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バザールカフェ ばらばらだけど共に生きる場をつくる

著:狭間 明日実
著:佐々木 結
著:松浦 千恵

紙版

内容紹介

バザールカフェとは、京都市上京区今出川で1990年代後半から、マイノリティであることで労働ができない、居場所がないなどの孤立問題を社会課題とし、その解決のために活動を続けるカフェ(団体)である( https://www.bazaarcafe.org/ )。
ヴォーリズ建築の古い洋館をリノベーションした“ふつうの”カフェであるが、運営を担うのは日本基督教団京都教区とアーティスト、市民運動家、大学教員、宣教師、牧師などだ。
バザールカフェでは、マイノリティと総称される、セクシュアリティ、依存症、ひきこもり、出所歴、HIV陽性、国籍など、異なった現実で孤独に生きている人々がありのままで共に過ごしている。こうした人々を雇用したり、牧師や芸術家、学生や近隣の住民や子どもも出入り(ブレンディング・コミュニティ)したりし、居場所を提供する実践を重ねている。
いわばコミュニティカフェとソーシャルワークが交差し、歴史ある建築や自然豊かな庭などの場の特性を活かしながら市場的コミュニティが成り立っている稀有な拠点なのだ。
何も知らないまま偶然出会い、だれもが自己の存在価値に気付くことのできる場であり、マイノリティ同士だけでかたまった居場所や当事者・支援者・家族だけで完結する従来の支援のかたちを覆す場でもある。
本書は、当事者だけでなく支援者もすべての人が受け入れられ、共に学ぶ場として多様性を尊重する社会空間となっているバザールカフェの25年にわたる実践を伝えることを目的としている。こんな場所が社会の中に必要なのだという認識から、誰かにとって「生きててもいい」と思える場所が広がっていくことを目指している。

目次

はじめに

1章 カフェの日常を支える土台
1-1. 木々に囲まれたカフェにある、かすかな違和感
1-2. 雑然さが「隙」をつくる
1-3. いろんな顔をもつ市場
1-4. しなやかに形を変えていくネットワーク
1-5. 価値観がほぐれ揺らぐこと

2章 バザールカフェには誰がいる?
2-1.  まず「人」として出会う
2-2.  多国籍メニューをつくる外国人シェフ: バザールは第2のホーム
2-3.  アルコール依存症のゲンさん: 誰かに必要とされる場所
2-4.  依存症の当事者でもある店長: 「私、ここにいて良いんだな」
2-5.  皿洗いをする高校教師: 違う自分になれる場所
2-6.  常連客の牧師: 肩書をおろして過ごせる場所
2-7.  社会福祉学科の実習生: 実習で得た一番の財産は居場所
2-8.  同性愛者のボブちゃん: ありのままの姿へ
2-9.  たろうと3人のおとな: ふしぎな子育ての場
2-10. 支援されるソーシャルワーカー: 「お互い様なんだな」
2-11. 7年勤務のボランティアスタッフ: 人生を変える出会い
2-12. ばらばらな「人」が今日も集まる

3章 バザールカフェ的ソーシャルワーク
3-1. 社会が作ってきた生きづらさの中で生きる
3-2. ある1日の記録
3-3. ソーシャルワーカーの葛藤
3-4. バザールカフェにあるコミュニティワーク
3-5. バザールカフェにある漠然とした信頼感
3-6. 私の役割とバザールカフェが目指すもの

4章 そこに広がる「生命モデル」の世界
4-1. ソーシャルワーカーの悔いのストーリー
4-2. 生命モデルの庭につながる小径を歩く
4-3. ソーシャルワーク理論の発展の歴史
4-4. バザールカフェのソーシャルワーク
4-6. 「クライアントのために」というより「クライアントとともに」

5章 学びの場としてのバザール:コーヒーハウスミニストリー
5-1. 型にハマらない学びの場
5-2. 持続可能なソーシャルワークを支える仕組み
5-3.ミニストリーとしてのバザールカフェ

6章 ブレンディング・コミュニティを生み出すカフェの試み
6-1. バザールカフェはコミュニティカフェなのか
6-2. バザールカフェに巻き込まれる
6-3. HIV/エイズの社会問題化と京都が果たした役割
6-4. インクルーシブなカフェの成り立ち:キリスト教とアートの邂逅
6-5. 困難と隣り合わせのカフェ運営
6-6. ブレンディング・コミュニティという支え合いのかたち

著者略歴

著:狭間 明日実
9年間バザールカフェ事務局に従事したのち2024年からボランティアとして関わる。傍らで「Re:」を中心にすえて、暮らしにまつわる仕事や遊びをしている。同志社大学在学中の実習を機にバザールカフェに関わるようになった。
著:佐々木 結
バザールカフェ活動委員。大学2回生だった2017年、先輩に誘われてバザールのボランティアを始める。現在は同志社大学神学研究科大学院生。専門は近現代日本キリスト教史。バザールカフェがきっかけで社会福祉にも関心を持ち始めた。
著:松浦 千恵
ソーシャルワーカー(社会福祉士・精神保健福祉士)。2004年頃よりバザールカフェに関わるようになり、現在は事務局スタッフ。依存症専門の精神科クリニックとバザールカフェで主に依存症の方々に関わっている。地域と医療機関の両方で依存症支援のあり方について考え中。

ISBN:9784761528973
出版社:学芸出版社
判型:4-6
ページ数:224ページ
定価:2000円(本体)
発行年月日:2024年07月25日
発売予定日:2024年07月21日