第Ⅰ部 世界の道徳教育思想
―概 要
第1章 ソクラテス
第1節 道徳は教えられるか
1 徳とは何か / 2 徳は教えられるか / 3 善悪と快苦
第2節 対話を通した教育
1 助産術としての教育 / 2 徳の教師とソクラテス
第3節 追求する愛と道徳教育
1 知を追求する愛 / 2 無償の愛と道徳教育
第4節 真の徳の教師 ソクラテス
第2章 ホッブズ,シャフツベリ,スミス
第1節 中世から近世へ―ホッブズからシャフツベリ―
1 近世への流れ / 2 シャフツベリ―思想の源流とその道徳思想―
第2節 スミス
1 公平な観察者 / 2 共 感
第3章 ルソー
第1節 『エミール』における3種類の道徳
第2節 共同体に根ざした道徳―古代国家と『社会契約論』
第3節 個人に根ざした道徳―教育的人間像としての有徳人
第4節 フランス革命後の動向
第4章 カント
第1節 人間性への問い
1 カントにおける「人間」 / 2 実践哲学における人格 / 3 カントの教育学における人間性の完成
第2節 世界市民の共同による道徳の具体化
1 道徳法則に立脚する厳粛主義 / 2 世界市民による人間性の探求
第5章 ペスタロッチー
第1節 近代教育の幕開けと道徳教育
第2節 『隠者の夕暮』の道徳教育思想
第3節 『シュタンツだより』における道徳教育の方法化
第6章 シュプランガー
第1節 社会的道徳と個人的倫理
第2節 個人的倫理の中核としての良心
第7章 ボルノー,シュタイナー
第1節 ボルノーにおける徳論
第2節 シュタイナー教育における道徳教育の視点
第8章 ミ ル
第1節 功利主義とは何か
第2節 高次の快楽
第3節 「生の技術」の3部門
第4節 徳と功利主義
第9章 グリーン
第1節 グリーンの道徳思想と自我実現
第2節 自我実現の目的と道徳的行為
第3節 共通善,相互奉仕,社会生活
第4節 グリーンの教育改革と共通善
第10章 デューイ
第1節 19世紀から20世紀における学校教育の現状とデューイの問題意識
第2節 デューイの心理学的アプローチと衝動の自己規制
第3節 衝動の組織化と習慣形成
第4節 習慣形成とその固定化からの転換
第5節 成長の連続過程と現在の活動の意味
第6節 行為,自我,経験のリズムの関係
第11章 ロジャーズ,コールバーグ
第1節 デューイ以降のアメリカの道徳教育思想
第2節 ロジャーズの価値づけ過程理論
第3節 コールバーグの道徳性の認知発達理論
第12章 中国における道徳教育思想
第1節 孔子,孟子
1 孔子と「礼」「仁」 / 2 孟子と性善説
第2節 朱 子
1 「理」と「気」 / 2 心の解明―「性即理」 / 3 修養論―「居敬窮理」
第3節 王陽明
1 陽明の学説―「心即理」「知行合一」「致良知」 / 2 陽明学の実践と展開
第Ⅱ部 世界各国の道徳教育の動向
―概 要
第13章 イギリス(イングランド)
第1節 学校制度と教育課程の特色
1 概観 / 2 教育課程の特徴 / 3 近年の教育改革の動向
第2節 学校における道徳教育の展開
1 道徳教育の位置づけ / 2 英国的諸価値(British Values)の共有に向けて
第3節 道徳教育(PSHE教育)のカリキュラム
1 目標・内容・評価 / 2 指導計画の例
第4節 近年の動向と展望
第14章 フランス
第1節 学校制度と教育課程の特色
1 概観 / 2 教育課程の特徴 / 3 近年の教育改革の動向
第2節 学校における道徳教育の展開
1 小学校・コレージュにおける道徳教育 / 2 リセにおける道徳教育
第3節 道徳教育のカリキュラム
1 道徳教育の内容と方法 / 2 道徳教育の評価
第4節 展 望
第15章 ドイツ
第1節 学校制度と教育課程の特色
1 概観 / 2 教育課程の特徴 / 3 近年の教育改革の動向
第2節 学校における道徳教育の展開
1 基本法における宗教科規定 / 2 各州における倫理・哲学科の設置
第3節 道徳教育のカリキュラム
第4節 近年の動向と展望
第16章 アメリカ
第1節 学校制度と教育課程の特色
1 概観 / 2 教育課程の特徴 / 3 近年の教育改革の動向
第2節 学校における道徳教育の展開
1 道徳教育の展開 / 2 新しい人格教育の歴史的経緯
第3節 人格教育のカリキュラム
1 目 標 / 2 指導内容 / 3 指導方法 / 4 評価方法
第4節 近年の動向と展望
第17章 中 国
第1節 学校制度と教育課程の特色
1 概観 / 2 教育課程の特徴 / 3 近年の教育改革の動向
第2節 学校における道徳教育の展開
1 道徳教育に関する科目の名称 / 2 設置学年・時数
第3節 道徳教育のカリキュラム
1 道徳教育の目標 / 2 道徳教育の内容 / 3 道徳教育の方法 / 4 道徳教育の評価
第4節 近年の動向と展望
第18章 韓 国
第1節 学校制度と教育課程の特色
1 概観 / 2 教育課程の特徴 / 3 近年の教育改革の動向
第2節 学校における道徳教育の展開
1 韓国道徳教育の歴史的経緯 / 2 現在の道徳教育関連教科目
第3節 道徳教育のカリキュラム
1 「道徳」の目標 / 2 「道徳」の内容 / 3 教育(指導)方法
/ 4 「道徳」の評価方法 ―到達度と評価基準による評価―
第4節 近年の動向と展望
第19章 シンガポール
第1節 学校制度と教育課程の特色
1 概観 / 2 教育課程の特徴 / 3 近年の教育改革の動向
第2節 学校における道徳教育の展開
1 道徳教育の変遷と人格・市民性教育の導入 / 2 人格・市民性教育における中核価値と資質・能力
第3節 道徳教育のカリキュラム
1 人格・市民性教育のカリキュラム / 2 正課併行活動(CCA)の実践
第4節 近年の動向と展望
第20章 アラブ首長国連邦
第1節 学校制度と教育課程の特色
1 概観:UAEの社会状況と宗教教育・道徳教育 / 2 教育課程の特徴 / 3 近年の教育改革の動向
第2節 学校における道徳科の導入
第3節 道徳科のカリキュラム
第4節 近年の動向と展望
第Ⅲ部 道徳教育論の現代的潮流
―概 要
第21章 ケアリングと道徳教育
第1節 ケアリングの再発見
1 ケアをめぐる問題の広がり / 2 道徳教育におけるケアリングの再発見
第2節 コールバーグからギリガンへ,そしてノディングズへ
1 ギリガンのコールバーグ批判 / 2 ノディングズのケアリング倫理
/ 3 状況倫理としてのケアリング倫理
第3節 可能性と課題
第22章 道徳性心理学の潮流:道徳性をどう捉えるか
第1節 道徳性研究の現在
第2節 認知発達に基づく道徳性発達理論
1 コールバーグの道徳性発達理論 / 2 コールバーグ理論への批判
第3節 道徳判断における直感の役割
1 ハイトによる社会的直感モデルと道徳基盤理論 / 2 直感をどう捉えるか
第4節 道徳性研究の今後
第23章 徳倫理学
第1節 徳倫理学の再興
1 徳倫理学の射程 / 2 徳倫理学の基本概念―実践知と幸福―
第2節 徳倫理学における道徳教育の構想
1 「徳を身に付ける」とはどういうことか / 2 徳の学習とスキル / 3 熟慮と議論の徳
第3節 展 望
第24章 子どもの哲学(P4C)
第1節 子どもの哲学の概要と,世界各地での取組
第2節 子どもの哲学と道徳教育
1 哲学対話を通した道徳的思考力の育成
/ 2 哲学対話を通した知的に安全な探究のコミュニティの醸成
第3節 子どもの哲学のこれから
第25章 市民性教育/シティズンシップ教育
第1節 1990年代以降の市民性教育をめぐる潮流
1 シティズンシップの定義 / 2 市民性教育への関心の高まり / 3 シティズンシップをめぐる論点
/ 4 市民性教育の多様なアプローチ
第2節 市民性教育における道徳と価値の位置づけ
第3節 国境を越えた市民性育成の取組
1 ヨーロッパにおけるシティズンシップ教育 / 2 ユネスコのグローバル・シティズンシップ教育
第4節 市民性教育の課題と日本への示唆
第26章 SEL(社会性と感情の学習)
第1節 ソーシャルエモーショナルラーニングとは
1 目指す5つの力 / 2 SELの背景 / 3 理論的な枠組み
第2節 学校の教育活動全体の土台となるSEL
1 カリキュラム・マネジメントとしてのSEL / 2 教育者自身の力量を伸ばすアセスメント
/ 3 “発達的なレンズ”を重視 / 4 エビデンスに基づいたプログラムの紹介
第27章 いじめ問題への取組
第1節 国際的にみたいじめ問題とその定義
1 暴力との境界がないbullying / 2 暴力と一線を画してきた日本のいじめ
/ 3 法律の制定がもたらした定義の変更
第2節 日本における道徳教育・生徒指導といじめ問題
1 日本の道徳教育 / 2 日本の生徒指導
第3節 日本のいじめに対する道徳教育の可能性
1 暴力および暴力を伴ういじめと道徳教育 / 2 暴力を伴わないいじめと道徳教育
/ 3 ハラスメント教育の可能性
第28章 対話と議論の道徳教育
第1節 討議倫理
第2節 現代道徳教育論における対話と議論
1 コミュニケーションの射程 / 2 コミュニタリアニズムとリベラリズム―対立を越えて
/ 3 対話と議論の道徳教育理論の構想 / 4 展 望
附録 諸外国における道徳教育の実施状況