日中戦争の国際共同研究 1
中国の地域政権と日本の統治
編:姫田光義
編:山田辰雄
内容紹介
日中戦争に関する国際共同研究(責任者:山田辰雄(慶應義塾大学名誉教授)、エズラ・ヴォーゲル(ハーヴァード大学教授)、楊天石(中国社会科学院研究員))の成果。政治的・感情的要素を排除して、日米中台の研究者が新たな視点から日中戦争史を捉えなおすシリーズ。
目次
「日中戦争の国際共同研究」刊行にあたって 山田辰雄
総 論 日中戦争期、中国の地域政権と日本の統治 姫田光義
はじめに 本巻の目的
1 日中戦争下のリージョナル・レジーム——対立・協力そして権力の相互浸透の政治状況
2 本書の構成について
おわりに
第1部 中国の抗日体制化における地域政権
第1章 日中戦争時期における蒋介石の省区縮小運動 味岡徹
はじめに
1 国民党政権成立初期の省区縮小運動
2 日中戦争と省区縮小運動の再開
3 省区縮小運動の展開と停滞
4 戦後の省区縮小運動
おわりに
第2章 遠隔操縦——蒋介石の「手令(直接指令)」研究 張瑞徳(鬼頭今日子訳)
はじめに
1 直接指令の範囲
2 直接指令の弊害
3 直接指令と統帥部
4 時代の産物としての直接指令
5 直接指令の執行状況
6 直接指令の効用とその失効
おわりに
第3章 戦争の地域へのインパクト——広西、1937年〜1945年 ダイアナ・ラリー(益尾知佐子訳)
はじめに
1 広西
2 軍事的貢献
3 民間人の動員
4 日本の第一次侵攻
5 避難民の流入
6 近代化
7 犠牲者
8 日本軍の第二次侵攻
9 政治的な抗争の終焉
10 指導力の欠如
おわりに——戦争の記憶
第4章 晋冀魯豫抗日根拠地における商業交易(1937—1945) 魏宏運(上田貴子訳)
はじめに
1 市場の混乱から統一へ
2 経済途絶と交易
3 物価変動と比率の高低
おわりに——交易勝利の鍵「知彼知己」
第2部 日本統治下の地域政権における協力と抵抗
第5章 満州国社会への日本統治力の浸透 塚瀬進
はじめに
1 地方での行政力の浸透
2 農業政策の浸透
3 商業統制策の浸透
4 徴税機構の整備
おわりに
第6章 「満州国」の政権体制と基層社会組織 解学詩(小都晶子訳)
はじめに
1 「満州国」政権の二重構造
2 「満州国政府」と表裏一体化した協和会
3 保甲制度から「国民組織化」へ
おわりに
第7章 日本軍の内モンゴル占領と「蒙古聯合自治政府」の本質 盧明輝(田中剛訳)
はじめに
1 日本の「満蒙政策」—— 侵略計画の推進
2 内モンゴル西部地域への日本の侵略
3 関東軍による「察南」「晋北」「蒙古」傀儡政権樹立援助
4 「察南」「晋北」「蒙古」三政権の統合と「蒙古聯合自治政府」の本質
第8章 変調する「雨夜花」——戦時台湾の幾つかの側面の観察 邵銘煌(福士由紀訳)
はじめに
1 「天皇の赤子」を育成し「皇国臣民」を練成する
2 皇軍のために犬馬の労をとる
3 祖国の情、台湾の心——大陸における台湾人の奮闘
おわりに
第3部 日中双方の勢力競合・相互浸透地域における日本の統治施策
第9章 河南省における食糧欠乏と日本の穀物徴発活動 オドリック・ウー(吉田豊子訳)
はじめに
1 戦時下における食糧生産の減退と経済の苦境
2 都市と農村の徴発機構
3 食糧徴発の戦略
おわりに
第10章 揚子江流域における占領国家の建設、1938—39年 ティモシー・ブルック(西野可奈訳)
はじめに
1 「宣撫」
2 「自治」
3 政治動員
おわりに——中国史としての占領国家
第11章 文化政策と占領地支配——中支建設資料整備委員会を中心に 金丸裕一
はじめに
1 「損失」と「略奪」
2 文化財の接収・整理作業——1937年12月〜1938年8月
3 文化財「活用」の諸相——1938年9月〜1942年3月
おわりに——文化財返還と汪清衛政権
第12章 興亜院とその中国調査 久保亨
はじめに
1 興亜院の成立
2 興亜院による中国占領地行政
3 中国調査の機構と課題
4 興亜技術委員会の組織と活動
5 調査内容の特徴
おわりに
第4部 戦時下の特殊な地域・上海
第13章 戦時上海における「租界問題」——日本軍上海租界進駐の背景 髙綱博文
はじめに
1 植田捷雄の「上海租界問題」論
2 興亜院華中連絡部の「上海租界問題」調査報告
3 「上海租界問題」への日本側の対応
4 上海共同租界進駐
おわりに
第14章 占領下の上海における中国医師界 フレデリック・E・ウェイクマン,Jr.(杉本公子訳)
はじめに——中国における中国医学会と西洋医学会の闘争
1 上海における中国医学と西洋医学の共存
2 伝統的中国医学に対する戦争の影響
3 “暗黒時代”下の買い占めと漢奸
4 監視
5 無秩序
6 危機的な政治状況
7 逮捕
8 占領終焉の到来
おわりに——良心の呵責
あとがき