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スポーツの近現代

その診断と批判

編:有賀 郁敏

紙版

内容紹介

「社会的なもの」と絡み合うスポーツの諸相を考察する――
武道・球技・組織・制度などの多様なテーマを
歴史、理論、経営、科学といった観点から分析し、
スポーツから発せられる様々な問いに応答する


「本書に掲載された一八本の論文は歴史、社会、文化、科学等の位相からスポーツの諸相を考察、分析している。扱われているモチーフは様々であり、知の発火点も異なっている。しかし、それでも近現代という歴史軸、さらにはスポーツがなされる場である社会や科学をめぐり、それぞれの視点から診断と批判的考察が加えられている。[…]その意味で、本書は執筆者たちの共同的思考と経験の結晶とも言うべき成果であり、スポーツから発せられる様々な問いに応答するための、ささやかな手がかりを与えてくれるものと信じている。」(「はしがき」より)

目次

はしがきにかえて──思考することの大切さ(有賀郁敏)


第Ⅰ部  歴  史

第1章 ドイツにおけるトゥルネン・スポーツ組織の生成と展開(ミヒャエル・クリューガー)(村下慣一・有賀郁敏訳)
 はじめに
 1 ヤーンによるトゥルネンの開始
 2 トゥルネン運動の脱政治化
 3 一九〇〇年頃のトゥルネン・スポーツ連盟
 4 ヴァイマール共和国時代におけるスポーツ団体の多様化とイデオロギー化
 5 ナチス統治下における均制化
 6 東西ドイツにおける国内的オリンピックスポーツ
 おわりに
 [解説]ドイツスポーツ史研究とミヒャエル・クリューガー(有賀郁敏)

第2章 トゥルネン・スポーツ組織の歴史的性格(有賀郁敏)
 はじめに
 1 「社会的なもの」の理解
 2 市民的結社・協会組織の生成
 3 トゥルネン協会における包摂と排除
 4 労働者トゥルネン・スポーツ運動の展開
 5 ナチズムによる余暇・スポーツの組織化
 6 分断国家ドイツにおけるスポーツ
 おわりに

第3章 韓国における満州国の残映と植民地主義──「国民」体力時代と身体規律(権 学俊)
 はじめに
 1 朴正熙の植民地体験と満州人脈
 2 帝国日本の残像と「国民」の創出
 3 国家主義的なスポーツ・体育政策の強化
 4 規律・訓練される国民の身体
 おわりに

第4章 女もすなるJiu-jitsu──二〇世紀初頭のイギリスにおける女性参政権運動と柔術(岡田 桂)
 はじめに
 1 イギリスにおける柔術の到来
 2 柔術ブームと身体文化
 3 イギリス人女性の柔術実践
 4 ジュージュツァフレジェッツ(Jujutsuffragettes)──イギリス女性参政権運動と柔術
 5 女性Jiu-Jitsu ボディガード団──実戦のための柔術
 おわりに

第5章 前世紀転換期の日本における講道館柔道・古流柔術・新興流派の距離と相関──国民教化を巡る諸相を軸に(藪耕太郎)
 はじめに
 1 嘉納治五郎と国民教化の思想
 2 古流柔術の分極化
 3 帝国尚武会と商業戦略としての国民教化
 おわりに

第6章 戦後日本における女子プロレス生成に関する試論──「いかがわしさ」と「健全さ」のはざまで(塩見俊一)
 はじめに
 1 ストリップと女子プロレス
 2 女子プロレスと「いかがわしさ」
 おわりに

第7章 戦後における「野球道」イメージの大衆化の一局面──『巨人の星』および〝V9巨人軍”に関する世評を中心に(西原茂樹)
 はじめに
 1 「武士道」と野球の結びつきの起源──「武士道」概念の多様性
 2 高度成長期における「野球道」の復活?──その舞台としての野球マンガ
 3 「スポ根」的ではなかったV9巨人軍?──川上監督をめぐる世評を中心に
 おわりに

第8章 バブル期の沖縄におけるセクシュアリティと観光をめぐる言説(小川実紗)
 はじめに
 1 復帰前後におけるセクシュアリティと観光をめぐる言説
 2 バブル期のセクシュアリティ消費
 3 沖縄観光とセクシュアリティのゆらぎ
 おわりに

第9章 フットサルの社会史──日系ブラジル二世の移民文化と都市的消費空間との交錯(佐藤彰宣)
 はじめに
 1 雪国での導入
 2 札幌に招かれた日系ブラジル人
 3 都市文化との邂逅
 おわりに


第Ⅱ部  理  論

第10章  戦後の英国における地域スポーツ政策の展開──「統治のテクノロジー」としてのスポーツの系譜学(金子史弥)
 はじめに
 1 一九六〇年代から一九七〇年代前半の地域スポーツ政策──「福祉国家」のもとでの「青少年問題」対策としてのスポーツ
 2 一九七〇年代後半から一九九〇年代前半の地域スポーツ政策──「新自由主義」のもとでの「秩序形成」「社会統合」の手段としてのスポーツ
 3 一九九〇年代後半から二〇〇〇年代の地域スポーツ政策──「第三の道」のもとでのスポーツを通じた「社会的包摂」と「コミュニティの再生」
 4 二〇一〇年以降の地域スポーツ政策──「大きな社会」の構築と「ソーシャルグッド」のためのスポーツ
 おわりに

第11章 From Parcours to Parkour──デブルイヤールのポストコロニアルな転用と新しいスポーツ誕生のダイナミズム(市井吉興)
 はじめに
 1 パルクール(Parcours)の誕生──ジョルジュ・エベルとメトード・ナチュレール
 2 デブルイヤールの形成というカモフラージュ──『実用的ジムナスティーク』(一九〇五)に秘められたクーベルタンの「戦略」
 3 From Parcours to Parkour──デブルイヤールのポストコロニアルな転用
 おわりに

第12章 シカゴのレクリエーション運動とアメリカナイゼーション
──ジョン・デューイの思想と実践から考える(川口晋一)
 はじめに
 1 デューイの思想と実践の背景
 2 社会問題の解決とシカゴ実験学校の実践
 3 シカゴ市の公教育とアメリカナイゼーション
 おわりに

第13章 ビデオ判定を通じたゲームの可視化とその影響──ラグビーにおける観戦経験の変化と制御をめぐって(松島剛史)
 はじめに
 1 TMOの導入とゲームの監視と制御の強化
 2 ハイパーリアルなゲームの統制とTMOの歴史性
 3 スタジアムにおける観戦経験の変化と用意されたスペクタクル
 おわりに  326

第14章 地域における障害者スポーツの普及促進を考える──公共スポーツ施設が取り組む障害者の利用促進方略に着目して(金山千広)
 はじめに
 1 障害者を囲むスポーツ環境
 2 障害者が利用する公共スポーツ施設
 3 障害者利用にかかる障害者優先スポーツ施設と一般公共スポーツ施設の特徴
 4 一般公共スポーツ施設における障害者の利用状況
 おわりに

第15章 東京パラリンピックと新自由主義──個体的能力観から「能力の共同性」へ(有賀郁敏)
 はじめに
 1 パラリンピックの内在的価値
 2 新自由主義と現代版日本主義イデオロギー
 3 パラリンピックの疎外的側面
 4 パラリンピック、障がい者スポーツの発展に向けて
 おわりに


第Ⅲ部  経営・科学

第16章 現代の「スポーツ経営学」考(中西純司)
 はじめに──VUCAの時代と「スポーツ文化の普及学」
 1 「管理される側の論理」と「体育管理(学)」の発明
 2 「体育管理学」の学問的な発展系譜
 3 わが国における「スポーツマネジメント」への学術的関心の高まり
 4 現代社会に求められる新たなスポーツ経営学の理論パラダイム
 おわりに──宇土正彦氏とDr. Earle F. Zeigler の「志」

第17章 Jクラブによる地域貢献活動の新展開──ソーシャルガバナンス論からのアプローチ(山本悦史)
 はじめに
 1 Jクラブの地域貢献活動をめぐる社会的背景と今日的課題
 2 シャレン!がJクラブの地域貢献活動にもたらした変化
 3 ソーシャルガバナンスの形成過程におけるシャレン!の可能性
 おわりに

第18章 バスケットボールにおけるスリーポイントシュート成功率の規定要因──女子大学生選手を対象とした行動的概念に基づくコオーディネーション能力評価の視点から(漆原 良・細野裕希)
 はじめに
 1 バスケットボール選手の競技パフォーマンスを評価する視点
 2 バスケットボールと他競技間での比較
 3 測定項目の設定
 4 対象者と測定時期
 5 リーグカテゴリー間に見られる違い
 6 スリーポイントシュート成功率と各測定項目の成績における相関関係
 7 スリーポイントシュート成功率を説明する要因
 おわりに


あとがき(漆原 良・権 学俊)

著者略歴

編:有賀 郁敏
1957年、長野県諏訪市生まれ。1980年、早稲田大学教育学部卒業、1985年、筑波大学大学院体育科学研究科博士課程修了、1998~1999年、ドイツチュービンゲン大学客員研究員。現在、立命館大学産業社会学部教授。専門はドイツスポーツ史、協会組織史。

ISBN:9784779517310
出版社:ナカニシヤ出版
判型:A5
ページ数:496ページ
定価:3900円(本体)
発行年月日:2023年03月
発売日:2023年03月15日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:SC