安住の地を求め、身分を捨てて浪人となった長谷村修平。ところが江戸の町中でも、人間の屑たちが幅を利かせていることに失望の色を隠せない。怒りに震え、庶民を苦しめるやくざの親分を天秤棒一本で叩きのめした修平は、大きな喝采を浴び、他人の幸せのために生きる喜びを知る。
その人柄はたちまち人々を虜に……。親分の用心棒・大樫源十郎までが弟子入りを志願する始末であった。そんな折、四人組強盗が商家を襲う事件が続けて発生する。岡っ引きと捜索に乗り出すものの、主犯格の正体が掴めない。修平と源十郎は、あえて危険な作戦を試みるが、その先には、彼らの想像を超えた驚きの結末が待っていた──!
国民的人気作家の名作シリーズ「山手樹一郎傑作選」、第二十九弾!!