ダイバーシティ時代の教育の原理-第二版
多様性と新たなるつながりの地平へ
編:藤田 由美子
編:谷田川 ルミ
内容紹介
現代の多様化した教育問題を考えるにあたり必要不可欠である、
「ジェンダー」や「ダイバーシティ」(多様性)の視点から編まれた、
いわゆる「教育原理」の学びを深めるテキスト。最新の教育状況を盛り込んだ第二版。
第1部(第1章から第5章)では、教育の思想および歴史について扱う。
前半2章では、教育とは何かについて考え、教育思想の成り立ちについて理解を深める。
後半3章では、ジェンダーや多様性の視点を取り入れた西洋と日本の教育の歴史について理解を深める。
第2部(第6章から第9章)では、教育の理念について扱う。教育課程とカリキュラム・マネジメント、
子どもの権利、教育の公共性、および教育の機会均等の理念および課題について、
ジェンダーおよび多様性の視点を織り交ぜつつ、考察を深めていただきたい。
そして、第3部(第10章から第13章)では、現代日本の学校教育が抱える諸課題を扱う。
現在も可視化されにくく社会的支援の網の目からこぼれやすいと考えられる、貧困家庭の子ども、
社会的養育によって育つ子ども、外国につながる子ども、性的マイノリティの子どもが直面する困難について
理解を深めるとともに、教育的支援の可能性について考える。
コラムでは、初版からの「特別支援教育」「児童虐待」「性教育」「地域社会」のトピックスに加え,
「子ども」「フリースクール」「夜間中学」「学校教育におけるDX」というテーマを新たに追加した。
【執筆者】
奥野佐矢子、本多みどり、田渕久美子、高橋英児、*藤田由美子、*谷田川ルミ、二井仁美、
角替弘規、岩本健良(*は編者)
目次
はじめに
第1部 教育の思想および歴史
第1章 教育とは何か
はじめに 「教育とは何か」を問い直す
第1節 教育という営みは,どうとらえられてきたか
1.教育の語義から,何が見えるか / 2.教育対象としての「人間」とはどう描かれてきたか
/ 3.いま求められる人間観の問い直し
第2節 教育はどこに向かうべきか
1.教育の価値指向性 / 2.社会に規定される教育の目的と目標
おわりに 多様な生に向けて
第2章 教育を支える思想の潮流
はじめに
第1節 近代教育成立以前の教育思想
1.政治と関係づけられた教育思想-古代ギリシアの思想家たち
/ 2.体系的な教育学の始祖-コメニウス
第2節 近代教育思想の成立
1.有徳で勤勉なジェントルマンの育成-ロック
/ 2.自然による人間形成から社会的な存在へ-ルソー
/ 3.民主的な学校から民主的な社会へ-デューイ
第3節 近代教育批判の思想
1.近代学校制度への懐疑-ブルデュー,フーコー / 2.学校化された社会への懐疑-イリイチ
/ 3.制度や国家にとどまらない「公共」を探るために-アーレント
おわりに
Column 「子ども」とは何か
第3章 西洋における教育の歴史―近代公教育の成立まで
はじめに
第1節 ギリシア・ローマ期の教育
1.神話とギリシア人の教育 / 2.哲学の誕生 / 3.民主政とソフィスト
/ 4.アテネとスパルタの教育 / 5.アテネとスパルタの女性観 / 6.ローマ人の教育
第2節 中世の教育
1.知アンテレクチュエル識人という職人 / 2.大学の誕生 / 3.教養ある女性は何を読んだか
第3節 近世期の教育
1.基礎学校の普及 / 2.宗教改革と基礎教育 / 3.科学革命と教育
第4節 近代公教育の成立
1.ネイションとは何か / 2.フランスの公教育 / 3.ドイツの公教育 / 4.イギリスの公教育
おわりに
第4章 日本における教育の歴史(1)―学校と教育の近代化
はじめに
第1節 近代に至るまでの教育
1.古代から中世の教育 / 2.近世の教育機関 / 3.幕末維新期
第2節 近代公教育制度の成立
1.学制 / 2.「教育勅語」と国家による教育制度の確立
第3節 女子教育と私立学校
第4節 学校教育の定着から国家主義的教育へ
1.初等教育の普及 / 2.大正新教育運動
第5節 戦前から戦時下にかけての教育と学校
おわりに
第5章 日本における教育の歴史(2)―戦後教育改革以降の教育
はじめに
第1節 戦後教育改革
第2節 戦後教育改革の転換と高度経済成長期以降の教育
1.戦後教育改革の見直し / 2.高度経済成長と教育における能力主義
第3節 男女平等の教育とは
第4節 臨時教育審議会から教育基本法改正後の教育
おわりに
Column 日本における性教育の歴史
第2部 教育の理念
第6章 教育課程とカリキュラム・マネジメント
はじめに
第1節 教育課程,カリキュラムとは何か
1.教育課程・カリキュラムとは何か-教育課程・カリキュラムの二つの意味
/ 2.教育(活動)の計画としての教育課程・カリキュラムの編成主体
第2節 教育課程の国家基準としての学習指導要領と教科書
1.教育課程の大綱的な基準としての学習指導要領
/ 2.学習指導要領と教科書の違い-「教育内容」と「教材」という区分
第3節 学校におけるカリキュラム・マネジメントとその課題
1.カリキュラム開発・編成の主体としての学校・教師
/ 2.カリキュラム・マネジメントとは-答申等による規定
/ 3.カリキュラム・マネジメントの課題
第4節 これからの教育課程・カリキュラムづくりのために
1.カリキュラム・ポリティクスの視点から教育内容・教材を問う
/ 2.隠れたカリキュラムの視点から学びを問う
/ 3.子どもの声から教育課程を問い,学びを問う
おわりに
Column フリースクールという存在が問いかけていること
第7章 子どもの権利条約を読む―日本の学校教育の課題
はじめに
第1節 学校教育の中の子どもの権利
1.学校での頭髪指導をめぐる問題 / 2.「頭髪指導」と「子どもの権利」
第2節 子どもの権利条約ができるまで
1.ジュネーブ宣言と児童権利宣言 / 2.子どもの権利条約とは何か-コルチャックの思想の継承
第3節 子どもの権利条約の内容
1.原則 / 2.子どもの権利-四つの柱
第4節 子どもの権利条約からみる日本の教育の現状
1.国連子どもの権利委員会(CRC)の勧告 / 2.日本の学校現場における課題
/ 3.女の子の教育 ―「隠れたカリキュラム」による権利の制約
おわりに
第8章 教育の公共性
はじめに
第1節 教育の公共性と公教育
1.「公共性」とは何か / 2.公教育とは何か / 3.国家と教育/個人と教育
第2節 教育の市場化論と教育の共同体論
1.教育の市場化論 / 2.教育の共同体論 / 3.学校選択制をめぐる教育の公共性論争
第3節 これからの教育の「公共性」とは
1.ハーバーマスとアーレントの「公共性」概念
/ 2.教育の公共性と平等 ―「みんな」のための教育
おわりに
Column 夜間中学
第9章 教育の機会均等をめぐって
はじめに
第1節 「教育の機会均等」という概念
1.教育の機会均等とは / 2.教育の機会均等と能力主義 / 3.教育の機会均等と「平等」
第2節 教育の機会均等を阻む要因
1.家庭の経済的,文化的要因 / 2.ジェンダーによる処遇の違いと進路選択への影響
/ 3.マイノリティにおける教育機会の現状
第3節 教育の機会均等と経済的支援
1.義務教育はどこまで無償なのか / 2.教育機会の保障のための経済的支援
おわりに
Column 特別支援教育
第3部 教育をめぐる諸課題
第10章 子どもの貧困と教育
はじめに
第1節 貧困とは何か
1.貧困の概念 / 2.絶対的貧困と相対的貧困
第2節 日本における「子どもの貧困」
1.「子どもの貧困」の問題化 / 2.「子どもの貧困」の現状
/ 3.「子どもの貧困」がもたらす教育格差
第3節 社会問題としての「子どもの貧困」
1.貧困の社会的影響 / 2.「子どもの貧困」をジェンダーの視点から考える
第4節 「子どもの貧困」に向き合う教育
1.歴史に学ぶ / 2.現代における「子どもの貧困」への取り組み
/ 3.間接的支援としての「子どもの居場所づくり」
おわりに
第11章 社会的養育によって育つ子どもの教育
はじめに
第1節 社会的養育の現在
1.社会的養育の中心としての児童養護施設 / 2.「家庭と同様の養育」重視の政策動向
第2節 児童相談所と学校
1.社会的養育に委ねられるプロセスと学校 / 2.一時保護中の児童の就学問題
第3節 児童養護施設で育つ子どもの教育
1.児童養護施設で育つ子ども / 2.児童養護施設で生活する子どもを理解すること
/ 3.児童養護施設が校区にある学校における施設加配教員
/ 4.児童養護施設出身者の進路保障と学校
第4節 「育て直し・育ち直し」の場としての児童自立支援施設
1.児童自立支援施設で育つ子ども / 2.児童自立支援施設と少年院
/ 3.児童自立支援施設と児童養護施設における教育保障の相違点
/ 4.「 育て直し・育ち直し」を核とした教育
/ 5.児童福祉法第48条改正と児童自立支援施設併設校の課題
/ 6.望の岡分校と北海道家庭学校の協働による「流汗悟道」の教育
おわりに
Column 児童虐待に対する学校と教職員の役割
第12章 外国につながる子ども
はじめに
第1節 「外国につながる子ども」とは
1.在留外国人数の増加と多様化 / 2.国際移動の背後にあるもの
第2節 学校教育制度からみた外国につながる子ども
1.「外国人学校」 / 2.日本の公立学校への入学
第3節 外国につながる子どものマイノリティ性と周辺性
1.公立学校に学ぶ外国につながる子どもの状況 / 2.「日本語指導が必要な児童生徒」
/ 3.マイノリティ性と周辺性
第4節 外国につながる子どもの学びの実際
1.言語の獲得と母語保持 / 2.教科の学習における困難 / 3.進路選択の重要性
/ 4.自律性の獲得とアイデンティティの形成
第5節 「国民教育」の問い直し
1.外国につながる子どもの教育に求められること
/ 2.「国民」とは誰か,「国民教育」とは何か
おわりに
Column 地域社会と教育
第13章 多様な性を生きる子ども
はじめに
第1節 世界の教育動向とセクシュアリティ教育
第2節 教師と多様な性
1.性の4要素とLGBTの社会的位置づけの変遷 / 2.学校教育における多様な性
/ 3.教師に意識されにくい性的マイノリティ
第3節 複合差別の課題
おわりに
Column 学校教育における DX(Digital Transformation)
索 引
ISBN:9784762031342
。出版社:学文社 (GAKUBUNSHA)
。判型:A5
。ページ数:232ページ
。定価:2200円(本体)
。発行年月日:2022年09月
。発売日:2022年09月20日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JNA。