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白熱講義 これからの日本に都市計画は必要ですか

著:蓑原 敬
著:藤村 龍至
著:饗庭 伸

紙版

内容紹介

日本の都市計画は何をしてきたのですか?近代都市計画とは何だったのですか?3.11で何が変わるのですか?今、私たちが引き受ける課題は何ですか?1930年代生まれのベテラン都市プランナーへ、1970年代生まれの若手が投げかける、差し迫った問いと議論の応酬。都市計画の現実、矛盾と展望を明らかにした現役世代に訴える一冊。

目次

1部:講義編 日本の都市計画は何をしてきたのか

◎1章 近代都市計画とは何だったのか
□1 近代都市計画を解釈する
何を読むべきか?!
都市計画は単なる技術ではない──日本人が書いた教科書の偏り
近代都市計画を読み直す──三冊のテキスト
近代都市計の解釈──ピーター・ホール『明日の都市(Cities of Tomorrow) 』を読む
都市計画の起源──18世紀のスラム対策
19世紀の都市拡張──社会、文化、政治、経済はどう対処したか
20世紀、世界の都心に現れた高層ビル
成熟期の反省──住民参加による「自助の都市」への注目
それでも都市の拡張は続く──高速道路網の整備とスプロール
□2 都市計画の反省
1940年代の都市計画理論──量的な解析で都市はつくれるか
計画論が見直された背景
計画することで見えてきた問題
市場と都市計画──1980年代レーガン・サッチャーリズム
変わらぬ下層階級都市──スラム、そして色あせた都市
近代都市計画史を私たちはどう解釈するか
日本の近代──村落共同体の破壊と無縁社会の発生
都市空間の整備とコミュニティ
日本人のルーツ──都市居住か、郊外居住か
□3 グローバル化の再考
グローバル化した世界の都市3類型
グローバル化に対する7つの疑問
地域による「民主主義」の違い
日本的な公共性、民主主義の模索
新しい経済価値は根付くか──交換価値と使用価値

◎2章 3.11で何が変わるのか 
□1 現代都市計画の転機
1933年、1973年、そして2013年
21世紀の新しいハビタットのパターン
1970年代からの近代の問い直しはどこで挫折したのか
□2 震災を契機に価値観の転換はなされるか
エネルギー問題を真剣に問い直せるか
過疎地、漁村の復興問題
農林業を自然立地的土地利用へ切り替えられるか
都市計画は安全をどこまでサポートするのか
産業構造と人口の問題
リスクヘッジから国土を考えなおす
経験のない世代に復興が担えるのか

◎3章 今、私たちの引き受けるべき課題は何か?
□1 更地から始まった近代、都市が既にある現代
タブラ・ラサ(更地)を“善”とした近代
日本の不完全な設計主義
マスタープランは機能したのか
官僚組織の構造が抱えるジレンマ
土地所有の構造が抱えるジレンマ
□2 都市へのモチベーションが見出し難い現代
マーケットの圧力とどう戦うか
設計主義の実験──埋立地にできた幕張ベイタウン
人はどちらを選ぶのか──都市の快適性と大型SCの快適性
設計主義の実験──監理された都市シンガポール
人は自分の住環境に手を加える動物
3.11 後の構造をどう読み、何をするか
次世代都市計画の課題

2部:演習編 蓑原先生、これからの日本に都市計画は必要ですか?    
◎問1 都市計画にマスタープランは必要ですか?(姥浦道生)
□問い
日本と外国のマスタープラン
マスタープランの歴史
ビジョンとして、或いは評価ツールとして
日本のマスタープランは空間的総合調整ツールになり得るか
□議論
日本におけるマスタープラン「的」なものの系譜
日本人は空間の秩序を求めているのか?
近代都市計画にとってのマスタープランを振り返る
1968年都市計画法制定時の実状
都市を包括的に捉える視点はずっと欠けていた
共有するビジョンの不在
マスタープランが調整機能を有するためには
実行する担い手
防災を手掛かりにしたマスタープランの計画

◎問2 都市はなぜ面で計画するのですか?(藤村龍至)
□問い
2000年代以降の新しい傾向1:都市のような巨大建築の出現
2000年以降の新しい傾向2: 集合知という設計のイメージ
孵化過程・海市:炎上
多様かつ構築的な計画:使用者と設計者の双方の暴走を抑止する
模型性─コミュニケーションの可視性と双方向性
都市設計の模型性をどう担保するか
学校施設をコアにした公共建築マネジメントの可能性
点の集合が都市空間像を描く
蓑原先生、街は要るのでしょうか?
□議論
資本の論理だけ考えれば「街」は要らない
施設配置とそれを補完する小さなモビリティ
設計手法が生み出す多様性
社会はいろんなかたちで「収れん」されている
人口減少している社会が「街」の意味を考えるべき

◎問3 コンパクトシティは暮らしやすいまちになりますか?(野澤千絵)
□問い
固定観念としてのコンパクトシティ信仰
現実のライフスタイル──郊外型SCとネット通販への依存
コンパクトシティの実現手法を持たない都市計画
むしろネットワーク志向の都市計画、法制度へ
□議論
郊外から都市へ移れば、どんな幸せな生活が待っているのか
公共サービスのない郊外に住み続けられるか
それでも郊外住宅地は拡がる?
市場ではなく福祉誘導型の判断基準を持てるか
施設整備の積み重ねで全体をコントロールできないか
次世代に引き継げるものを探す

◎問4 都市はどのように縮小していくのでしょうか?(饗庭伸)
□問い
市場の発達を前提にした、近代都市計画の体系
従来からの課題
現実の都市はスプロール的に拡大し、スポンジ的に縮小する
地方都市における縮小の実践──「空き屋活用まちづくり計画」
脱市場化に都市計画は応えられるか
□議論
中心市街地は捨てられつつある
集中という理念、分散する街の現実
現実の空間はランダムに変わる
そして縮小していく不動産市場
それでも都市開発事業はあり得るのか?
市場と政府の再デザイン

◎問5 都市計画は人と自然の関係性から出発しなくて良いのでしょうか?(村上暁信)
□問い
過剰なインフラと自然災害
「土地を読む力」の劣化
地域の環境特性を生かせないエネルギーシステム
人口減少時代の土地管理
ランドスケープ・アーバニズム~人と自然の関わりから考える~
□議論
ランドスケープを軸にしたマスタープランの実効性
誰がそのマスタープランを描けるのか?
土地利用(Fプラン)と環境保全(Lプラン)の対立~ドイツの場合~
都市開発と環境保全の対立~日本の場合~
市民参加の有効性、産業化の可能性

◎問6 都市の将来像を描くことは可能ですか?(日埜直彦)
□問い
将来像を描くことの限界
将来のための計画ではなく、現在のための計画
シミュレーションの現代的可能性
現在のための計画の意義
□議論
都市の将来シミュレーション
空間の可視化は合意形成の質を高める
シミュレーションの実効性
シミュレーション結果をどう描くか
遠い未来ではなく、近い未来を描くツール
従来の都市計画もシミュレーションは行ってきた
惰性的なルールより、多様な価値を勘定に入れたシミュレーションを!
担い手は誰か

◎問7 都市計画は「時間」にどう向き合っていくのでしょうか?(中島直人)
□問い
変わりゆく都市計画と「過去」
補助線としての「過去」
生活環境としての「過去」
そろそろ文化としての都市計画を語りませんか。
□議論
技術・コストと都市文化のせめぎあい
空き地になった土地に意味は残るのか?
外からの文化移転を時間に取り込む
都市の多様性を担保する「時間」の役割
文化としての都市計画を支えるメディア・技術とは?
ドイツにおける都市計画家、都市計画部局の位置づけ

著者略歴

著:蓑原 敬
蓑原 敬/1933年生まれ、都市プランナー
著:藤村 龍至
藤村龍至/1976年生まれ、建築家。東洋大学理工学部建築学科専任講師
著:饗庭 伸
饗庭伸/1971年生まれ、首都大学東京大学院都市環境科学研究科 都市システム科学域 准教授

ISBN:9784761525712
出版社:学芸出版社
判型:4-6
ページ数:256ページ
定価:2200円(本体)
発行年月日:2014年05月
発売日:2014年05月25日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:TQS