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延命の倫理

医療と看護における

著:柏﨑 郁子

紙版

内容紹介

あたらしい職業倫理の提唱

なぜ<延命>が否定的にとらえられるのか


「倫理」である以前に「生理学的」であり、そうであることだけが、死なせないことを職務として胸を張るような「倫理(もしかすると希望)となることを示そうと藻掻いて、本書は書かれた。

現代の<延命>にかかわる医療と看護の倫理についてあらたな視座をここに提示する!

目次

序章1
第一部 〈延命〉をめぐる医療と制度
第1章 〈延命〉と見做される医療
第1節 〈延命〉という概念、その起源と現代的用法
1)語義からみた〈延命〉
2)古典的vitalismからみた〈延命〉
3)あたらしいvitalismの趨勢
第2節 患者にとっての〈延命〉
1)不自然さへの嫌悪
2)医療化への抵抗
第3節 臨床では〈延命〉の何が問題とされるのか
1)〈延命〉の臨床
2)医療従事者は〈延命〉についてどう考えているか
第4節 小括
第2章 〈延命〉をめぐる争点
第1節 生命をめぐる争点―生命の神聖性と生命の質、生物学的生命と人格的生命
1)生命の神聖性と生命の質―カイザーリンク、クーゼ、ブロック
2)生物学的生命と人格的生命―エンゲルハート、トゥーリー、シンガー、ファインバーグ
第2節 「死の予期的状態」をめぐる争点
1)Dying―キャラハン
2)「死の予期的状態」は定義できない
3)厚生労働省における「死の予期的状態」の変遷
第3節 意思決定をめぐる争点―自律、自己決定、プライバシー
1)自律、自己決定、プライバシー―クインラン事件分析
2)自己決定の価値
第4節 小括
第3章 〈延命〉に対応する方法の展開
第1節 自己決定を実現するための方法―インフォームド・コンセント
1)インフォームド・コンセントの道徳原則と法
2)インフォームド・コンセントの歴史
3)インフォームド・コンセントの概念
第2節 自己決定ができなくなる事態に備える方法―事前指示
1)カトナーによるリビング・ウィルの提案
2)事前指示の問題点―SUPPORT研究
第3節 事前指示の欠点を克服する方法―ACP:権利から統治へ
1)国家のACPへの信頼と期待
2)日本のACP
3)医学的無益性
第4節 小括
第4章 〈延命〉という問題に応じるための保健医療福祉政策
第1節 介護保険制度
1)介護というカテゴリーの誕生
2)「福祉のターミナルケア」論争
第2節 「健康増進法」と「社会保障制度改革推進法」
1)健康寿命
2)社会保障制度の改革
第3節 あたらしい公衆衛生と「終末期」ケアの融合
1)緩和ケアの公衆衛生への包摂
2)地域包括ケアシステムとACP
第4節 小括
第二部 〈延命〉をめぐる看護とその倫理
第5章 看護実践のアイデンティティをめぐる争点
第1節 看護師が行う看護という概念の構築
1)米国における看護理論発展の背景
2)日本の看護史
3)ナイチンゲールの位置
4)〈延命〉の文脈で推奨される医療者の態度
第2節 看護における《ケアリング》の展開
1)ノディングスの《ケアリング》論
2)ワトソンの《ケアリング》論
第3節 ケアの《現象学》
1)ベナーの現象学的看護論
2)日本の《現象学》的ケア論
第4節 小括
第6章 クーゼにおける《ケアの倫理》批判
第1節 クーゼについて
第2節 クーゼは《ケアの倫理》をどのように批判したか
第3節 「健康」の曖昧さと功利主義的《ケアの倫理》
第4節 小括
第7章 〈延命〉の医療における看護の機能
第1節 看護師が行う「意思決定支援」
1)ADMへの看護師の関与―最近の研究から
2)「意思決定支援」への看護師の関与―日本の報告
第2節 「意思決定支援」の多角的分析
1)経済学からみた「意思決定支援」
2)モルの人類学からみた「意思決定支援」
3)中村の人類学からみた「意思決定支援」
第3節 〈延命〉のための看護
1)看護過程からの分析
2)「生理的欲求」の充足
第4節 小括
終章 〈延命〉の医療における看護の倫理
初出一覧
文献

著者略歴

著:柏﨑 郁子
東京女子医科大学看護学部講師

ISBN:9784771038127
出版社:晃洋書房
判型:A5
ページ数:328ページ
定価:4500円(本体)
発行年月日:2024年02月
発売日:2024年03月12日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:QDTQ