出版社を探す

語りから学ぶ法社会学

声の現場に立ち会う

著:西田 英一

紙版

内容紹介

東日本大震災での大川小学校津波訴訟,職場喫煙問題,女性と育児と仕事をめぐる問題,リンチ殺人事件の被害者遺族と加害者の関係など,民事紛争および刑事事件の当事者の語りをできるだけ加工せずナマのまま提示。そこから人と人/人と組織/人と法の関わりの接面で何が起こっているのかをリアルに考える法社会学の実践教材。

■主な目次
●第1部 命を守る声とからだ:大川小学校津波訴訟
第1章 会見場での母親の声
第2章 無音の声:ほら,カラダが語っている
第3章 子どもたちを呼び戻す弁護士の声
●第2部 共同体のなかの語り:喫煙をめぐる職場秩序
第4章 共同体に生きる声
第5章 権利の声と対話の遮断
第6章 脱人格化のvoice戦略
第7章 共同体の急所〈恥〉を衝く声
●第3部 理不尽に対処する声:女性と仕事
第8章 権利があっても,使えない
第9章 慣用句としての声
第10章 問題解決の”話法”:〈いま・ここ〉のあなたと私
第11章 何気ない一言の衝撃:男性の育休取得
●第4部 犯罪被害者遺族の語り:被害者との関わりという課題
第12章 死刑を求める声,迷う身体
第13章 圧倒的孤独から対面の癒しへ
●第5部 まとめ:語りに向かう声とからだ
終 章 出会い方のマネジメント

目次

はしがき

第Ⅰ部 命を守る声とからだ――大川小学校津波訴訟
 第1章 会見場での母親の声
  1 語りと注目voice 「学校という組織の中に,黒い魔物は,いてはならん!」
  2 問い
  3 経緯・背景
  4 一つの解釈
  5 法社会学的考察の糸口

 第2章 無音の声――ほら,カラダが語ってる
  1 注目voice 「……」(無言。「シー」のしぐさ)
  2 問い 問題解決プロセスのなかで,からだはどんな働きをするのか
  3 語りを聞く
  4 一つの解釈 解決基盤としての「了解」,それを生む身体的関わり
  5 法社会学的考察の糸口

 第3章 子どもたちを呼び戻す弁護士の声――証人尋問
  1 注目voice 「あなたの体重と身長は?」
  2 問い 体格を問う質問の意味と効果は?
  3 一つの解釈 〈証明〉ではなく光景〈再現〉へ
  4 法社会学的考察の糸口

第Ⅱ部 共同体のなかの語り――喫煙をめぐる職場秩序
 第4章 共同体に生きる声
  1 語りを聞く
  2 注目voiceとその含意 「卑怯かもしれませんが……」
  3 問い 
  4 法社会学的考察の糸口

 第5章 権利の声と対話の遮断
  1 語りを聞く
  2 問い なぜ職場で権利的主張が抑制されるのか?
  3 注目voice 「何だ,こいつは。人にものを頼む態度じゃない。」
  4 一つの解釈 

 第6章 脱人格化のvoice戦略
  1 問い 喫煙場所の屋外化が,粛々と進んでいったのはなぜか
  2 語りを聞く
  3 一つの解釈(その1)
  4 注目voice
  5 一つの解釈(その2)
  6 法社会学的考察の糸口
  7 余談:インタビューの経験

 第7章 共同体の急所〈恥〉を衝く声
  1 語りを聞く(その1)
  2 注目voice 「もし社員が異常分娩にでもなったら,会社の恥ですよ。」
  3 問い 何が,全社的方針決定をもたらしたのか?
  4 語りを聞く(その2)
  5 一つの解釈
  6 法社会学的考察の糸口


第Ⅲ部 理不尽に対処する声――女性と仕事
 第8章 権利があっても,使えない
  1 語りを聞く
  2 注目voice 「母乳を止める薬を出してください。」
  3 後日談:保育園ができた!
  4 法社会学的考察の糸口
  5 余談:一つのインタビューを二つに分けることの是非

 第9章 慣用句としての声
  1 注目voice 「今回の降格人事の撤回を要求する!」
  2 問い 撤回要求はなぜ無視されたのか?
  3 語りを聞く
  4 一つの解釈

 第10章 問題解決の“話法”――〈いま・ここ〉のあなたと私
  1 問い 権利主張ではない自己主張
  2 語りを聞く
  3 注目voiceと問い 「そんなものを提出するまでもなく,うちの子は普通です!」
  4 一つの解釈 “経験” 話法
  5 法社会学的考察の糸口

 第11章 何気ない一言の衝撃――男性の育休取得
  1 語りを聞く
  2 注目voice 「ゆっくり休めてるか?」
  3 問い 10年後20年後,男性の育休取得は普通のことになっているか?
  4 一つの解釈
  5 法社会学的考察の糸口

第Ⅳ部 犯罪被害者遺族の語り――加害者との関わりという課題
 第12章 死刑を求める声,迷う身体
  1 出来事の概要 「長良川事件」
  2 注目voice 「引き出しが二つあるわけよ」
  3 問い “二つの引き出し”とは何か?
  4 語りを聞く
  5 一つの解釈
  6 法社会学的考察の糸口 “被害者・加害者” 関係

 第13章 圧倒的孤独から対面の癒しへ
  1 出来事の概要 「半田保険金殺人事件」
  2 注目voice 「加害者が死んだところで,癒しになるのか」
  3 問い なぜ,「死刑」ではなく「面会」を求めるようになったのか?
  4 経緯と背景
  5 一つの解釈
  6 法社会学的考察の糸口
  7 補足

第Ⅴ部 まとめ――語りに向かう声とからだ
 終章 出会い方のマネジメント
  1 章を横断して考える
  2 対話ニーズ
  3 対面 了解を生む身体配列
  4 受領 いったんの受け止め
  5 共約不能
  6 手がかりの不在
  7 出会い方のマネジメント

人名・事項索引

著者略歴

著:西田 英一
西田 英一(にしだ・ひでかず)

1958年 福井県に生まれる
1982年 京都大学法学部卒業
1985年 京都大学大学院法学研究科博士課程中途退学
現 在 甲南大学法学部教授

[主要業績]
『声の法社会学』(単著)北大路書房,2019年
『振舞いとしての法――知と臨床の法社会学』(山本顯治との共編)法律文化社,2016年

ISBN:9784762831713
出版社:北大路書房
判型:A5
ページ数:208ページ
定価:2500円(本体)
発行年月日:2021年10月
発売日:2021年10月20日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:LA