「国家語」という思想
多言語主義か言語法の暴力か
著:西島 佑
内容紹介
「国家語」は「国語」とどのように違うのか。国家が言語を法的に制定すればどのような作用を社会におよぼすのか。
「国家語」を考えることで多文化主義・多言語主義、言語政策、言語権、言語法の権力・暴力に眼をむける。
オーストリア帝国、ソ連・旧ソ連地域で確立してきた多言語主義の思想を「国家語」という観点から考察し、日本語にたどりついてきた経緯と意義を考察する思想史のこころみ。
目次
まえがき
第1章 日本語空間における「国家語」の諸相と本書の方針
1.「国家語」はどのように語られているのか
2.国語と国家語の違いを問う先行研究
3.本書の問いおよび目的
4.方法とテクスト
5.本書の構成
第2章 「国語」と「国家語」:2つの言語的近代
1.前近代と言語
2.国民国家と国語:ひとつめの言語的近代
3.多言語国家と国家語:もうひとつの言語的近代
4.小括
第3章 ドイツ語圏における「国家語」の確立
1.オーストリア=ハンガリー二重帝国について
2.多言語国家のあり様
3.„Staatssprache”の誕生と展開
4.小括
第4章 政治・学術上の「国家語」
1.政治上の「国家語」:ヴルムブラント提案とシャールシュミット提案
2.学術上の「国家語」:マデイスキーとツォルンのばあい
3.„Staatssprache”のその後
4.小括
第5章 カウツキーとレーニン:社会主義思想における「国家語」
1.カウツキーの「国家語」批判
2.ブリュン綱領
3.レーニンの「強制的な国家語」
4.小括
第6章 スターリン時代、ソ連邦公用語、ソ連崩壊後の「国家語」
1.スターリンとコレニザーツィヤ
2.ソ連邦公用語と国家語法
3.ポスト・ソヴェト地域の「国家語」
4.小括
第7章 保科孝一による日本語空間への翻訳
1.保科孝一と「国家語」
2.保科の「国家語」概念
3.忘却時代の例外:石黒魯平
4.小括
第8章 田中克彦による発見
1.前期田中の「国家語」
2.『言語生活』上の「国家語」論争
3.後期田中の「国家語」
4.田中以後の「国家語」
5.小括
第9章 イ・ヨンスクの「国家語」批判
1.「日本語の国際化」と「宗主国家語」
2.田中克彦と石剛、イ・ヨンスクとのズレ
3.リベラリズムとポストモダニズムの対立
4.小括
第10章 本書における「国家語」の概念
1.「国家語」という思想のまとめ
2.中範囲の概念規定
3.「国家語」の今後
終章 国家語は多言語主義の夢をみるか?
1.「法」について
2.法の暴力
3.国家語の脱構築
あとがき
文献・資料
索引