序 章
1.航空機産業の技術競争力
(1)欧米航空機産業と日本
(2)製品の技術競争力と生産の技術競争力
(3)民間航空機の産業特性
2.技術の独占と国家の介入
(1)民間航空機産業の先行研究
(2)独占的超過利潤を生みだす技術的諸条件
(3)国家の介入と技術的諸条件
3.本書の構成
第Ⅰ部 製品の市場設計と販売・サポート――航空機を「うる」――
第1章 航空機メーカーによる市場と製品の設計――メーカーによる供給――
1.航空機市場における欧米企業の独占的な市場獲得
(1)ボーイングとエアバスによる航空機市場の独占
(2)ジェット機市場の形成・創出と航空機メーカーの淘汰・集約
(3)航空機市場の更新とエアバスの市場参入
2.航空機エンジン市場における欧米企業の独占的な市場獲得
(1)世界の主要な航空機エンジンメーカー
(2)エンジン市場のジェット化とビッグスリーの形成
(3)GE と競合する量産帯のP&W と高価格帯のRR
3.航空輸送企業の個別的要求への対応
(1)製品ファミリーの展開による市場区分の細分化
(2)階層設計による多様化要求と標準化追求の両立
第2章 航空輸送企業の一般的要求と地域的要求――ユーザーの要求――
1.市場の要求としてのトータルコストの抑制
(1)騒音・大気汚染と公害対策
(2)航空自由化とトータルコストの抑制
(3)航空機価格の抑制と航空機市場の競争激化
2.航空需要の地域特性と航空輸送企業の使用機材
(1)北米・欧州・アジアの航空需要
(2)北米の狭胴機需要とアジアの大型広胴機需要
(3)航空輸送企業による航空機材の選択
3.欧米の多頻度運航とアジアの長距離運航
(1)北米地域内の狭胴機による多頻度運航
(2)欧州地域内の狭胴機による多頻度運航
(3)東アジア地域内の大型広胴機による長距離運航
第3章 航空機のプロダクトサポートとアフターマーケット
1.航空機メーカーのプロダクトサポート
(1)航空輸送企業による航空機整備
(2)航空機メーカーによるプロダクトサポートの収益源化
2.エンジンメーカーの収益構造の要をなす交換部品事業
(1)交換部品販売の手段としての市場確保
(2)高温・高圧部位で部品交換が必要になる技術的根拠
3.アフターマーケットにおける整備事業と交換部品事業の関係
(1)航空輸送企業における整備の外注化
(2)エンジンメーカーにおける整備事業のグローバルな展開
(3)包括的整備契約による交換部品市場の囲い込み
4.航空機の製造企業・輸送企業・整備企業の関係
第Ⅱ部 製品の技術競争力と生産の技術競争力――航空機を「つくる」――
第4章 航空機機体における航空機メーカーの主導的役割
1.中核技術としての主翼の設計と開発
(1)国家的支援のもとでの主翼の設計・開発
(2)後退翼の機械加工とNC フライス盤
2.ボーイングの技術競争力を支える日本企業
3.国際分業の技術的基礎としての情報通信技術
(1)767の開発におけるコンピュータによる設計情報の処理
(2)777の開発における3 次元CAD による設計変更件数の削減
4.ボーイングにとっての中核領域と周辺領域
第5章 航空機エンジンにおける日本企業の段階的成長と参入障壁
1.日本の航空機エンジン事業と国際共同開発
(1)V2500エンジンの国際共同事業
(2)サプライヤの契約形態と収益配分
2.部品パートナーからモジュール・パートナーへ
(1)川崎重工業によるRR に対する中圧圧縮機モジュールの供給
(2)IHI による低圧タービンモジュール及びブレードの供給
(3)三菱重工業による燃焼器モジュールの供給
3.国際分業における欧米企業の主導性
(1)製品群別にみた契約形態――大型エンジンと中小型エンジン
(2)担当部位にみる主導性――中核技術としてのエンジンコア
(3)開発と販売のプロセスにみる主導性
4.航空機産業の二重の参入障壁
第6章 航空機システムの一括外注化と株主利益の重視
1.システム・インテグレータとシステム・サプライヤの形成
(1)ボーイングによる内製範囲の縮小と一括外注化
(2)情報処理装置による機能統合と航空機システムの一括開発
(3)生産コストの抑制とメガサプライヤへの一括外注化
2.システム・インテグレータとしてのボーイングの技術競争力
(1)基本設計とシステム設計における主導性
(2)中核技術としての飛行制御システム開発における主導性
(3)システム統合における主導性
(4)階層的な国際分業構造における主導的役割
3.過度の外注化がもたらした技術競争力の低下
(1)ボーイングとメガサプライヤの対立関係
(2)人員の削減・流出によるトラブル対応能力の喪失
4.短期的な株主利益の重視という経営方針への転換
(1)企業合併と本社移転後の短期的な株主利益重視
(2)自社株買いによる株価上昇と株主と経営者の利益実現
(3)ボーイングの株価上昇と自社株買い
第7章 航空機メーカーによる生産の効率化とコストの抑制
1.民間航空機の生産拠点と国際的な分業構造
2.航空需要に応じた増産と生産の効率化
(1)加工組立技術と複合材料による軽量化と生産コスト抑制
(2)リーン生産システムの導入による生産の効率化
(3)航空機の増産と移動式組立ラインの導入
3.生産拠点の選定と労働コストの抑制
(1)労働協約を通じた労働条件の向上
(2)福利厚生の妥協を条件とした生産の継続
(3)生産拠点の集約と安全・労働問題
4.生産基盤の脆弱化と技術競争力の低下
第Ⅲ部 技術競争力を支える認証制度――航空機を「とばす」――
第8章 国家の認証制度と航空機メーカーへの権限委譲
1.認証の一般的プロセスとボーイングの優位性
(1)航空規則にもとづく設計と製造の認証
(2)ボーイングにおける新規開発機の認証プロセス
(3)経験にもとづく技術開発力と政治的な交渉力
2.権限委譲による認証プロセスの効率化と安全性
(1)連邦航空局から航空機メーカーへの権限委譲
(2)権限委譲と代理人の独立性
(3)ボーイングの介入による認証プロセスの効率化
3.認証制度を通じた技術競争力の強化と脆弱化
終 章
1.グローバル市場におけるボーイングの盛衰
(1)ボーイングによる技術競争力の獲得
(2)ボーイングによる技術競争力の喪失
2.日本航空機産業の課題
あとがき
参考文献
人名・企業名・製品名索引
事項索引