ドイツ統一とアメリカ外交
著:吉留 公太
内容紹介
ゴルバチョフ書記長は, 1989年夏に冷戦が終わりつつあると語った. しかしブッシュ大統領は, ベルリンの壁が崩壊しても, マルタ米ソ首脳会談においても冷戦終結を宣言せずにドイツ統一交渉を進めた. ヨーロッパの冷戦は, いつ, どのように終結したのか?
近年公開されたアメリカや各国の新しい史料と国際的な研究動向を踏まえて, ジョージ・H・W・ブッシュ政権の対ソ・対ヨーロッパ政策の実態を解明し, 東西ドイツ, アメリカ, ソ連, イギリス, フランスが行ったドイツ統一交渉の経緯を詳解することによって, ヨーロッパ冷戦終結過程の全体像に迫る.
目次
はしがき
略 語 表
序 章 ドイツ統一交渉とアメリカ外交がヨーロッパ冷戦終結過程に及ぼした影響
第Ⅰ部 研究動向の整理と研究課題の明確化
第1章 ヨーロッパ冷戦終結過程の性格とドイツ統一交渉
1 ヨーロッパ冷戦終結過程の二面的性格
2 ドイツ統一交渉に関する研究動向
第Ⅱ部 ブッシュ政権の対ソ・対ヨーロッパ政策――1989年1月~10月――
第2章 軍事的抑止を重視した対ソ・対ヨーロッパ政策
1 ブッシュ政権の政策形成過程
2 対ソ政策の包括的な見直し作業
3 短距離核戦力「近代化」の難航と積極的な対ソ関与論
第3章 ソ連と東ヨーロッパ諸国への経済援助の制限
1「国際コンソーシアム」構想による消極的援助政策の制度化
2 国家安全保障指令(NSD)23号の両義的な対ソ交渉方針
3 東ドイツ情勢の変動とブッシュ政権内の相違
第Ⅲ部 ベルリンの壁崩壊によるドイツ統一の現実化――1989年11月~1990年2月――
第4章 ベルリンの壁崩壊と二つのドイツ統一構想
1 ベルリンの壁崩壊
2 ドイツ統一に伴うリスクの評価
3 ホワイトハウスによる早期吸収合併論
4 ベーカー国務長官による漸進的・段階的統一論
第5章 マルタ米ソ首脳会談における「冷戦終結」宣言の真相
1 マルタ米ソ首脳会談
2 ドイツ統一に関するブッシュ大統領の発言
3 戦勝四か国大使級協議の波紋
第6章「NATO の管轄範囲は1インチも東に拡大せず」
1 国際的な減速圧力と「2+4」枠組みの発案
2 90年2月9日のベーカー国務長官による発言
3 米独首脳による統一ドイツのNATO帰属と早期吸収合併の確認
第Ⅳ部 ドイツ統一交渉の展開とヨーロッパ冷戦終結過程の性格形成――1990年3月~10月――
第7章 ドイツ統一交渉の本格化
1「2+4」外相会議開始までに米独の積み上げた既成事実
2 第一回「2+4」外相会議でのソ連による「同期化」の要求
第8章 ホワイトハウスの消極的な対ソ配慮と独ソ首脳会談による統一交渉の打開
1 NATO とワルシャワ条約機構加盟国間の「共同宣言」の行き詰まり
2 NATO ロンドン首脳会議とモスクワ/コーカサス独ソ首脳会談
3 NATO ロンドン宣言の意義に関する考察
第9章 ペルシャ湾岸危機とドイツ統一交渉の最終決着
1 グローバルな冷戦終結過程とヨーロッパ冷戦終結過程との連動
2 独ソ間の金額交渉とペルシャ湾岸危機
3 ドイツ最終規定条約第5条3項と覚書の成立過程
終 章 ヨーロッパ冷戦終結過程の二面的性格が形成された経緯
1 ドイツ統一交渉がヨーロッパ冷戦終結過程に及ぼした影響
2 アメリカ外交がドイツ統一交渉とヨーロッパ冷戦終結過程に及ぼした影響
エピローグ ドイツ統一後のヨーロッパ情勢と二面的性格の行方
あとがき
参考史料・主要参考文献
人名索引
事項索引