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山口青邨の百句

著:岸本 尚毅
著:山口 青邨

紙版

内容紹介

◆文体の多用さ、自在さ

紙燭の燄天に向ひて梅白し

梅の花の頃の冷たい夜気が感じられる。静謐な感じの句だ。「紙燭の燄天に向ひて」と「梅白し」は発想的には二句一章だが、句形は上五から下五まで一気呵成の印象がある。青邨の句は時として素っ気なく、それがまた潔い。
(本文より)


◆青邨の作風について山本健吉は「秋桜子・誓子ほど野心的な表現意欲もなく、新風を樹立するにも至らなかったが、どこか余技的な余裕があり、平明で、淡白な中に心がこもり、明るく健康で教養人的であるのが、彼ら(青邨と風生 引用者注)を『ホトトギス』の主流に位置せしめているのである。両者を比較すれば、風生のほうが俳句的ひねり0 0 0 が利いており、軽妙瀟洒繊細なのに対して、青邨は単純で一本調子で質実で感情の襞がおおまかである。風生が女性的なのに対して、青邨は男性的である。だが両者とも一種の近代的感覚を身につけ、社会人的・紳士的洗練を句の上に漂わせていることにおいて、古い俳諧者流と区別される」(『現代俳句』)と評した。「「単純で一本調子」と山本健吉は言うが、私は必ずしもそうは思わない。最晩年の句まで通読して強く感じるのは、むしろその文体の多様さ、自在さである。
(「青邨の句の文体について」)

著者略歴

著:岸本 尚毅
1961年岡山県に生まれる。初学時代は「渦」に投句し赤尾兜子の選を仰ぐ。兜子の死後、「青」に投句し波多野爽波の選を仰ぐ。平成3年田中裕明とともに「青」同人賞を受賞。「ゆう」に投句し田中裕明の選を仰ぐ。現在「天為」・「秀」同人。著書に句集『舜』(第16回俳人協会新人賞)『高浜虚子 俳句の力』(第26回俳人協会評論賞)、『生き方としての俳句』、『虚子選ホトトギス雑詠選集100句鑑賞(春・夏・秋・冬)』、『シリーズ自句自解Ⅰベスト100岸本尚毅』、『高濱虚子の百句』、『「型」で学ぶはじめての俳句ドリル』(夏井いつき氏と共著)など。

ISBN:9784781411491
出版社:ふらんす堂
判型:4-6変
ページ数:203ページ
価格:1500円(本体)
発行年月日:2019年02月
発売日:2019年02月13日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:DC
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ