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テストは何のためにあるのか

項目反応理論から入試制度を考える

編:光永 悠彦
著:西田 亜希子

紙版

内容紹介

大学受験における共通テストを年複数回行うような制度はどうすれば実現可能なのか。これからの大学入試制度を、そして失敗しない入試制度改革を考えるための必携書。

入試とは何か、何のための制度なのか、日本社会でどのように機能してきたのかを考察したうえで、測りたいことを的確に測ることができる標準化テストの開発手法をくわしく解説。
大学入試のための共通テストを年複数回実施するような制度はどうすれば実現することが可能になるのか、その社会的意義は何か、徹底的に検討する。テストと教育のあるべき関係について議論し、これからの大学入試制度の設計を考えるための必携書!


著者紹介(五十音順,*は編著者)


西田亜希子(にしだ あきこ)
担当:第1部1章,2章,3章

光永悠彦*(みつなが はるひこ)
担当:第1部3章,4章,第2部,第3部

編著者プロフィール

光永悠彦(みつなが はるひこ)
1979年北海道生まれ。人事院人材局試験専門官室,島根大学教育・学生支援機構 講師を経て,名古屋大学大学院教育発達科学研究科准教授。東京工業大学大学院社会理工学研究科人間行動システム専攻博士課程修了,博士(学術)。
専門は心理統計学,テスト理論,多変量解析。
主な著書に『テストは何を測るのか――項目反応理論の考え方』(ナカニシヤ出版,2017年),主な論文に「多群 IRTモデルにおける簡素化の評価――水平等化場面のシミュレーョンを通じて」(共著,行動計量学,2014年), 「看護系大学共用試験(CBT)項目バンク構築における潜在ランク理論の適用と評価」(単著,日本テスト学会誌,2015年)など。


西田亜希子(にしだ あきこ)
1976年大阪府生まれ。京都精華大学講師を経て,大阪公立大学人権問題研究センター特別研究員,神戸女学院大学・甲南女子大学非常勤講師。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程単位取得満期退学。
専門は教育社会学,特に進路選択意識や高大接続教育,新設大学の制度を対象とする。
主な著書に『マンガで読み解くマンガ教育』(分担執筆,阿吽社,2014年),主な論文に「専門学校は大学進学の代替的進路か?――進路多様校における専門学校希望者の分析による検討」(子ども社会研究,2009年)など。

目次

はじめに

第1部 共通入試のあるべき姿:これからの入試の仕組み,教育の仕組み

第1章 メリトクラシーと日本の入試

1-1 みんなが受験する入試
1-2 学歴社会が普及し,変質しやすい日本
1-3 テストスコアが価値をもつ背景:国の違いによる比較
1-4 テストに対する過剰な期待:日本的メリトクラシー下の教育の形

第2章 共通テストのあり方:その模索の方向性

2-1 日本の大学入試はどのように変遷したか:日本的背景と大学入試制度
2-2 ユニバーサル・アクセス型の高等教育システムと多様性重視の大学入試
2-3 教育格差と受験機会の保障:より公平な大学入試のために
2-4 複数回共通入試制度導入の議論のあり方

第3章 社会とテストのあるべき関係性:社会はテストで何をしたいのか

3-1 暴走する能力主義:メリトクラシーの再帰性のわなとその対策
3-2 垂直的序列化の現状にどう対処するか
3-3 教育制度の構築にあたって考えるべき視点

第4章 「標準化テスト」を導入する:教育者・受験者からみたメリットと課題

4-1 標準化テストが成り立つ前提:教育のなかにテストを位置づける
4-2 教育関係者がすべきこと:教育の理想にかなったテスト制度を提案する
4-3 受験者がすべきこと:あるべきテストになるように,声を上げる

第2部 標準化テストを実現するために:IRTができること

第5章 テストとは何か:測定の道具としてのテスト

5-1 何かを測る「仕掛け」のためのテスト
5-2 能力の「ものさし」をつくる
5-3 構成概念を定める
5-4 因子分析の考え方とテストの一次元性

第6章 標準化テストによる公平なテストを実現する要件:共通尺度化

6-1 共通の尺度でスコアを表示するための方法
6-2 素点を用いたリンキング
6-3 共通尺度を本試験の外に用意する

第7章 項目反応理論(IRT)による標準化テスト

7-1 標準化テストにおける「困難度」の定義
7-2 IRTによる標準化された困難度の推定
7-3 IRTの項目反応関数
7-4 二値型モデルと多値型モデル
7-5 等化:異なるテストの尺度を比較可能にする
7-6 等化計画:等化を行うための二つのデザイン
7-7 個別推定による等化
7-8 同時推定による等化
7-9 能力値の尺度得点への変換,能力値の信頼区間
7-10 生徒の学力の伸びを検討するためには:標準化テストの実践例

第8章 テスト制度とテストデザイン,テストの質保証

8-1 項目バンク:テストの質を保証するためのデータベース
8-2 コンピュータを用いたテスト(CBT)とIRT
8-3 テスト情報量に基づく項目選択とレベル別テスト版の作成
8-4 DIF分析に基づく項目機能の評価
8-5 標準化テストの実施:実際の流れ

第9章 パフォーマンステストと標準化テスト

9-1 パフォーマンステストの特徴
9-2 パフォーマンステストを入試に導入する
9-3 多相ラッシュモデル:パフォーマンステストのIRTモデル

第10章 学習とテストの融合:教育を充実させるためのさまざまな工夫

10-1 達成度テストとルーブリック,can-doリスト
10-2 学習者のためのテスト:標準化テストとルーブリック
10-3 認知診断モデル:学習単位ごとの習得確率を推定する

第3部 IRTを用いた標準化テストを入試で活用する

第11章 日本における大学入試と共通テストに求められる前提条件

11-1 日本における現行の大学入試とテストの有用性
11-2 有用性が高いテストを入試制度に導入する
11-3 公平な大学入試とするための条件

第12章 IRTを複数回共通入試に導入する(1):テスト制度の構築

12-1 継続的に行う大規模な標準化テスト
12-2 規準集団をどのように定義するか,スコアの意味をどうするか
12-3 問題の使い回しとテストの設計思想

第13章 IRTを複数回共通入試に導入する(2):テストデザイン

13-1 テストデザイン・等化計画を図示するためのアイコン
13-2 テストデザイン案(1):緩いセキュリティのテストのデザイン
13-3 テストデザイン案(2):厳格なセキュリティが求められるテストのデザイン
13-4 複数回共通入試におけるテストデザインの検討とCBTの導入
13-5 テストの改訂の必要性とその方法

第14章 IRTによる標準化共通テストにパフォーマンステストを含める

14-1 パフォーマンステストとしての記述式テスト
14-2 多相ラッシュモデルによるスコアの標準化
14-3 実現可能性を考慮したパフォーマンステストのあり方

第15章 日本の入試に関する常識を疑う

15-1 テストを変えれば教育が変わるのか
15-2 日本的テスト文化とその逆:標準化テストが解決できること
15-3 診断的な学力調査:競争的な入試との相違点

第16章 英語4技能入試の導入はなぜ頓挫したか

16-1 英語4技能テストを用いた入試制度の概要
16-2 英語4技能入試制度に向けられた疑問:教育測定学の立場から
16-3 どのような方法であれば「まだまし」だったのか

おわりに:実効性のあるテスト制度構築に向けて

参考文献

事項索引
人名索引

著者略歴

編:光永 悠彦
光永悠彦(みつなが はるひこ)
1979年北海道生まれ。人事院人材局試験専門官室,島根大学教育・学生支援機構 講師を経て,名古屋大学大学院教育発達科学研究科准教授。東京工業大学大学院社会理工学研究科人間行動システム専攻博士課程修了,博士(学術)。
専門は心理統計学,テスト理論,多変量解析。
主な著書に『テストは何を測るのか――項目反応理論の考え方』(ナカニシヤ出版,2017年),主な論文に「多群 IRTモデルにおける簡素化の評価――水平等化場面のシミュレーョンを通じて」(共著,行動計量学,2014年), 「看護系大学共用試験(CBT)項目バンク構築における潜在ランク理論の適用と評価」(単著,日本テスト学会誌,2015年)など。
著:西田 亜希子
1976年大阪府生まれ。京都精華大学講師を経て,大阪公立大学人権問題研究センター特別研究員,神戸女学院大学・甲南女子大学非常勤講師。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程単位取得満期退学。
専門は教育社会学,特に進路選択意識や高大接続教育,新設大学の制度を対象とする。
主な著書に『マンガで読み解くマンガ教育』(分担執筆,阿吽社,2014年),主な論文に「専門学校は大学進学の代替的進路か?――進路多様校における専門学校希望者の分析による検討」(子ども社会研究,2009年)など。

ISBN:9784779516832
出版社:ナカニシヤ出版
判型:B5
ページ数:252ページ
定価:3300円(本体)
発行年月日:2022年09月
発売日:2022年09月30日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JNL
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:JNG