日本語版への序章
監訳者より 新装版へ寄せて
凡 例
序 論
嗅覚に興味をもたない哲学者たち
第Ⅰ部 嗅覚による感受性
第1章 自然と偏見
1 この感覚は鈍いのか鈍くなったのか
鼻に与えられる劣等性/子供とその鼻/嗅覚の遺伝的優位性/培われた鈍さ
2 この感覚は原始的なものか、動物的なものか
未開人とその鼻/アリストテレスによる嗅覚の人間性
3 不快で非社交的な感覚か
カントによる鼻の都市感覚の欠如/鼻の社会性
4 汚らしく非道徳な感覚か
汚いものの臭い、聖なるものの匂い/ 鼻の道徳性
5 主観的でまるで信用ならない感覚か
第二性質としての匂い/ホッブズと鼻の真実
第2章 鼻から見た二つの視点
1 他性の香り
憎悪の鼻/愛の鼻
2 自己同一性の香り
属性の嗅覚的な構築/独特の本質としての香り/匂いと主観的記憶
第Ⅱ部 嗅覚の美学
第3章 匂いの芸術的表現
序論――嗅覚、言葉をもたない感覚か
匂いの文学表現
1 『谷間のゆり』――鋭い嗅覚による恋愛小説――
2 マルセル・プルーストの嗅覚世界
嗅覚――親密な空間と内面性の感覚/嗅覚――情動と愛の欲望の感覚/嗅覚――無意識の記憶と永遠の感覚
匂いによる音楽と造形の表現
1 音楽と香り
ドビュッシーにおける匂いの音楽(『ペレアスとメリザンド/「夜の薫り」 /
「音と香りは夕暮れの空気に漂う」)
2 絵画と香り
ゴンザレス·コケスと嗅覚の寓話/ゴーギャン《ノアノア》――香りのする絵
3 彫刻と香り
ズンボ――悪臭のする彫刻/ロダンとアイリスの匂い
4 嗅覚的な建築へ
第4章 嗅覚芸術
1 香りの芸術とその美学的地位
美の芸術もしくは快の芸術/香りの構成とその地位/香水瓶の芸術/現代の香り技術の限界
2 嗅覚芸術の哲学的モデル――プラトンにおける匂いの純粋な快楽――
3 想像上の文学的モデル――デ・ゼッサントと嗅覚芸術――
4 実在する歴史的モデル
―――「香道」、日本における「道」としての香――
香道の時代背景と歴史的発展段階/新しい嗅ぐ芸術――香を「聞く」こと/香りの新しい芸術へ
5 香りの現代アート誕生
オドラマの登場/インスタレーションにおける嗅覚の促進/小山泰史、匂いの彫刻
第Ⅲ部 嗅覚哲学
第5章 無嗅症から全嗅症へ――嗅覚哲学の可能性の条件
序論――哲学者の鼻
嗅覚探求のベーコン的モデル
1 パルメニデスとアナクサゴラスの嗅覚についての沈黙
2 デモクリトスと漂う匂い
3 ヘラクレイトス――理性の呼吸――
4 エンペドクレスの全嗅症
第6章 嗅覚哲学のモデル
1 ルクレティウスの英知
感覚の真実性と専門――鼻の地位向上の条件/鼻に固有の真実
2 鼻を通じてもたらされる精神――コンディヤックと彫像――
彫像の虚構と嗅覚の優越性
(1) 嗅覚単独の力
嗅覚のみに限られている人間の最初の認識/嗅覚から匂いの記憶と想像まで/嗅覚から感情へ/嗅覚から一般観念と自己観念まで
(2) 嗅覚の他の感覚への漸進的再統合
嗅覚の聴覚、味覚、視覚への再統合/触覚の嗅覚への再統合/全感覚の漸進的な再統合と、嗅覚への論理的帰結
3 ニーチェにおける哲学者の鼻
嗅ぐことの価値を高めること/虚偽の悪臭/「全く別の香り」
新装版へのあとがき
監訳者あとがき
参考文献