愈つまらぬ様なり
西田幾多郎から田邊元へ
著:山内 廣隆
内容紹介
政治哲学を「つまらぬ」と遠ざけた西田幾多郎、戦時下に己の政治哲学の実践へと踏み込み悔
恨を残した田邊元。
両者の哲学を掘り下げ、その対立の本質をつかむことから、政治と哲学の関係性、そして日本
哲学の持つ性質が明らかとなる。
●著者紹介
山内廣隆(やまうち・ひろたか)
1949年 鹿児島市に生まれる。
1982年 広島大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。
現在 安田女子大学教授。広島大学名誉教授。博士(文学)。専攻/西洋近世哲学。
著書 『田邊元の政治哲学――戦中・戦後の思索を辿る』(昭和堂,2021年),『過剰な理想――国民を戦争に駆り立てるもの』(晃洋書房,2019年),『昭和天皇をポツダム宣言受諾に導いた哲学者――西晋一郎,昭和十八年の御進講とその周辺』(ナカニシヤ出版,2017年),『ヘーゲルから考える私たちの居場所』(晃洋書房,2014年),『ヘーゲル哲学体系への胎動――フィヒテからヘーゲルへ』(ナカニシヤ出版,2003年),他。
目次
凡例
はじめに
第一部 「愈つまらぬ様なり」
――西田幾多郎の哲学の生成――
第一章 田邊政治哲学の影
一 悪魔の京大講義
二 ある戦没学徒の手記
第二章 中島力造のトーマス・ヒル・グリーン
一 中島力造とその教え子たち
二 いまなぜグリーンの政治哲学構想なのか
三 中島力造が捉えたグリーンの政治哲学構想
第三章 西田幾多郎のトーマス・ヒル・グリーン
――西田幾多郎「グリーン氏倫理哲學の大意」から――
一 「グリーン氏倫理哲學の大意」について
二 知識論
三 意志論
四 道徳的理想論
五 「大意」総括
付録
第四章 西田幾多郎「グリーン氏倫理哲學の大意」とグリーンの共同善
一 トーマス・ヒル・グリーン『グリーン氏倫理学』(西晋一郎訳)と西田幾多郎「グリーン氏倫理哲學の大意」
二 グリーン倫理学における「社会的なるもの」
三 グリーンにおける「共同善」についての諸解釈(1)
――日下喜一――
四 グリーンとヘーゲル
五 グリーンにおける「共同善」についての諸解釈(2)
――河合栄治郎――
六 グリーンにおける「共同善」についての諸解釈(3)
――行安茂――
第五章 グリーンからの西晋一郎の離脱
一 西晋一郎のグリーン受容から批判へ
二 グリーンからの離脱としての西の婚姻論
第二部 西田幾多郎『善の研究』と政治哲学
第六章 河合栄治郎から見た西田の哲学
一 『善の研究』について
――河合栄治郎の西田ノートから(1)――
二 『自覚に於ける直観と反省』等について
――河合栄治郎の西田ノートから(2)――
第七章 西田幾多郎『善の研究』における「実践」について
一 意志と行為
二 西田の哲学は唯心論的である(か)
三 意志の自由と行為
第八章 ヘーゲルのソクラテス
――ヘーゲル『哲学史講義』から――
一 哲学者ソクラテスの誕生
二 ヘーゲルのソフィスト
三 ヘーゲルのソクラテス
四 ソクラテスの運命
第九章 レオ・シュトラウスのソクラテス
一 シュトラウス、アリストパネス、ヘーゲル
二 ソクラテスと政治哲学
第十章 西田幾多郎『善の研究』における「善」について
一 「倫理学の諸説」について
二 西田幾多郎の倫理説の基底
三 西田倫理説の展開
四 西田の哲学に対する二つの批判
第三部 西田幾多郎から田邊元へ
第十一章 田邊元「西田先生の教を仰ぐ」とその周辺
一 田邊元の本質の存するところ
二 『ヘーゲル哲学と弁証法』と「西田先生の教を仰ぐ」
三 「西田先生の教を仰ぐ」と田邊元の哲学の構築
第十二章 「ヘーゲル哲学と絶対弁証法」
――田邊政治哲学の基底――
一 理性(意識)と自然(存在)の二元論ではない第三の立場へ
二 フィヒテ、ヘーゲル、シェリング
三 シェリングとヘーゲルの総合
――「真に具体的なる実践」――
四 「ヘーゲル哲学と絶対弁証法」まとめ
おわりに
引用・参考文献一覧
あとがき
事項索引
人名索引