まえがき
序 章 ケアリングコミュニティ研究の意義と方法
第1節 問題の所在
(1) 地域福祉の哲学・思想的研究(地域福祉のメタ理論研究)の必要性
(2) ケアリングコミュニティ概念を問うということ
第2節 ケアリングコミュニティ研究の意義と課題
(1) ケアリングコミュニティを哲学的に探究する意義
(2) ケアリングコミュニティ研究の学際性
(3) ケアリングコミュニティ研究が対象とすべき研究領域
第3節 本研究の概要 各章の構成
第1章 ケアリング概念の検討
第1節 ケアとケアリングの違い
(1) 石川道夫のケア及びケアリング概念の考察
(2) 上野千鶴子の「ケアリング」概念批判
(3) ケア概念とケアリング概念の相違について
第2節 ケアリング概念の変遷―ケア概念の淵源からケアの倫理の問題提起,現象学的ケアリング概念まで―
(1) ケア概念の淵源
(2) ケアの倫理の問題提起
(3) ノディングスのケアリング論
(4) ベナーの現象学的ケアリング理論
第3節 ケアリング概念の論点
(1) 西村ユミによるベナーのケアリング理論への批判
(2) ケアリング概念における他者概念の特徴―共感可能な他者―
(3) 「共感可能な他者」概念の限界と「絶対的他者」概念
(4) ケアリング概念における「共感可能な他者」概念と「絶対的他者」概念の関係
(5) 「絶対的他者」概念のケアリング概念への適用可能性
(6) ケアリング概念の持つ「女性性」の脱構築
第4節 ケアリング概念の可能性と限界
(1) ケアリング概念の「存在論的次元」と「倫理的次元」
(2) 「存在論的次元」におけるケアリング概念の意義
(3) 「倫理的次元」におけるケアリング概念の意義
(4) ケアリング概念の限界
(5) ケアリング概念の到達点
第2章 ケアリングコミュニティ概念の先行研究におけるその到達点及び課題
第1節 ケアリングコミュニティ概念の現在
(1) 教育学分野における「ケアリングコミュニティ」概念の使用
(2) 福祉分野における「ケアリングコミュニティ」概念の使用
(3) 大橋謙策の「ケアリングコミュニティ」概念の提起
(4) 大橋以後のケアリングコミュニティ研究の現状
第2節 大橋謙策のケアリングコミュニティ概念
(1) 大橋の「ケア」「ケアリング」概念
(2) 日本の社会福祉におけるケア観の批判
(3) 大橋の「自立」観と「ケア」「ケアリング」概念との関係についての考察
(4) 大橋の「ケア」「ケアリング」概念としての「6つの自立」概念の検討
(5) 大橋のケアリング概念としての「6つの自立」概念の全体的構造
(6) 「意識的にケアリングする」人々による新しい助け合いのコミュニティとしての
ケアリングコミュニティ概念
(7) 大橋のケアリングコミュニティ概念における「コミュニティ」の具体的・実在的構造
第3節 広井良典のケアリングコミュニティ概念の考察
(1) 広井良典のケア概念―「ケアの外部化(疎外)」とそれを取り戻すための「ケア」―
(2) 「内」に向かうケアと「外」に向かうケア
(3) 広井の「コミュニティ」概念の中核概念―重層社会における中間集団―
(4) 広井良典の「ケアリングコミュニティ」概念の特質及び意義
(5) 広井のケアリングコミュニティ概念の限界の認識と,その乗り越え
(6) 広井のケアリングコミュニティ概念のまとめ―その意義と限界―
第4節 小林正弥のケアリングコミュニタリアニズム概念の検討
(1) 小林正弥のコミュニタリアニズムの思想的位置
(2) 小林正弥の「ケアの倫理」理解とコミュニタリアニズムとの接合
(3) ケアの倫理―コミュニタリアニズム―正義の倫理の編み合わせ
(4) 小林正弥のケアリングコミュニタリアニズムの検討のまとめ
第5節 ケアリングコミュニティ概念の先行研究からみる概念の到達点と課題
第3章 ケアリングコミュニティ概念の分析枠組みの検討
第1節 ケアリングコミュニティの分析枠組み
第2節 ケアリングの遺伝的形質の意義と限界―進化生物学,進化人類学の知見から―
第3節 ケアリングコミュニティにおける経済的合理性と「ケアの価値」の関係性
第4節 ケアリングコミュニティにおける科学的合理性と「ケアの価値」との関係
第5節 ケアリングコミュニティ概念におけるスピリチュアリティの位置づけ
第6節 討議倫理
(1) 討議倫理とは何か
(2) ハーバーマスの社会理論の全体像と討議倫理の位置づけ
(3) ハーバーマスの討議倫理の課題と限界
(4) ケアリングコミュニティ概念における討議倫理の意義
第4章 ケアリングコミュニティ概念の提示とその実在的構造の検討
第1節 現代社会におけるケアリングコミュニティが必要な背景
第2節 ケアリングコミュニティの概念構造
(1) ケアリングコミュニティの8つの分析枠組みの布置
(2) 世界1 自然としての身体性とスピリチュアリティ及び人間の利他的・利己的形質
(3) 世界2 人間の主体的な価値選択の領域
(4) 世界3 ケアリングコミュニティにおける各要素間の相補的連関構造
(5) 世界4 「意味」の源泉としてのスピリチュアリティ
(6) ケアリングコミュニティ概念の8つの分析枠組みの布置についてのまとめ
(7) ケアリングコミュニティ概念の定義
第3節 ケアリングコミュニティの実在的構造と8つの分析枠組みの構造連関
(1) ケアリングコミュニティの機能とその担い手
(2) ケアリングコミュニティの実在的な内的構造連関
第4節 ケアリングコミュニティ概念の地域福祉理論及び実践への適用可能性
(1) 地域福祉の哲学的基盤としてのケアリングコミュニティ概念
(2) 「地域包括ケアシステム」及び「地域共生社会」政策におけるケアリングコミュニティ概念の示唆
(3) コミュニティソーシャルワーク実践におけるケアリングコミュニティ概念の適用
終 章 ケアリングコミュニティ概念の意義と課題
第1節 研究結果の意義と独自性
(1) 地域福祉理論・実践の「メタ理論=目的概念」としてのケアリングコミュニティ
(2) 「ケア」「ケアリング」の哲学,「コミュニタリアニズム」「討議倫理」を
地域福祉・社会福祉理論に導入した意義
(3) 福祉が対象にする「人間」を「存在論的現象学的」に位置づけた意義
(4) 「機能」のみではなく,「意味」や「価値」を生成する場としてコミュニティを捉えた意義
(5) 「システム」や「科学的合理性」「経済的合理性」を内に含みながら,
それらに還元されない「生活世界」としてケアリングコミュニティを捉える意義
(6) ケアリングコミュニティにおけるケアリングのプロセス自体を主体形成のプロセスと捉えた意義
(7) 8つのケアリングコミュニティの分析枠組みの内的構造連関を示した意義
(8) 上記を総合して,包括的な地域福祉実践の哲学を検討した意義
第2節 本研究の限界と今後の課題
(1) より精緻で具体的な哲学・倫理的枠組みを検討する必要性
(2) ケアリングコミュニティ概念を補完する実証的研究の必要性
(3) ケアリングコミュニティ概念を具現化する,具体的実践方法の検討
補 論 ケアリングコミュニティ概念の哲学的・思想的価値について
―近年の福祉の哲学的研究の動向を踏まえて―
第1節 補論の目的
第2節 補論で検討対象とする論者,及びその論考の概要
第3節 中村剛の福祉哲学
(1) 中村剛の福祉哲学の特徴と課題
(2) 中村剛の福祉哲学の内容と構成
(3) 中村の「福祉哲学」と筆者の「ケアリングコミュニティ」概念の類似点と相違点
(4) まとめ
第4節 岩崎晋也の『福祉原理』
(1) 岩崎晋也の『福祉原理』の概略
(2) 岩崎の『福祉原理』の理論的特徴と課題―ケアリングコミュニティ理論との比較を通して―
(3) 岩崎の『福祉原理』と,筆者のケアリングコミュニティ理論の類似点と相違点
第5節 山本馨の『地域福祉実践の社会理論』
(1) 山本の『地域福祉実践の社会理論』の内容と特徴
(2) 山本の3つの社会理論の思想的前提
(3) 山本の地域福祉実践の社会理論の意義と限界
(4) 山本馨の『地域福祉実践の社会理論』と筆者のケアリングコミュニティ理論の比較の総括的考察
第6節 福祉のメタ理論としての4者の理論の今後の可能性―共通点,相違点の比較を踏まえて―
(1) 4者の類似点の整理
(2) 4者の相違点の整理と,そこから得られる知見
(3) 各論者の福祉のメタ理論における哲学的・思想的価値
(4) 総括的考察
引用・参考文献一覧
索 引