はじめに
1 本書の問題意識と研究動機
2 「当事者」という地点から「ひきこもり」と社会を問う
3 調査概要と分析視角および調査倫理への配慮
4 本書の構成と記述スタイルについて
序 章 「ひきこもり」小史
――「ひきこもり」の当事者活動を中心に
1 「ひきこもり」の社会問題化の過程
2 「ひきこもり」への社会学的研究の流れ
第Ⅰ部 当事者研究としての社会学
第1章 方法としての自分史
――当事者学としての自分史の可能性
1 本章の課題
2 〈回復〉のための自分史――自己物語産出の実践としての自分史
3 調査・研究としての自分史の位置づけ
4 当事者学としての自分史
5 「『ひきこもり』の自分史」の社会学的意義
6 まとめ
第2章 社会学的な当事者研究へ向けた試論
――私が直面した研究をするにあたっての方法論的問題点の整理
1 本章の課題
2 社会学における当事者の扱われ方
3 当事者研究・当事者発信の隆盛
4 当事者による/としての社会学とその問題点
5 研究における私的側面と公的側面
6 まとめ
第Ⅱ部 「ひきこもり」の自分史
第3章 私が育った環境・場所・時代
1 父親の死と「遺言」,私の生まれ育った環境について(1987年~)
2 小・中学校時代(1991年4月ごろ~1999年秋ごろ)
3 高校受験(1999年秋ごろ~2000年3月ごろ)
第4章 不登校からひきこもり,そしてその後
1 中学卒業~高校入学~退学(2000年3月ごろ~2002年3月ごろ)
2 高校退学後~大検取得(2002年3月ごろ~2003年3月ごろ)
3 一人暮らし~下宿先(一人暮らし)での「ひきこもり」1年目(2003年3月ごろ~2004年3月ごろ)
4 一人暮らし~下宿先(一人暮らし)での「ひきこもり」2年目(2004年3月ごろ~2004年11月ごろ)
5 大阪府立桃谷高校(定時制・多部制単位制)編入学準備(2004年11月ごろ~2004年3月ごろ)
6 桃谷高校編入学(2005年4月)
7 3回目の高校生活と大学受験(2005年4月~2006年2月ごろ)
第5章 大学入学後
1 高校卒業~大阪商業大学総合経営学部入学(2006年2月ごろ~2006年4月末)
2 祖父の死(2006年4月末~2006年7月)
3 大商大~関西学院大学社会学部編入学(2006年7月~2008年3月)
4 関学編入学~卒論(自分史)執筆(2008年3月末~2009年10月ごろ)
5 自分史を書き終えて
第Ⅲ部 「ひきこもり」の生きづらさはどう理解できるか
第6章 「ひきこもり」当事者の規範的/多元的なアイデンティティ
――「親からの期待」に対峙する自己の語り
1 本章の課題
2 若者のアイデンティティをめぐる30年――多元化する自己のあり方
3 「経済的自立」と「他者との親密なコミュニケーション」という問題枠組み
4 「ひきこもり」当事者の規範的なアイデンティティをめぐる語り
5 親からの期待と自分の状況との板挟み
6 まとめ
第7章 「ひきこもり」と親密な関係
――当事者の生きづらさの語りにみる性規範
1 本章の課題
2 セクシュアリティの語りを下支えする規範
3 個人を拘束する規範と個人的な経験や欲望が絡み合う「生きづらさの語り」
4 まとめ
第8章 「ひきこもり当事者」における他者の模倣とモデルの不在
――欲望の三角形理論を手掛かりに
1 本章の課題
2 欲望の三角形理論とは何か?
3 モデル=ライバルとしての親密な関係
――媒介者に対する模倣と葛藤の狭間
4 「ひきこもり」当事者にとっての他者の欲望を模倣することとその困難
5 「ひきこもり」の当事者活動と「新しい生き方」の模索
6 まとめ
――「普通」から解放された欲望のあり方に向けて
第Ⅳ部 「ひきこもり」の当事者活動を考える
第9章 「社会/自己」を志向する「ひきこもり」当事者活動
――当事者団体グローバル・シップスこうべ(ノア)を事例に
1 本章の課題
2 ノアの活動方針――支援者の大会の実行委員会での出来事
3 グローバル・シップスこうべ(ノア)の誕生
4 自助グループ活動――「若者のつどい」,「交流のつどい」
5 シンポジウムの開催
6 ひきこもりに関する情報の提供
7 ノアの現状と本章のまとめ
第10章 「ひきこもり」の当事者として〈支援〉するということ
――「当事者というカテゴリー」を読み替える実践としての当事者活動
1 本章の背景
2 本章における先行研究と本章の課題
3 「ひきこもり支援」における立場性を問う実践
4 語りと身体による共同性の模索
5 まとめ
第11章 社会運動としての「ひきこもり」当事者活動
――自分の価値を取り戻すための集合的戦略
1 本章の課題
2 マイノリティの社会運動としての「ひきこもり当事者活動」
3 自己変革から制度変革へ
――当事者活動における言説状況の変化
4 「価値の取り戻し」の実践
――発信,対話,協働
5 まとめと今後の課題
――「アイデンティティからの自由」が可能な活動に向けて
おわりに
あとがき
参考文献
索 引