フォルクと帝国創設
19世紀ドイツにおけるトゥルネン運動の史的考察
著:小原 淳
内容紹介
器械体操や集団体操を中心とするドイツ固有の身体文化であるトゥルネンは、単なる身体運動の実践にとどまらず、ドイツの「民族精神」を鼓舞することをも目的としていた。従って、トゥルネンの成立と発展、その変容の過程の解明は、ナポレオン支配から帝国創設に至る時期のドイツ社会の側面を映す鏡でもある。
トゥルネン運動の中心的担い手であったフォルク=大衆・民衆の実像を求め、さまざまな動向とその変容の姿から、「上/下」「内/外」の関係における国民化、帝国創設の相貌を描く労作。
目次
目 次
目 次
序 章
一 問題の所在
1 本書の目的
2「トゥルネン」とは?
3トゥルネン運動と「フォルク」
二 先行研究・史料と本書の構成
1 先行研究
2史料
3本書の構成
第一章 発見されるフォルク——Fr・L・ヤーンと初期トゥルネン運動
一 はじめに
二 Fr・L・ヤーンの生い立ちと思想
1青年期のヤーン
2ヤーンの思想
三 初期トゥルネン運動の展開
四 初期トゥルネン運動の終焉
1トゥルネン運動とブルシェンシャフト運動
2ヤーンの逮捕とトゥルネン禁止令
五 おわりに
第二章 実践されるフォルク——トゥルネン協会の理念と実態
一 はじめに
二 数量的分析
1協会数の推移
2トゥルネン協会の地域的分布
3協会組織と都市空間
4会員構成
5トゥルナーの社会的プロフィール
三 協会活動の実態
1通常の活動
2フォアトゥルナーと体育教師
3消防・救助活動
4祝祭と遠足
四 トゥルネンの理念とその限界
1トゥルナーのモラルと名誉
2「男らしさ」とトゥルネン
3平等性
4トゥルネン協会のなかの不平等と不調和
5トゥルネンの「外側」のフォルク
五 おわりに
第三章 分裂するフォルク——トゥルネン運動と一八四八/四九年革命
一 はじめに
二 トゥルネン禁止令期のトゥルネン運動
三 一八四〇年代のトゥルネン運動
四 トゥルネンと政治
1トゥルネン運動の政治的急進化
2祝祭の政治化
3協会組織のネットワーク
4トゥルナーの武装化
5ヤーンとの訣別
五 統一組織の創設とトゥルネン運動の分裂
1第一回ハーナウ会議
2第二回ハーナウ会議
3フランクフルト九月蜂起と民主派の「暴走」
六 帝国憲法闘争と革命の敗北 127
1ドレスデン蜂起とトゥルネン運動
2プファルツ、バーデンでの蜂起とトゥルネン運動
3革命の敗北
七 おわりに
第四章 膨張するフォルク——一八六〇年代前半のトゥルネン運動における「自由」と「統一」
一 はじめに
二 トゥルネン協会の復活
三 組織連合化の試み
四 三度の全ドイツ的祝祭
1コーブルク祭
2ベルリン祭
3ライプツィヒ祭
4公権力との関係
5一八六〇年代のトゥルネン運動とナショナリズム
五 祝祭の成果
1組織統一問題
2「非政治的路線」の採択
3「国民体育」の成立――トゥルネンの理論的整備
六 おわりに
第五章 変容するフォルク——一八六〇年代後半のトゥルネン運動と「上からの統一」
一 はじめに
二 「武装せるフォルク」の理念と実践
1「非政治性」をめぐる闘争
2トゥルネン運動とドイツ国民協会
3第二次シュレースヴィヒ戦争とトゥルネン運動
三 逆説としての統一
1 第四回ドイツ・トゥルネン祭の中止
2普墺戦争とトゥルネン運動
3ドイツ・トゥルナー連盟の成立
四 おわりに
終 章
あとがき
図版出典
文献目録
註
索引