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「省察」を問い直す

教員養成の理論と実践の検討

編:山﨑 準二
編:高野 和子
編:浜田 博文

紙版

内容紹介

現在、教師の専門性の中核を成す理念として受け入れられ、教師教育に関する研究、
養成教育や現職研修等の教師教育に関する実践などに広範に組み込まれている「省察(reflection)」。

「省察」に関わる現状をさまざまな視点からラディカル(根源的・徹底的)かつクリティカル
(批判的=「権威性」「前提的枠組み」までも問い質す)に省察する必要があるのではないか。

大学における教員養成の「省察」言説を相対化し、不可視化された問題状況を明らかにする。
今一度、「『省察』を問い直す」。

第?部では、日本の教師教育領域における「省察」の受容と展開・普及の実態に
関する理論的・制度的・研究的動向とその特徴について分析。

第?部では、「省察(reflection)」概念が教師教育に携わる大学教員にどのように受けとめられ、
いかなる形で実践化されており、その中でどのような困難や葛藤が生まれているか、
大学教員の事例をもとに見いだす。
また、学ぶ側の教職大学院生の「省察」概念の捉え方にはどのような特徴があるか、
「省察」の経験がどのように語られるのか、
教職大学院生を対象に実施した質問紙調査の結果から論考を行う。

第?部では、「省察」をめぐる海外(欧米,特に米国とイングランド)
での動向について検討することによって、日本の省察をめぐる展開過程を相対化し、
本書の主題である「『省察』を問い直す」に迫る。


【執筆者】
*山?準二 学習院大学文学部教授
 三品陽平 愛知県立芸術大学准教授
 長谷川哲也 岐阜大学教育学部准教授
 村井大介 静岡大学教育学部准教授
*浜田博文 筑波大学人間系教授
 ?谷哲也 鹿児島大学教育学部准教授
 山内絵美理 東海大学ティーチングクオリフィケーションセンター助教
 田中里佳 三重大学教育学部教授
 菊地原 守 名古屋大学大学院博士後期課程
*高野和子 明治大学文学部教授
 朝倉雅史 筑波大学人間系助教
 ?野貴大 茨城大学大学院教育学研究科助教
 栗原 崚 学習院大学文学部助教
(執筆順,*印編者,所属は執筆時)

目次

 はじめに

第Ⅰ部 「省察」をめぐる理論的・制度的・研究的動向とその特徴
 序

 第1章 D.ショーンの省察的実践者論と日本の教師教育研究におけるその導入
  はじめに
  第1節 省察的実践パラダイムの提起
  第2節 省察的実践の機能と特徴
  第3節 省察的実践における省察の特徴
  第4節 日本の教師教育研究における省察的実践者論の導入
  おわりに

 第2章 日本の教員養成研究における省察概念隆盛の展開とその諸要因
  はじめに
  第1節 研究対象・方法
  第2節 省察概念の展開
  第3節 省察概念隆盛の諸要因
  第4節 省察概念隆盛に伏在する諸問題
  おわりに

 第3章 大学・大学院の教員養成における「省察」の制度的受容
  第1節 課題の設定
  第2節 教員養成政策における「省察」議論の変遷
  第3節 各文書等で用いられる「省察」の特徴
  第4節 教職大学院の認証評価における基準としての「省察」
  第5節 教員養成が「省察」を制度的に受容した背景

 第4章 教科教育の研究領域における「省察」の受容・展開とその課題
  第1節 教科教育の研究領域に着目する意義と調査方法
  第2節 教科教育の研究領域における「省察」の展開
  第3節 各教科での「省察」言説の受容と展開の特徴
  第4節 教科間の比較を通した「省察」の受容・展開の特徴
  第5節 教科研究領域における「省察」の受容・展開の課題

第Ⅱ部 教師教育実践における「省察」概念に関する事例研究
 序

 第5章 教師教育に携わる大学教員の「省察」概念の再構築
  はじめに
  第1節 「省察」概念との出会い
  第2節 自己の研究や経験を軸にして意味づけられる「省察」という概念
  第3節 制度化された省察がもたらすもの
  第4節 困難や葛藤を通じた「省察」概念の再構築の可能性
  第5節 「省察」概念の受容と実践化をめぐる葛藤

 第6章 教師教育に携わる大学教員の省察をめぐる問い直しと新たな視点
   ―大学教員の語りを起点とした提起―
  第1節 本章の目的
  第2節 事例1 E教員
  第3節 事例2 G教員
  第4節 省察をめぐる実践を通じての問い直しと今後の検討課題

 第7章 教師教育に携わる大学教員が向き合う「省察」言説の特徴と展望
  第1節 本章の目的
  第2節 大学教員が向き合うことになっている「省察」言説の特徴
  第3節 各大学教員の実践において重視されていることやこだわり
  第4節 各大学教員の実践にみられる特徴から見いだされる研究課題
  第5節 今後の教師教育研究の発展に向けての展望

 第8章 教職大学院生の省察
   ―国立教職大学院を対象とした質問紙調査から―
  第1節 問題の所在
  第2節 調査の概要
  第3節 「省察」「リフレクション」の認識
  第4節 「省察」「リフレクション」の経験
  第5節 まとめ

第Ⅲ部 教師教育における「省察」をめぐる海外での展開動向―米・英を中心に―
 序

 第9章 NPM型改革下の教師教育スタンダード政策における省察概念
  第1節 問題の所在―省察概念の隆盛と展開過程に内在する矛盾
  第2節 本章の分析視点―日本と英米圏における批判的検討の対比
  第3節 NPM型改革と教員政策・スタンダードにおける省察概念の位置
  第4節 教職スタンダードにおける省察概念の描かれ方
  第5節 まとめ―省察概念の展開と道具化による自己統制の強化

 第10章 米国の教師教育における「省察」言説と「社会正義」志向
  はじめに
  第1節 1980~90年代における教師教育改革の推移と「省察」
  第2節 アカウンタビリティ重視の今日的改革と「省察」
  第3節 文脈を重視した社会正義志向の「省察」~センターXの事例~
  むすびにかえて

 第11章 イングランドの教師教育における「省察」言説
   ―「省察」の広がりを問い直す―
  はじめに
  第1節 大学教員養成担当者による「省察的実践家」「省察的教師」の提起
  第2節 イングランドにおける教師教育改革の推移と「省察」
  第3節 実践の場における省察についての解釈とその背景
    ―中等学校訪問調査からの一つの現実として―
  第4節 イングランドにおける「批判的省察」とは
    ―ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン教育学研究院 大学教員へのインタビューを事例に―
  おわりに

おわりに
索  引

著者略歴

編:山﨑 準二
(やまざき じゅんじ)学習院大学文学部教育学科教授/元静岡大学教育学部教授/元東京学芸大学教員養成カリキュラム開発研究センター教授/元東洋大学文学部教育学科教授。

編:高野 和子
(たかの かずこ)明治大学文学部(教職課程)教授。

編:浜田 博文
(はまだ ひろふみ)筑波大学大学院人間総合科学研究科(教育)教授。

ISBN:9784762033223
出版社:学文社 (GAKUBUNSHA)
判型:A5
ページ数:264ページ
定価:2800円(本体)
発行年月日:2024年03月
発売日:2024年03月13日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JND