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ポップカルチャーの教育思想

アカデミック・ファンが読み解く現代社会

著:渡辺 哲男

紙版

内容紹介

ガンプラ、スポーツマンガ、『ジョジョの奇妙な冒険』……
「ポップカルチャー」というプリズムを通して現代社会を照射する
「ポップカルチャー」に含まれる多様な作品とそれらを受容する私たちの感性は複雑に交差し、時代や社会のあり方を象徴的に浮かび上がらせることがある。本書は、さまざまな「推し」をもち、あるいは同人誌を制作する研究者(アカデミック・ファン)が、「ポップカルチャー」を通して浮かび上がってくる現代社会のありようや人間観を、自分自身を振り返りながら読み解く試みである。(序章より)

目次

はしがき―少年の日のLEDの思い出―

序 章 「ポップカルチャー」とは何か?
    ―デジタルメディア時代のポップカルチャーと教育をめぐって―
はじめに
1 教育にとって/おいてポップカルチャーはいかなる対象だったのか
2 デジタルメディアが生み出す新たな形式
3 デジタルメディア時代のポップカルチャーの可能性と課題

第1章 「なさそう」が「ありそう」になる世界から見通せること
   ―『グフ』における宇宙世紀とプラモデルの相互連関に着目して―
はじめに——ヴァーチャルとフィジカルの融合をめぐるいくつかのケースから
1 ガンプラと宇宙世紀の相互連関——ふたつの先行研究から
2 「グフ」の構築
3 補論として——グフの「リアル」へ
おわりに——「さもありそう」につなぐということ

第2章 現代のスポーツマンガにおける凡人の努力
   ―不平等社会における希望の見出し方、あがき方― 
はじめに
1 異世界転生ものとソシャゲに見るリセット感覚
2 スポーツマンガにおける努力の変化
3 道徳教育を考える――「結局は才能があったんじゃないか」にどうこたえるか
4 ブラック化の懸念と、それを乗り越えていく可能性
おわりに

第3章 「宿命」に抗する現代的手法
   ―『ジョジョの奇妙な冒険』第七部・第八部における「回転」・「球体」表現の比較を通して―
はじめに
1 『ジョジョの奇妙な冒険』はどのように論じられてきたか
2 テーマとしての「人間讃歌」とルネサンス思想、そして「宿命」観
3 第七部・第八部の「回転」・「球体」表現の比較に見る「宿命」観の変化
おわりに――現代社会に蔓延する新たな「宿命」論に抗して?

第4章 「推しのいる生」の何が新しいのか
    ―当事者から見た推し文化論―
はじめに
1 推し文化をどう理解するか
2 他者に没頭するオタク―「主体性なき主体」の出現
3 近くて遠い場所から応援するオタク―「へだたり」のうえに成り立つケア
4 引きこもらないオタク―二重化される現実世界
5 どのような社会が推し文化を生んだのか―脱政治化の時代における批評という問題

第5章 音楽ライブイベントにおける音楽享受について
    ―コロナ禍の音楽シーンの状況をふまえて―
はじめに
1 新型コロナウイルスの流行が音楽シーンに与えた影響
2 音楽ライブイベントの特質とは何か――オンライン上における音楽享受との比較から
3 「生のエンターテインメントの代替」問題再考
おわりに


第6章 コミックマーケットという「場」
    ―「場の魔法」が起こった参加者と、それが解けた研究者の〈重なり〉―
はじめに
1 日本で最大規模の同人誌即売会としてのコミケ
2 コミケへの参加について
3 東京オリンピックによる延期とコロナ禍による中止
4 再開後のコミケ
おわりに

終 章「マイナス宇宙」における父子の戦いと「ネズミ」が姉を糾弾する場面について
   ―『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』と『人間蒸発』―
はじめに――本章の執筆が可能になった背景
1 「セット」の上で戦う父子
2 『人間蒸発』における「最終決戦」
3 市川浩による『人間蒸発』の考察から
おわりに――「共生」の思想へ


あとがき―中年の日のオンライン授業の思い出―

ISBN:9784771037236
出版社:晃洋書房
判型:A5
ページ数:192ページ
定価:2300円(本体)
発行年月日:2023年02月
発売日:2023年03月02日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JN
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:JHB