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カール・クラウスと危機のオーストリア

世紀末・世界大戦・ファシズム

著:高橋 義彦

紙版

内容紹介

▼オーストリア/ハプスブルク帝国の危機~ナチスの脅威に向き合い、それを乗り越えようとした孤高の言論人、カール・クラウス(1874-1936)の思想と行動を読み解くとともに、「世紀末」「第一次世界大戦」「ファシズム」という三つの時代における、オーストリア/ウィーンの政治思想・文化的状況を浮き彫りにする。
 
▼第一次大戦時には好戦的なメディアや政治家を、自らの個人評論雑誌『ファッケル』で厳しく批判したクラウス。彼は、戦争やナショナリズムにおいてメディアの果たす役割、戦争の背後にある経済的利害、総力戦であった第一次大戦の従来の戦争との質的差異を、鋭く指摘した。

▼一方で、解体した帝国からオーストリア共和国に再編成されたのち、彼はナチスから独立を守る擁護者としてのオーストリア・ファシズム=ドルフス政権への支持を表明する。彼の真意はどこにあったのか? これまで一見、政治的な解釈が難しいとされてきた彼に、本書はオーストリアの真の独立、「オーストリア理念」を追求する姿勢を見いだす。

▼建築家アドルフ・ロース、精神分析家フロイトや保守思想家ラマシュとの関係なども描かれ、オーストリアの世紀末から第二次大戦前夜までの文化的・思想的状況をも浮き彫りにする、注目の一冊。

目次

<b>序 章 オーストリア思想史とクラウス</b>
   一 カール・クラウスとその時代
   二 二つの文化対立とクラウス思想の一貫性
   三 本書の構成

<b>第1章 世紀転換期ウィーンにおける「装飾」批判とその意味</b>
―― カール・クラウスとアドルフ・ロース
   一 はじめに ―― 唯美主義への批判者たち
   二 アドルフ・ロースの「装飾」批判
   三 カール・クラウスの「装飾」批判
   四 おわりに ―― クラウスとロースを隔てるもの

<b>第2章 フリッツ・ヴィッテルスと「二人の精神的父親」</b>
―― カール・クラウスとジークムント・フロイト
   一 はじめに ―― セクシュアリティをめぐる共闘者
   二 クラウス=フロイト=ヴィッテルス ―― 三者関係の変化
   三 おわりに ―― 三者関係の「その後」

<b>第3章 メディア批判とテクノロマン主義批判</b>
―― カール・クラウスと第一次世界大戦
   一 はじめに ―― 反戦知識人クラウス
   二 二人のクラウス?
   三 カール・クラウスの第一次世界大戦批判
   四 おわりに ―― 近代の「野蛮さ」としての世界大戦

<b>第4章 「オーストリア的中欧」理念と第一次世界大戦</b>
―― カール・クラウスとハインリヒ・ラマシュ
   一 はじめに ―― 保守派の戦争批判
   二 カール・クラウスとハインリヒ・ラマシュ
   三 クラウスのラマシュ論
   四 ハインリヒ・ラマシュとオーストリア保守反戦思想
   五 おわりに ―― パトリオティズムと「オーストリア的中欧」

<b>第5章 ナチズムとオーストロ・ファシズム</b>
―― カール・クラウスと二つのファシズム
   一 はじめに ―― ドルフス支持表明の衝撃
   二 カール・クラウスのナチズム批判
   三 カール・クラウスとオーストロ・ファシズム
   四 おわりに ―― 早過ぎた死

<b>第6章  言語批判としてのクラウス政治思想</b>
―― エリック・フェーゲリンのカール・クラウス論
   一 はじめに ―― 「イデオロギー言語批判」とリアリティの復活
   二 フェーゲリンによるクラウス論
   三 おわりに ―― フェーゲリンによるクラウス論の妥当性
  
<b>終 章 限界と可能性</b> ―― カール・クラウスの現代的意義

あとがき
カール・クラウスとその時代:年表
主要参考文献一覧
索 引
初出一覧・図版出典一覧

著者略歴

著:高橋 義彦
高橋 義彦
1983年北海道生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科政治学専攻後期博士課程修了。博士(法学)。慶應義塾大学・専修大学・國學院大学栃木短期大学非常勤講師。
主要著作:「エリック・フェーゲリンのウィーン ―― オーストリア第一共和国とデモクラシーの危機」(『政治思想研究』第12号、2012年)、共訳書にリチャード・タック『戦争と平和の権利 ―― 政治思想と国際秩序:グロティウスからカントまで』(風行社、2015年)、ほか。

ISBN:9784766423310
出版社:慶應義塾大学出版会
判型:4-6
ページ数:288ページ
定価:3600円(本体)
発行年月日:2016年04月
発売日:2016年04月25日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JP