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東アジア労働市場の制度改革とフレキシキュリティ

著:厳 成男

紙版

内容紹介

グローバル化とともに雇用の流動化が進行する東アジアにおいて、どのような制度が必要なのか
労働市場において対立しがちな、柔軟性と安全性(保障)を可能にする雇用戦略、すなわち「フレキシキュリティ」を担保するのための制度的仕組みを詳細なデータと重厚な分析を通じて探究する

東アジア各国の労働市場を特徴づける制度的配置を考慮すると,これからの東アジアの労働市場制度改革の方向,ならびに新しい労働市場政策戦略としてフレキシキュリティを導入する際には,成功したフレキシキュリティのモデルをそのまま移植することはできない。その理念を受け入れ,柔軟性と安全性の各要素の開かれた組み合わせのなかから東アジア諸国の社会経済システムの実態に適切な,独自の柔軟性と安全性要素の組み合わせを探っていくべきであろう。(「序章」より)

著者紹介

厳成男(ゲン セイナン)
1973年生まれ。京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。福島大学経済経営学類准教授, 新潟大学経済学部准教授などを経て,現在,立教大学経済学部教授。
主著に『中国の経済発展と制度変化』(京都大学学術出版会,2011年),『転換期のアジア資本主義』(共著,藤原書店,2014年),『グローバル災害復興論』(共編著,中央経済社,2017年),「中米貿易戦争の歴史的位相と短・中・長期的展望」(『季刊 経済理論』56(4),2020年)ほか。

目次

00 序章:東アジア労働市場の変容と再構築に関する制度的分析の射程

1 はじめに
2 本書のねらい
3 本書の分析が依拠する先行研究
4 本書の構成

01 東アジアの経済成長と構造変化

1 はじめに
2 東アジアにおける輸出主導型成長体制の構築
3 東アジアの経済発展はどのように調整されているのか
4 おわりに

02 東アジア労働市場の構造変化と制度改革:
安全性の拡大を欠いた柔軟性の一方的拡大

1 はじめに
2 グローバル化と労働市場の構造変化
3 労働市場の構造変化に伴う安全性の変化
4 おわりに

03 雇用調整パターンの国際比較:
日本とヨーロッパ経済の比較

1 はじめに
2 ヨーロッパのフレキシキュリティによる社会的調整
3 日本における企業単位の雇用調整
4 おわりに

04 労働市場の変容とマクロ経済の累積的因果連関構造:
日韓両国の脱工業化の影響を中心に

1 はじめに
2 日本と韓国における脱工業化と労働市場の不安定性
3 マクロ経済の累積的因果連関構造に及ぼす影響
4 おわりに

05 日本:企業主義的レギュラシオンの衰退と雇用システムの変化

1 はじめに
2 日本的雇用システムと企業主義的レギュラシオン
3 企業主義的レギュラシオンの衰退に伴う雇用システムの柔軟化
4 おわりに

06 中国:内需主導型成長体制の構築に資する労働市場の制度改革

1 はじめに
2 輸出主導型成長から内需主導型成長への転換を妨げる主な要因
3 雇用と所得における柔軟性と安全性の変化と社会保障システム
4 おわりに:中国における社会保障システムの整備,適応範囲の拡大

07 韓国:グローバル化の深化と雇用システムの不安定性

1 はじめに
2 韓国におけるフレキシキュリティの研究とその問題点
3 労働市場における柔軟性と安全性の実態
4 おわりに

08 東アジア労働市場における柔軟性と安全性の変化とその社会的帰結:
アンケート調査の結果に基づいて

1 はじめに
2 分析の枠組みとデータ
3 日中韓3カ国における雇用満足度とワーク・ライフバランスの実態
4 おわりに

09 東アジア労働市場の再構築と新しい発展モデルの模索

1 はじめに
2 東アジア労働市場の再構築と経済成長
3 東アジアの新しい発展モデルの模索
4 おわりに

著者略歴

著:厳 成男
1973年生まれ。京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。福島大学経済経営学類准教授, 新潟大学経済学部准教授などを経て,現在,立教大学経済学部教授。
主著に『中国の経済発展と制度変化』(京都大学学術出版会,2011年),『転換期のアジア資本主義』(共著,藤原書店,2014年),『グローバル災害復興論』(共編著,中央経済社,2017年),「中米貿易戦争の歴史的位相と短・中・長期的展望」(『季刊 経済理論』56(4),2020年)ほか。

ISBN:9784779514531
出版社:ナカニシヤ出版
判型:A5
ページ数:272ページ
定価:3600円(本体)
発行年月日:2020年03月
発売日:2020年03月20日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JBF