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フィギュール彩

放射能とナショナリズム

著:小菅 信子

紙版

内容紹介

政府や東電、学者に対する強い不信と、マスメディアや論壇の機能不全により、いま日本を〈不信の連鎖〉が覆いつくそうとしている。
「唯一の被爆国」として、核兵器なき平和な世界の実現をナショナル・アイデンティティとして育んできた日本だが、大震災と原発事故後、非論理的でセンセーショナルな〈反原発熱〉にうかされ、デマや差別、暴言がとびかう構造的暴力が出現した。
原発推進派のレッテル貼り、反原発美談、原子力をめぐる「安全神話」から「危険神話」への単純なシフト。だが、実際には、原子力の神話化がより強化されただけではないのか?

イデオロギーで潤色し、極端な二項対立で問題を過剰に政治化する―これは、つねに感情的なテーマであり続けた歴史問題をめぐる言説と通底するのではないか?いま日本を呪縛する「放射能による不信の連鎖」を断ち切るための提案とは。

目次

序章 「御用学者」狩りが始まった(「殺す前に殺す」/「小菅信子というのはエア御用かトンデモか?」)
Ⅰ 被災地を歩く(「がんばれ東北」など、とても言えない/人間性の尊厳とは/平和とは何か/かつての敵国・日本への思い/被災地へ/「再生への視点」/「おだづなよ、津波!」/社会的責任を果たしうる良き〈第三者〉とは
Ⅱ 福島とフクシマのあいだ(「唯一の被爆国の国民」の屈折した心情/「原爆に救われた」者の語り/和解がもたらした分裂/受益者のトラウマ/再び、癒しえない傷と癒しについて)
終章 プロメテウスなどいない

著者略歴

著:小菅 信子
Nobuko Margaret Kosuge 1960年東京都生まれ。
山梨学院大学法学部政治行政学科教授。専門は近現代史、国際関係論、平和研究。
上智大学文学部史学科卒業、同大学院文学研究科史学専攻博士課程終了。
ケンブリッジ大学国際研究センター客員研究員を経て現職。
戦争と人道、戦後・植民地支配後の平和構築と和解を巡る問題に取り組む。
震災直後から福島へ通い、支援物資を届けたり人々の声に耳を傾ける。
主著『戦後和解 - 日本は〈過去〉から解き放たれるのか』
(中公新書、石橋湛山賞受賞)『14歳からの靖国問題』(ちくまプリマー新書)
『ポピーと桜―日英和解を紡ぎなおす』(岩波書店)ほか。
共著『戦争と和解の日英関係史』(法政大学出版局)『東京裁判とその後 - ある平和家の回想』(中公文庫)
『歴史和解と泰緬鉄道 英国人捕虜が描いた収容所の真実』(朝日選書)ほか。

ISBN:9784779170102
出版社:彩流社
判型:4-6
ページ数:192ページ
定価:1800円(本体)
発行年月日:2014年02月
発売日:2014年02月18日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JKS