの撤収顛末
内田ふで子からの聞き書き/オーシャン・フォールズからの撤退/内田一作をめぐる男たち/解き明かされる『労働週報』の実態
第5章 『クートネイアン』新聞社に同居
『クートネイアン』新聞社跡を訪ねる/ばらばらにされた「ローカル31」の指導者たち/梅月夫婦を結びつけた日誌風の手紙の束/文章の内容は友人・知己の動静が中心/生活の困窮、極まり、テント生活どん底に
第6章 日本人「移住」を阻んだ住宅不足
『ニュー・カナディアン』新聞社のカズロー移動/一九四二年夏から秋への戦況とカナダ政府/移転地選定での梅月・生山の苦渋/梅月の新聞記者としての決意
第7章 戦時「日米交換船」問題
『ニュー・カナディアン』の一行乗せた特別列車、Go!/心痛めた香港での日本軍によるカナダ兵捕虜問題/日系人の日本への送還と民間人交換の動き/タシメとはどんなところか/心配された「ブラックドラゴン」の影
第8章 野球のくにの「朝日軍」伝説
妻夫木聡・主演の映画『バンクーバーの朝日』の選手達/野球熱、日本国内より一足早く、広く/タシメ「まち」づくりに日本人の総意を引き出す/日本人全体も、梅月個人も悩ました教育問題/梅月、ショーヤマの一行、カズロー到着
第9章 カズロー町での小新聞ビジネス
『クートネイアン』とはどんな週刊新聞か/日本人集団、カズローの市街地占領?/日本人のカズローでの生活始まる/梅月・ショーヤマたちのカズロー仕事始め/温存され、役割高めた教会と日本人学校
第10章 文化的フロンティアを乗り越えて
「文化的フロンティア」に踏み入れる/編集部、カズローに集結/キャンプの公教育に「兵役拒否者」の協力/カズローに住み続けた日本人教師
第11章 カズローに残った日本人女教師阿田木あや子
「カズローに墓標を」と日本人女教師/カズローでの『ニュー・カナディアン』/『ニュー・カナディアン』の情報ネットワーク/『ニュー・カナディアン』はやはりエスニック紙
第12章 戦時中の収容日本人の生活
キャンプ収容日本人の生活/梅月がBC州の農村部で見たものは/ネットワークで強まった「日本人」意識/祖国へ帰るべきか、否か。そして「祖国」とはなにか。
第13章 カズロー住民の対日本人観の変化
『クートネイアン』新聞社の貢献/『クートネイアン』も住民の輿論も変化/BCSCの対日本人施策の進行
第14章 難題抱えたタシメ収容所
佐久間多重と「タシメ」収容所/タシメキャンプの建設/「タシメ村」の人々の間に断層の気配/タシメの「愛国的」地下新聞
第15章 日本人は、どう「社会移動」に成功したか
日本人の国外追放の策動始まる/日本人の「忠誠度の識別」始まる/「忠誠心」調査と日本への強制追放の布石/戦時下。それでも日常はある/戦時での上昇社会移動の事例、学歴と専門職
第16章 通婚圏、住居圏の壁への風穴
居住圏・一九四四年までにどこまで拡張したか/百花繚乱、燎原の火の文芸創作活動/通婚圏はどこまで拡大したか/職業圏はどう広がって来たか
第17章 職種・職業選択圏の拡大
職種圏の拡大、第一次産業からの脱皮/カナダ政府の日本人「処理」も戦争終結後のことに/一九四四年のカズロー、「小さなスイス」
第18章 さよならカズロー、さらに東へ
拡散する日本人への輿論と『ニュー・カナディアン』/『ニュー・カナディアン』社、いよいよウイニペグへ/独立不羈の新聞、ウイニペグでコミュニティ再建