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あたらしいジェンダースタディーズ 臨床心理学 増刊15号

転換期を読み解く

編:大嶋 栄子
編:信田 さよ子

紙版

内容紹介

2020年に始まるCOVID-19感染拡大は,わたしたちの日々の生活から,家族関係,親密な関係,社会動態,政治に至るまで,激動の連続をもたらしつづけている。地域に生きる人々の数だけ存在する「生きづらさ」は,だが「居場所を失う」という共通の苦しみを明らかにし,「?き出しのジェンダー不平等」を浮き彫りにしてきた。阪神淡路大震災の1995年,東日本大震災の2011年にも比肩すべきこの「転換期」をいかに読み解くことができるか――――

居場所を失った人たち,その点と点を結んで短い線を描き,線を撚り合わせ,糸を紡いで布を織るように「新たな場所」がつくられるとき,共に支え合うために共有される知としてのジェンダーが浮上する。このリアルな世界において露出した加害・被害と権力性に向き合うことを求められるとき,ジェンダーという言葉は,援助職に進むべき指し示すだろう。

そのための壮大な見取図を示す「[討議]抵抗の言葉――ジェンダースタディーズ2022-2023」に次いで,ジェンダースタディーズという知の遺産(フェミニズム,フェミニストカウンセリング,男性学・男性性研究,障害学),ジェンダースタディーズの「ホットゾーン」,知を再編成するための当事者によるジェンダー言説,ジェンダーセンシティブな実践(トラウマケア,性被害,アウティング,マイクロアグレッション,反抑圧的ソーシャルワーク),そして「専門家のポジショナリティ」の問いへ。

新しい現実には新しい言葉がなくてはならない――――「いまこの時代を生きるためのジェンダースタディーズ」。

目次

1-転換期を読み解くジェンダースタディーズ
居場所をめぐる問い――ジェンダーについて知るところから|大嶋栄子
新しい現実には新しい言葉を――援助の「言葉」を更新する|信田さよ子
[討議]抵抗の言葉――ジェンダースタディーズ2022-2023|平山 亮+大嶋栄子+信田さよ子

2-はじめるまえに知っておこう――知の遺産をインストール!
2-1-すべてはここから始まった!
心理学の脱心理主義化へ向けて――ジェンダーの視点から|上野千鶴子
フェミニストカウンセリング|河野貴代美
男性学・男性性研究の誕生と発展|伊藤公雄
[インタビュー]来たるべき知のために――ジェンダースタディーズと障害学の交差域|熊谷晋一郎+大嶋栄子(聞き手)

2-2-ジェンダースタディーズの「ホットゾーン」
V・ウルフのフェミニズムと中井久夫のS親和者的ケア|小川公代
新たなミソジニーとマスキュリニティ|河野真太郎
塀の中のジェンダー問題――LGBTQ受刑者のスティグマとサンクチュアリをめぐって|坂上 香
トラウマをほどく――トランスジェンダーの来たるべき物語のために|岩川ありさ

3-当事者とジェンダー――知を再編成する
それがなくても大丈夫――ACからフェミニズムへ|高野かおる
多様化するバックラッシュ――男性問題としての抵抗を臨床する|西井 開
転生する身体――トランスジェンダー|倉田めば
Ain't I a Woman?/「私」は女ではないの?|石原真衣
現実の複雑性と交差性に向き合うために――「ハーフ」「ミックス」とインターセクショナリティ|下地ローレンス吉孝

4-ジェンダースタディーズ実践――もっとジェンダーセンシティブに!
4-1-こんなとき,私たちはどうしてきたか?――実践を基礎づける
声,その記録と記憶|平川和子
記憶と身体をほどく――トラウマケア|田中ひな子
家族における女性の性被害――定義と責任をめぐって|信田さよ子
ジェンダーとセクシュアリティから男性の性暴力被害を考える|宮﨑浩一
アウティングの遍在性とポリティクス|日野 映
埋め込まれた「棘」――マイクロアグレッション|朴 希沙
社会正義を実現する――反抑圧的ソーシャルワーク実践(AOP)の可能性とリミット|坂本いづみ

4-2-問われる専門家のポジショナリティ
不都合なトレードへの「抵抗」――介護実践におけるジェンダー規範の揺らぎと再生・強化|林美枝子
フロイト的中立性とは何か――マルガレーテ・ヴァルター,症例ドラ,ジョセフ・ウォルティス|松本卓也

ISBN:9784772419840
出版社:金剛出版
判型:B5
ページ数:200ページ
定価:2400円(本体)
発行年月日:2023年08月
発売日:2023年08月22日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JBS
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:JHBK