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日本の建築意匠

編著:平尾 和洋
編著:青柳 憲昌
編著:山本 直彦

紙版

内容紹介

中世の民家や社寺建築から、近現代の建築作品、またはそれらが織り成す農村・都市景観まで、地域性・時代性を超えて見出される「日本的なもの」の再解釈。近代建築家の伝統理解と表現手法/空間フレームとフォルム/構成要素とマテリアルの3部を選り抜きの図版と見開き読切りで構成。若手の建築・都市景観デザイン設計者必携。

目次

Ⅰ 近代日本の建築における「日本的なもの」と建築家の伝統表現
第1章 日本建築意匠論序説:日本近代の伝統表現
1.1 明治の建築における伝統表現
 ──西洋古典主義の構成原理と折衷主義
1.2 大正の建築における伝統表現
 ──様式論争と鉄筋コンクリート造による伝統表現の試み
1.3 昭和戦前期の建築における伝統表現
 ──折衷主義的伝統様式の完成とモダニズム建築の伝統表現
1.4 1950年代の建築における伝統表現
 ──「弥生的なもの」と「縄文的なもの」
1.5 1960年代以降の建築における伝統表現
 ──メタボリズムの更新可能性とポスト・モダニズムの大衆性

Column1 万国博覧会の日本館
Column2 「縄文的なるもの」が語るもの ─白井晟一の創作哲学─

第2章 近代的テクノロジーという前提:「空間」の伝統表現から「象徴」の伝統表現へ
2.1 柱と梁と庇の、明るい空間
 ──丹下健三の「弥生的なもの」にみる軸組の表現
2.2 コンクリートの壁的表現
 ──丹下健三の「縄文的なもの」にみる“日本建築”の象徴化
2.3 内・外を流動する空間の造形
 ──前川國男による「行為」の空間と「日本的」な佇まい
2.4 柱と梁の「自抑的な意匠」
 ──吉田鉄郎、および「郵政スタイル」の軸組・各階庇の伝統表現
2.5 細部(ディテール)よりも比例(プロポーション)で
 ──吉田五十八の鉄筋コンクリート造による平安王朝美の再現
2.6 建築に“上絵付け”をする
 ──谷口吉郎の「意匠心」と鉄筋コンクリート造の日本建築様式
2.7 柱の「間(ま)」が併存させる“近代”と“伝統”
 ──大江宏の「混在併存」による伝統表現
2.8 壁を「屋根」とする
 ──浦辺鎮太郎の「ウラチン庇」にみる“日本建築”の生物学的進化
2.9 「床」を宙に浮かす
 ──菊竹清訓によるコンクリートの組立建築と架構の象徴表現
2.10 まちづくりの手がかりとしての「民家」
 ──大高正人のプレファブリケーション工法と傾斜屋根の造形
2.11 「日本的なもの」を解体し、再構築する
 ──磯崎新による日本建築からの引用手法と「闇(やみ)」の空間

Column3 折衷の日本の構築─伊東忠太の「法隆寺建築論」と進化主義─
Column4 山田守の伝統表現 ─和風意匠の抽象化による個人的なイメージの共有─

第3章 伝統技術の継承と変容:“数寄の美学”から“民家の造形”へ
3.1 数寄屋を「明朗化」する
 ──吉田五十八の“新興数寄屋”にみる「大壁真壁」と「明朗な平面」
3.2 数寄屋の古典を再生(リバイバル)する
 ──堀口捨己による「本歌取り」の手法
3.3 関西風の薄味で自在なデザイン
 ──村野藤吾の“数寄の美学”の創作精神
3.4 緩勾配・切妻の屋根と象徴的な柱
 ──白井晟一が秋田の風土から導いたもの
3.5 「箱の解体」により流動する空間
 ──F. L. ライトと弟子たちのプレーリー・スタイルと“日本建築”
3.6 丸太架構のモダニズム
 ──A. レーモンドとその弟子たちによる“民家的”空間の抽象化
3.7 ワン・ルームのなかの「鋪設(しつらい)」
 ──清家清の「新日本調」の小住宅と本棟造り風棟持柱の家
3.8 民家の「象徴空間」を創造する
 ──篠原一男の「第一の様式」、〈白の家〉と〈地の家〉への道程

Column5 現代建築にみられる「日本的なもの」

Ⅱ 日本の空間フレームとフォルムを学ぶ
第4章 中世の社寺建築における「日本的なもの」
4.1 神秘的な「奥行き」空間
 ──中世和様建築(仏堂)の空間構成の成立過程
4.2 穏やかで軽快な佇まい
 ──中世和様建築(仏堂)の立面意匠の成立過程
4.3 野物と化粧:おおらかさから整備感へ
 ──中世和様建築の成立の技術的背景
4.4 流造りの中世的展開
 ──奥行き空間の創出と連棟式社殿

第5章 民家プランと構造の基礎知識
5.1 近世民家の成立
 ──広間型と四間取り・並列型のプラン
5.2 ベーシック・ストラクチャー
 ──上屋と下屋・四方蓋・四方下屋・四本柱の四つ建
5.3 日本民家の源流
 ──分棟型民家と多彩な屋根フォルム
5.4 空間は均質ではない
 ──オモテとウラ/平入と妻入
5.5 土間と床・座敷
 ──座の多様性と「高さを操作する」

第6章 日本の都市・集落デザイン
6.1 京都:1200年間続く都のかたち
 ──都城の完成形の土着化・城下町化・近代化
6.2 城下町の歴史的展開
 ──5類型と縦町型から横町型への変化
6.3 町家のかたち
 ──都市に密集して住まう仕掛け
6.4 農村のかたち
 ──集村から散村への歴史的展開
6.5 水辺空間と生活の風景
 ──水と暮らしの関わりが生み出す風景

第7章 日本の空間特性
7.1 道
 ──到達する道、シークエンス、活動の場、盛り場の街路
7.2 間接光が織り成す日本建築の光
 ──反射光と透過光
7.3 空間の仮設性・可変性
 ──祭礼、小屋掛け、空間をつくるおおい・床・仕切
7.4 ダイナミックバランス
 ──反りの美学、アシンメトリー、天地人、間と余白

第8章 日本的空間の構造と配置形式
8.1 軸によって繋がれる空間と時間
 ──水平性と垂直性が重なり合う直線的構造
8.2 浮遊する平面
 ──無限に重層化される透明空間
8.3 「奥」を生み出す空間の結合形式
 ──雁行による奥行がもたらす運動性と時間性
8.4 空虚な余白を包み隠す空間
 ──「奥」を生み出す引力
8.5 世界の縮図としての空間構成
 ──家と庭とが織りなす日本的コスモロジー

Column6 かいわい(界隈)─活動が規定するにぎわいの場─

Ⅲ 構成要素(モチーフ)とマテリアル
第9章 部位のかたちと構成
9.1 屋根の多様性
 ──フォルムと素材、妻面と軒裏・組み合わせによるヴァリエーション
9.2 木割:和のオーダー
 ──部材のプロポーションと配置の規範
9.3 窓と格子
 ──三つの窓のかたち、茶室の景、格子のヴァリエーション
9.4 戸・障子と襖
 ──古式開き戸、障子と襖のヴァリエーション、機能的な仕掛け

第10章 民家のシンボリズム
10.1 家格の表現としての屋根
 ──妻面と瓦葺・家紋と防火祈願
10.2 門と式台玄関~座敷
 ──誘いのかたち・接客空間の独立
10.3 柱:神と福徳・家長のシンボル
 ──大黒柱・カマド神(荒神)・恵比寿柱
10.4 梁組・小屋組による演出
 ──牛梁・中引梁・投掛梁・枠の内・梁算段・貫束和小屋
10.5 塗籠から寝間へ
 ──高八方造・雪国の生活と閉鎖性・方位のもつ意味

第11章 実用から生まれたアノニマスな機能美
11.1 生産手段としての建築
 ──農作業と養蚕民家のかたち
11.2 宗教行事と炉端の日常接客
 ──視線による空間秩序・仏壇と部屋飾り
11.3 風雨と向き合う
 ──外壁の保護・屋敷林・防風と耐風・曲家
11.4 雪に備える
 ──構造強化・中門造・セガイ・軒下空間
11.5 火災からまもる
 ──土倉・土蔵の系譜、卯立の成立過程、立地の工夫

第12章 素材に隠された意味と役割
12.1 素材原論
 ──自然素材と場所性・連想性・テクスチャー
12.2 素地と着色
 ──素木と黒木・色付という革新・自然との対比
12.3 漆喰と紙
 ──白い意匠とプロポーション
12.4 竹の野趣
 ──自然への連繋・数寄屋と民家の竹使い
12.5 外部空間のマテリアルデザイン
 ──地域性、真行草、記号的意味、ヒエラルキーとサスティナビリティ

著者略歴

編著:平尾 和洋
立命館大学理工学部建築都市デザイン学科教授
1966年生まれ。京都大学工学部建築学科卒業、京都大学大学院修了。パリ建築大学ラ・ヴィレット校、京都大学工学研究科助手を経て現職ならびに造形工房・平尾アトリエ主宰。
編著:青柳 憲昌
立命館大学理工学部建築都市デザイン学科講師
1975年生まれ。東京工業大学建築学科卒業、東京工業大学大学院建築学専攻修了。東京工業大学助教を経て現職。
編著:山本 直彦
奈良女子大学生活環境学部住環境学科准教授
1969年生まれ。京都大学工学部建築学第二学科卒業、京都大学大学院博士課程修了。デンマーク王立オーフス建築大学助手、立命館大学および滋賀県立大学専任講師を経て現職。

ISBN:9784761532246
出版社:学芸出版社
判型:A5
ページ数:192ページ
定価:3500円(本体)
発行年月日:2016年12月
発売日:2016年12月15日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:AM
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ