日本古代史の「病理」
戦争体験を風化させる学界の風潮
著:相原 精次
内容紹介
皇国史観からの脱却が言われた戦後、
新しい史観によって見直されたはずの古代史が、
いつの間にか〝大和史観〟とも言える目に見えない幕で
覆われてしまっている。
本書は、疑問に向き合わせない学界の実態を鋭く衝き、
現代社会における古代史認識の病理を見極めようとし、
前向きな内省を「自虐」と捉え自国の歴史への直視を避け続ける
〝無関心さ〟に対し警鐘を鳴らすものである。
目次
序 「古代史」の現状 ──戦後七十年の忘れ物とその中身
第Ⅰ章 「古代史の病理」
一 「病理」の本質──発展していかない日本古代史
二 「文献学」という名の権威
三 古代史での「わが国」と「倭「」大倭・日本「」大和」のこと
四 古代史での「わが国」のこと
第Ⅱ章 古文献を正しく読むために
一 誤った資料読解、二件――『魏志倭人伝』・『日本書紀』
・『魏志倭人伝』という本はない ほか
・書名にある「日本」の概念 ほか
二 ありのままに読もう、先入観なしの『日本書紀』
・「大化改新」と「明治維新」は双子の兄弟である ほか
第Ⅲ章 戦前と「古代史」
一 「 明治維新」と「東亜」への視線
二 「大和朝廷」概念の造作と展開
三 現行「日本古代史」は近代史の問題である
第Ⅳ章 監視され、「遅延」した歴史学
一 戦前における歴史学七〇年の停滞
二 「先史時代」の実際
三 古墳時代
四 一瞬で消えた千年以上の文化
第Ⅴ章 「日本古代史」と「戦後七十年」
――混乱と再生の中での展開とその問題点
一 研究と発言の自由……は?
二 戦後七十年の忘れ物とその中身
三 戦後の二大発見
──「高松塚壁画古墳」と「稲荷山鉄剣象嵌文字」
四 「稲荷山鉄剣象嵌文字」のその後
――戦前回帰への二大論調
五 「専門家の混迷」と「素人の研究家」
終章 歴史学の実際と世相への憂い
一 「古代史」への無関心の風潮
二 私の「古代史疑」へのきっかけ
三 「戦後七十年」という言葉
── 2015(平成27)年8月14日「内閣総理大臣談話」から
四 相似形不祥事、連鎖の深層
あとがき