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心理療法的関係性

「現代的不幸」の時代における人と人との小さな対話

著:渡辺 雄三

紙版

内容紹介

セラピストにとって心理療法とはいかなる行為なのか,心理療法におけるクライエントとセラピストの関係性(心理療法的関係性)はどうあるべきなのか。

本書で述べられる「心理療法的関係性」をクライエントに提供することで,セラピストは「他者」として自身の存在を差し出し,その存在と関係によってクライエントはこれまでにない新しい他者体験をする。そうした体験と作業を通して,人々が背負うさまざまな「こころ・からだ」の問題は回復・修復されていく。これこそが(セラピストの存在とその関係による)「心理療法」であると著者は説く。

話題となった「最終講義」の内容を中心に,平井正三氏との対話と討論,「オープンダイアローグアプローチ」の臨床理念やユングとコフートにおける「self」についての考察,さらに荘子の思想の心理療法的理解を通して,心理療法の本質といえる他者との深い「関係性」や「対話」の重要性に迫る,自らの個人史にも触れた著者渾身の臨床と思索の集大成。

目次

まえがき

第Ⅰ部 最終講義
「現代的不幸」の時代における人と人との小さな対話,そして心理療法

はじめに
1 「現代的不幸」の時代
2 「現代的不幸」の時代とポストモダン問題
3 「〈私〉時代」と「デモクラシー」そして「セラピー(心理療法)」
4 「現代的不幸」の時代における「こころ・からだ」の問題
5 「現代的不幸」の時代における心理療法的課題
6 等身大の「私」の「こころ・からだ」を用いての秘かで小さな心理療法
7 臨床心理学・臨床心理士の基本的方法としての「臨床心理学的に配慮されたアプローチ」
8 セラピストがクライエントに提供する「心理療法的関係性」――セラピストの存在とその関係による心理療法
9 精神分析学派との共通性に見る「クライエントとセラピストとの民主的な関係性とそのコミュニケーションによる協働」としての心理療法
おわりに

第Ⅱ部 クライエントとセラピストの心理療法的関係性
――セラピストとは何者なのか,心理臨床学的対話を通して考える

第一章 セラピストがクライエントに提供する「心理療法的関係性」――セラピストの存在とその関係による心理療法
第二章:その1 心理療法における治療機序・治療作用の問題――平井正三著『意識性の臨床科学としての精神分析』を巡っての内的な対話と討論
【対話と討論1】渡辺雄三先生の論文への予備的応答
【対話と討論2】群盲が象を知るために議論し続けること――渡辺雄三先生の論文への応答
第二章:その2 「象」の巨大さに圧倒されながら群盲仲間と「象」について語り合う愉快――平井論文への応答と対話
第三章 「オープンダイアローグアプローチ」と個人心理療法
第四章 ユングとコフート――自己実現における自己愛問題
第五章 荘子「胡蝶の夢」を巡って――「斉同」「物化」という思想と心理療法

第Ⅲ部 人生の不思議な「謎」から臨床心理学徒へと導かれて
――「内なるクライエント」と対話し続ける

1 患者から学ぶ
2 河合隼雄先生に受けた教育分析の日々
3 「私の中の/私を超える/私ならざるもの」の働き
4 エティ・ヒレスムのこと
5 人生の不思議な「謎」から臨床心理学徒へと導かれて――人間環境大学を退職するにあたって

経 歴
著書・研究論文・学会シンポジュウム・学術講演など
あとがき
初出一覧

ISBN:9784772419406
出版社:金剛出版
判型:A5
ページ数:256ページ
定価:4200円(本体)
発行年月日:2022年12月
発売日:2022年12月28日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:MKM