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セカンドオフラインの世界

多重化する時間と場所

編:富田英典

紙版

内容紹介

スマートフォンなどのモバイルメディアの爆発的な普及は、それ以前には不可能であったネット世界への随意なオン・オフを可能にした。著者らは、それ以前のネット未接続世界に対して、この現状を「セカンドオフライン」と呼ぶ。我々を、時間・空間の束縛から解き放ったともいえる現状。そこへ放り込まれて20年に満たない我々現代人は、いまだかつて体験したことのない時空の海を、時に巧みに、時に無自覚に揺蕩う。本書は、気鋭の研究者らがグローバルで多面的な視点から、現代人のとらえがたい時間・空間に対する認識変化を浮かび上がらせる。

目次

序文

第1部 モバイルメディアで変容する社会
第1章 セカンドオフラインとDoubling of Time
富田英典
1.映画『TheLakeHouse』:時を越えた恋
2.セカンドオフライン
3.時間と場所の社会学
4.Doubling of place and time
5.自己のリアルタイム・シミュレーション
6.時間を越えた恋の行方:場所を複製するメディア

第2章 モバイル通信技術と生活世界
現象学的観点からセカンドオフライン概念の意味を検証する
ジェームズ・E・カッツ
1.はじめに
2.セカンドオフライン社会について
3.セカンドオフライン社会の歴史的予想
4.『ポスト・モバイル社会』の各章について
5.セカンドオフラインの社会心理学的、公共政策的影響

第3章 融合現実:第2世代のセカンドオフライン
ミカエル・ビョルン
1.はじめに:オフラインとセカンドオフライン
2.セカンドオフラインの基本概念
3.セカンドオフラインの実際
4.第2世代の「セカンドオフライン」
5.融合現実に対する消費者の期待
6.物理的環境に取って代わると期待されるAR(拡張現実)/VR(仮想現実)
7.主観的現実
8.あなたは心をだますことはできますが、体をだますことはできない
9.消費者の想像力の重要性
10.時間の認識を変える
11.おわりに

第4章 地域活性化のためのxRアプリケーション
木暮祐一
1.xRの普及と地域プロモーションへの応用
2.VRを用いたローカルエリアの観光誘客PR事例
3.田んぼをARによって「売り場」に変えた事例
4.MRを使って時空を超えてアート作品を理解する
5.まとめ

第5章 メディアのモバイル化と時間/場所のブリコラージュ
伊藤耕太
1.はじめに
2.モバイル化と情報量の減少
3.モバイル化と時間の断片化
4.モバイル化と文脈の希薄化、そして生産
5.音節数の減少と時間感覚の変化:短歌から俳句へ
6.「いま」という感覚を表現するコンテンツ
7.空間を編集するユーザーたち
8.時間を編集するユーザーたち
9.おわりに

第6章 電子情報が拡張するモノ
多層化する《リアル》
吉田達
1.IT革命からDXへ
2.情報空間とコミュニケーションの「場」
3.スマートフォンの普及とバーチャルの変容
4.実空間のデジタル化
5.VRとARの2020年代
6.電子空間にある「現実」
7.2020年代の「仮想」と「現実」

第7章 ポスト・パンデミックの観光におけるモバイルメディアの可能性
参加型デザインからの考察
岡田朋之
1.モバイルメディアをめぐる問題の所在
2.参加型デザインという方法
3.ワークショップ実践
4.フィールドリサーチを導入した実践
5.ポスト・パンデミックの観光とモバイルメディア
6.成果のまとめと課題

第8章 コロナ禍以降のワークプレイス・ワークスタイルにおける
モバイルメディアがもたらす変容
ステーション・ブースが可視化したセカンドオフライン的ワークスタイル
松下慶太
1.「さすらい」と場所の関係
2.テレワークからハイブリッド・ワークへ
3.WFHからWFXへ
4.モバイルメディアが生成するワークプレイス
5.Non Official Workplace
6.おわりに

第2部 文化的環境としてのモバイルメディア
第9章 アムビエントな遊び:モバイル・ゲームの日常
ラリッサ・ヒョース/イングリッド・リチャードソン
1.はじめに
2.アムビエントな遊び
3.公共空間でゲームする:私的空間の移動化
4.地域情報モバイル・ゲーム:都市空間の遊び場への転換
5.ポケモンGO
6.むすびに

第10章 「パラサイト」の割り込み/降臨による「今」の再創造
「モバイルメディア独我」と再魔術化された「可能世界群」
藤本憲一
1.「テリトリー・マシン」、弁証法論理、「再魔術化」
2.「モバイルメディア独我」と、増殖する匿名のペルソナたち
3.「ヌガラ」概念のオンラインへの拡張
4.「新しさ」信奉と、時間論の「三叉路モデル」へ
5.「パラサイト」の割り込みと、「今」の再創造
6.時間意識の5類型と、超越論的跛行時間と
7.一瞬ごとに降臨(再創造)する神々としての「今」
8.「ながら」の5つの意味

第11章 「遠征」をめぐる人間関係
Twitter上で親しくなる過程と社会的場面の切り分けを中心に
松田美佐
1.はじめに
2.先行研究と本章の課題
3.いかに見ず知らずの相手と親しくなるのか
4.考察
5.おわりに

第12章 ICT教育と新メディアリテラシー
上松恵理子
1.はじめに
2.新メディアリテラシー教育の背景
3.メディアリテラシーの概念
4.教師向けのメディアおよび情報リテラシー(MIL)カリキュラム
5.日本の教育と新メディア
6.ニュージーランド
7.英国
8.フィンランド
9.オーストラリア
10.おわりに

第13章 自撮り写真の身体様式
メディア実践のかくれた次元
金暻和
1.はじめに
2.歴史的事例から
3.モバイル写真の身体様式
4.結びに

第14章 網紅都市(映えるまち)
ショートビデオと都市イメージ
劉雪雁
1.はじめに
2.中国におけるショートビデオアプリの発展
3.イメージづくりに参加する観光客とショートビデオ
4.ショートビデオによって生まれた「網紅都市」
5.ショートビデオと都市イメージ

第3部 ソーシャルメディアとモバイル社会
第15章 セカンドオフラインの空間的実践
ジェイソン・ファーマン
1.はじめに
2.バーチャルとリアルの違い
3.セカンドオフラインでの空間的な重ね合わせ
4.モバイルマップとセカンドオフライン
5.ロケーティブ芸術と製図実践
6.結論

第16章 関係性をもち運ぶ
都市・社会的ネットワーク・モバイルメディア
天笠邦一
1.はじめに
2.概念的枠組み
3.調査概要
4.調査結果
5.考察
6.おわりに

第17章 青年層のソーシャルメディア利用とトランスローカリティ
羽渕一代
1.はじめに
2.青森県むつ市とおいらせ町
3.調査概要
4.地元定着層と流入層
5.ソーシャルメディアの利用
6.ソーシャルメディアの種別と幸福感
7.おわりに

第18章 モバイルソーシャルメディア環境でニュースメディアと政治参加の「好循環」は成立するか
2015~2016年米国ニュースメディア環境の定量的分析
小笠原盛浩
1.モバイルソーシャルメディア環境のニュースメディアと政治
2.先行研究とリサーチクエスチョン
3.分析データと主な変数
4.分析結果
5.考察

著者略歴

編:富田英典
関西大学社会部教授

ISBN:9784769916789
出版社:恒星社厚生閣
判型:A5
ページ数:398ページ
定価:2900円(本体)
発行年月日:2022年03月
発売日:2022年04月13日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:UB