出版書誌データベース

人をひきつけてやまない真珠の輝き。その輝きはどのようにして生み出されるのか。真珠の光学特性、真珠層形成メカニズムの解明をはじめ、良質な真珠貝の生産、病気対策、真珠収穫後の貝肉・貝殻の再利用など持続可能な真珠生産のための方途を、真珠研究の第一人者たちがまとめた最新情報。オールカラー。Ⅰ　ゲノム解析の進展　1章　海洋生物研究におけるゲノム解析研究と展望（佐藤矩行）2 章　真珠の安定生産に向けたアコヤガイゲノム情報の利用（竹内　猛）　Ⅱ　真珠層の色調　3 章　真珠の光学特性（室谷裕志）4章　真珠層の黄色発現と色素（柿沼　誠・鈴木道生・永井清仁）5章　アコヤガイ貝殻内の色素蓄積の遺伝子を探す（木下滋晴・黄馨田・浅川修一）　Ⅲ　真珠形成のメカニズム　6章　アコヤガイ貝殻内の有機基質に着目した貝殻形成の分子メカニズム（二川　慶・鈴木道生）　7章　アコヤガイ外套膜殻側上皮細胞の培養と培養細胞の移植による真珠作成　（淡路雅彦・永井清仁・前山　薫）　8 章　光輝層形成における筋タンパク質の役割の可能性　（舩原大輔・鈴木道生）Ⅵ　持続的な真珠養殖のために　9 章　持続可能な真珠養殖（永井清仁）　10 章　アコヤガイの環境応答―貝殻に記録された環境・生態の履歴―（西田　梢・田中健太郎・佐藤　圭）　11 章　病気への取り組み：稚貝大量へい死の原因ウイルス（松山知正）　12 章　新しい視点によるアコヤガイ大量へい死抑制技術開発の試み（三浦　猛・三浦智恵美・高橋雅治）　13 章　アコヤガイの養殖現場聞取り調査（北村　徹・村山裕佳・田坂行男）　Ⅴ　真珠貝の有効活用　14 章　アコヤガイ有機成分の有効利用（石崎松一郎）　15 章　持続可能な開発目標への試み－コンポストを利用したワイン作り（前山　薫・岩崎直明）　16 章　三重県におけるパールコンポスト® の取り組み（渥美貴史・清水砂帆子・中村雄一）

Ⅰ　ゲノム解析の進展　
１章 海洋生物研究におけるゲノム解析研究と展望（佐藤矩行）　
1・1　ゲノム科学の進展　1・2 　発生における遺伝子発現プロフィル解析の進展　1・3　 環境DNA（eDNA）法
2 章　真珠の安定生産に向けたアコヤガイゲノム情報の利用（竹内　猛）　
2・1　コヤガイゲノム解読プロジェクト　2・2　アコヤガイゲノム解読の新手法　2・3　最新のアコヤガイゲノム解読でわかったこと　2・4　近交による遺伝的多様性の低下　2・5　持続可能なアコヤガイ真珠養殖に向けて

Ⅱ　真珠層の色調
3 章　真珠の光学特性（室谷裕志）
3・1　真珠の光沢　3・2　光学多層膜モデルによる真珠の干渉色の検討　3・3　光学多層膜モデルにおける入射角依存性　3・4　光学多層膜モデルにおける膜厚誤差の影響　3・5　光学多層膜モデルにおける可干渉性　3・6　真珠核の色調への影響

4章　真珠層の黄色発現と色素（柿沼　誠・鈴木道生・永井清仁）　
4・1　真珠層の黄色発現　4・2　真珠層の黄色色素　1）黄色色素の抽出と分画　2）HCl－MeOH抽出液に含まれる黄色色素　3）アセトン抽出液とSDS－DTT抽出液に含まれる黄色色素　4・3　黄色発現に関与する遺伝子　1）鉄代謝に関与する遺伝子　2）生体色素の生合成　3）生体色素の生合成候補遺伝子の発現解析　4・4　真珠層の黄色発現と物理化学的性質　1）貝殻真珠層の黄色度と鉄含量の評価　2）黄色系貝殻真珠層の物理化学的性質　4・5　今後の展望

5章　アコヤガイ貝殻内の色素蓄積の遺伝子を探す　（木下滋晴・黄馨田・浅川修一）
5・1　貝殻の色　5・2　貝殻に蓄積される色素　5・3　アコヤガイの貝殻や真珠に蓄積される色素　5・4　既存の色素合成に関わる遺伝子と貝殻の色素蓄積との関係　5・5　比較トランスクリプトームによる色素蓄積関連遺伝子の探索　5・6　遺伝学的解析による色素蓄積遺伝子領域の探索　5・7　白色貝の原因遺伝子の探索　5・8　白色貝の原因遺伝子を含む染色体領域の探索　5・9　全ゲノムシーケンシングによる変異の確認　5・10 　Exocyst complexと色素蓄積との関係　5・11 　課題と今後の展望

Ⅲ　真珠形成のメカニズム
6章　アコヤガイ貝殻内の有機基質に着目した貝殻形成の分子メカニズム（二川　慶・鈴木道生）
6・1　炭酸カルシウム　6・2　アコヤガイ貝殻真珠層　6・3　アコヤガイ貝殻真珠層に含まれるバイオミネラルタンパク質　6・4　Pif　6・5　バイオミネラルタンパク質での酸性アミノ酸と塩基性アミノ酸　6・6　炭酸カルシウム表面でのタンパク質の立体構造解析　6・7　二次元NMR法ROESYを用いたペプチドの立体構造解析　6・8　Saturation transfer differenceによるアラゴナイト結晶とペプチドの結合距離の分析　6・9　炭酸カルシウム形成実験　6・10　構造・機能解析から予想したPif 80のアラゴナイト表面での結合モデル　6・11　おわりに

7章　アコヤガイ外套膜殻側上皮細胞の培養と培養細胞の移植による真珠作成　（淡路雅彦・永井清仁・前山　薫）
7・1 貝類の細胞培養法　1）貝類の細胞培養　2)外套膜の細胞培養　7・2 アコヤガイ外套膜殻側上皮細胞の細胞培養法　1）殻側上皮細胞の分離　2）基礎培養液と添加物　3）貝類の細胞成長因子　4）貝類の細胞接着分子　7・3 培養した外套膜殻側上皮細胞による真珠作成の試み　1）外套膜殻側上皮細胞によるろ胞状構造の形成　2）ろ胞状構造の形成に基礎培養液が及ぼす影響　3）培養殻側上皮細胞の移植による真珠作成　7・4　展　望

8 章　光輝層形成における筋タンパク質の役割の可能性　（舩原大輔・鈴木道生）
8・1　貝殻と閉殻筋の接着と光輝層　8・2　光輝層に存在する筋タンパク質　8・3　アコヤガイ貝殻におけるパラミオシンの分布　8・4　パラミオシンの炭酸カルシウム結晶形成能　8・5　真珠とパラミオシン　8・6　これからの展望

Ⅵ　持続的な真珠養殖のために
9 章　持続可能な真珠養殖（永井清仁）　9・1　真珠養殖における以上斃死――国内と海外の事例　1）日本における真珠養殖の異常へい死　2）海外の真珠養殖のへい死事例　9・2　温暖化と黒潮蛇行が真珠養殖に及ぼす影響　1）英虞湾の水温上昇と黒潮蛇行からみた環境の変化　2）ヘテロカプサ赤潮　3）赤変病　9・3　真珠養殖の持続に大切なこと　1）真珠養殖のスマート化　２）ゼロエミッション型真珠養殖　3）アコヤガイの遺伝的多様性の保持

10 章　アコヤガイの環境応答―貝殻に記録された環境・生態の履歴―（西田　梢・田中健太郎・佐藤　圭）
10・1　貝殻に記録された環境・生態の履歴　10・2　貝殻微細構造にみられる環境応答　10・3　貝殻の安定同位体比を用いた環境復元　10・4　貝殻の微量元素を用いた環境復元　10・5　まとめと展望―貝殻から環境応答を理解する―

11 章　病気への取り組み：稚貝大量へい死の原因ウイルス（松山知正）
11・1　本病の特徴　11・2　感染性の証明と病原体の推定　11・3 病原体の特定　11・4　Pinctada birnavirus の分類と動態　11・5　対策　11・6 　Pinctada birnavirus の由来と防疫　11・7　本病を利用した研究

12 章　新しい視点によるアコヤガイ大量へい死抑制技術開発の試み（三浦　猛・三浦智恵美・高橋雅治）
12・１　アコヤガイ稚貝大量へい死の特徴　12・2　カイコ由来の免疫賦活化物質　12・3　カイコサナギを用いたアコヤガイ大量へい死抑制技術の開発　12・4　 カイコサナギ機能性物質および病貝抽出物の作用機構解明の試み　1）カイコ機能性画分処理による遺伝子発現変化　2）病貝抽出物処理による遺伝子発現変化　12・5　今後の取り組み

13 章　アコヤガイの養殖現場聞取り調査（北村　徹・村山裕佳・田坂行男）
13・1　 真珠養殖現場への聞取り調査による現状把握と解決すべき課題　1）研究機関との連携について　2）真珠養殖に関する情報の共有について　3）真珠の品質管理について　4）真珠養殖に関する経営管理について　5）海洋環境のモニタリングについて　6）アコヤガイ種苗の系統管理について　7）人材確保について　13・2　管理ポイント集の策定

Ⅴ　真珠貝の有効活用
14 章　アコヤガイ有機成分の有効利用（石崎松一郎）
14・1　アコヤガイ各種組織の機能成分　14・2　アコヤガイ足糸の機能性　14・3　アコヤガイ足糸の微細構造14・4　まとめと今後の展望

15 章　持続可能な開発目標への試み－コンポストを利用したワイン作り（前山　薫・岩崎直明）
15・1　真珠養殖ゼロエミッションへの挑戦　15・2　ワインづくりとその条件　1）ぶどう栽培の土壌づくり　2）コンポストの製造　3）ワイン（果実酒）製造免許の取得　4）ぶどう栽培量の試算　5）今後の課題　15・3　人々の心や生活を豊かにする循環型社会への提案　

16 章　三重県におけるパールコンポスト® の取り組み（渥美貴史・清水砂帆子・中村雄一）
16・1　環境配慮型真珠養殖の実現に向けて　1）貝肉の陸上処理　2）農業，畜産業でのコンポスト化　3）水産業でのコンポスト化　16・2　三重県におけるコンポスト化技術の開発　1）コンポスター　2）コンポスト化資材の充填　3）切り返し　4）コンポスト化実証試験　16・3　パールコンポスト® のPR 活動　1）商標「パールコンポスト」の取得　2）多様な連携　3）3 カ国語のリーフレット作成　4）3 カ国語のパールコンポスト取り組み動画制作　5）宝飾展示会での対面PR　16・4　今後の展望

編：渡部終五
東京大学大学院農学系研究科博士課程修了。農学博士。現在、北里大学海洋生命科学部客員教授。東京大学名誉教授

他著：永井清仁
東京水産大学水産学部卒。農学博士。現在、株式会社ミキモト真珠研究所シニアフェロー。

他著：前山薫
三重大学大学院工学研究科博士課程修了。博士（工学）。現在、御木本製薬株式会社取締役。