再帰的近代のアイデンティティ論
ポスト9・11時代におけるイギリスの移民第二世代ムスリム
著:安達 智史
内容紹介
9・11後の西洋ムスリムの実像に迫る
「ムスリムであること」と「イギリス人であること」はいかに両立するのか。あるいはそれはどのような理路のもとで可能になっているのか。
ポスト9・11時代に生きるイギリスの移民第二世代ムスリムを、再帰的近代のアイデンティティ論を通じて分析する。多文化主義、女性とエージェンシー、情報化、解釈実践、ヒジャブの意味論などをキーワードに「聖なるものを人間化する」現代ムスリムのリアルを描きだす。
目次
第Ⅰ部 背景・理論枠組み
第1章 イギリスの移民第二世代ムスリムのアイデンティティと社会統合――二重意識、女性、多文化主義
1 イギリスの若者ムスリムと二重意識
2 女性の身体と政治
3 アイデンティティと政治――存在論的安心、多文化主義、ハイブリディティ
4 多文化主義の失敗
5 多文化主義から、インターカルチュラリズムとリベラル・ナショナリズムへ
6 イスラモフォビア、オリエンタリズム、ジェンダー
7 ディスコースとアイデンティティ
8 本書の構成
第2章 イギリスにおけるムスリム――形成、政治、現状
1 大英帝国とインド
2 戦後におけるアジア系移民
3 女性の移住とコミュニティの形成
4 イギリスの多文化主義
5 ラシュディ事件――イスラームの意識化と他者化
6 平行生活と若者の過激化
7 アイデンティティと社会統合の関係づけ
8 現代イギリスにおけるムスリムのアイデンティティと社会統合をめぐる指標
第3章 先行研究と理論的フレーム
1 問題意識と課題――アイデンティティの閉鎖性と開放性
2 人種から、文化、そして宗教へ
3 閉鎖性の理論
4 開放性の理論
5 エージェンシーの理論
6 アイデンティティの閉鎖性と開放性――再帰的近代化論
7 社会統合モデルとしての「ヨーロッパ・ムスリム」
第4章 調 査 概 要
1 フィールド
2 調査概要
3 アウトサイダー・アプローチ
4 分析をめぐる方針・方法
5 インフォーマントの属性
第Ⅱ部 分析・結果
第5章 差別、メディア、表象
1 問題の所在――スティグマとアイデンティティ
2 9・11のインパクト
3 人種主義
4 ムスリムのメディア表象
5 『市民カーン』をめぐって
6 まとめ
第6章 ブリティシュネスと「多文化空間」としてのイギリス
1 問題の所在――ブリティッシュネスとは?
2 「イギリス人であること」
3 「生活様式」としての飲酒と女男交際
4 「価値」としてのブリティッシュネス
5 「多文化空間」としてのイギリス
6 まとめ
第7章 〈文化/宗教〉の区別
1 問題の所在――イスラームからみるイギリス社会
2 〈文化/宗教〉の区別とその機能
3 〈文化/宗教〉の対比
4 〈強制による結婚/アレンジド・マリッジ〉の区別
5 〈文化/宗教〉の区別の失敗
6 まとめ
第8章 イスラームの〈知識〉とインターネット――イジュティハードの機能
1 問題の所在――イスラームの〈知識〉と社会統合
2 〈知識〉を通じた卓越化
3 〈知識〉をめぐる環境変化
4 伝統的教育・権威への不満
5 インターネットと〈知識〉の消費
6 三角測量とイジュティハード
7 インターネットと信仰の個人化
8 まとめ
第9章 女性と教育
1 問題の所在――イギリスのムスリム女性の学校適応と教育意識
2 教育意識
3 家族の教育への関与
4 イスラーム、キャリア、結婚
5 教育のもう一つの機能
6 まとめ
第10章 ヒジャブの意味論
1 問題の所在――「ヒジャブ」について
2 ヒジャブの意味(一)――慎み深さと自尊心
3 ヒジャブの意味(二)――信仰と自律
4 ヒジャブを着用しないこと(一)――外なるヴェールと内なるヴェール
5 ヒジャブを着用しないこと(二)――定命、試練、準備
6 いつ準備ができるのか?
7 まとめ
終 章 結 論――新たなるイスラーム理解に向けて
1 再帰的近代における移民第二世代ムスリムのアイデンティティ管理と社会統合
2 ムスリムと多文化主義
3 学術的貢献
4 課題と展望
あとがき――フィールドで出会った人々を思いだして
Appendix
1 インフォーマントの属性(女性)
2 インフォーマントの属性(男性)
ISBN:9784771033320
。出版社:晃洋書房
。判型:A5
。ページ数:480ページ
。定価:5800円(本体)
。発行年月日:2020年03月
。発売日:2020年04月05日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KC。