今日は鳥が見えないが、犬が川を流れている、へい、命を返してくれ返してくれ、それはボブ・ディランのなんていう曲だったろう、僕は柱になって倒れていた
それから何処までも転がっていった、柱の中には二人の子供が身体を寄せ合っている、そいつらも激しい雨を感じて泣いている、やすらかに眠っていてくれ
(「a viaduct」)
「そこには常に、のっぴきならない切実さが溢れている。中尾太一は彼の才能と死のものぐるいで闘争しつつ、詩を書き続けている」(佐々木敦)
『数式に物語を代入しながら何も言わなくなったFに、掲げる詩集』で鮮烈に登場した詩人の、いまを生きる作品群。今日の悲歌がまっすぐに立ちあがる。
解説=山嵜高裕、白鳥央堂、安川奈緒、往復書簡=稲川方人