島村抱月の世界
編著:井上理惠
紙版
内容紹介
個を重視し思索する西欧文化を知らしめた巡演システム。先駆者・抱月を多角的に論じる。
島村抱月がスペイン風邪で急死して103年が過ぎた。抱月は非商業的演劇集団芸術座を創設し、現代に通じる個性的な演劇運動――東京・大阪などの主要都市だけではなく、全国巡演を展開して新世界の思想を多くの観客に手渡した。新劇人として初めて芸術倶楽部という300人収容可能な小劇場を建設した先駆的な存在でもあった。
抱月の死後、多くの小演劇集団が登場する。劇作家や俳優たちも多数現れて一幕物戯曲全盛のこの時代は、〈大正の戯曲時代〉と後に呼称されるようになった。それは抱月の蒔いた種が芽吹いたからであろう。(本文より)
目次
序 論 島村抱月―― 浜田から東京へ、早稲田の文科へ、演劇へ 井上理惠
第一章 滞欧中の島村抱月と美術生活 五十殿利治
第二章 潜在するジレンマ―― 抱月の洋行をめぐって 岩井眞實
第三章 小説家および劇作家としての抱月 林 廣親
第四章 文芸協会と抱月の「人形の家」 安宅りさ子
第五章 トルストイとの交差 ――「闇の力」と「生ける屍」 永田 靖
終 章 演劇史の文芸協会と芸術座 井上理惠