まえがき――鳥脳に挑む(なぜ心理学者が動物の研究をするのか/モデル動物から行動の多様性へ/鳥脳の魅力)
第1章 鳥という名の恐竜
一 生き残った恐竜「鳥」
二 そも鳥とは何者か(羽毛/二本足/翼と飛翔/何を食べていたのか/クチバシは万能ツール/鳥の進化をまとめると)
三 現生鳥類の成功と鳥脳の発展
第2章 鳥脳とはなにか
一 鳥脳と哺乳類脳――どこが似ていて、どこが違うか(どちらも脳が大きい/鳥脳はどうやって小型高機能を実現したか/層構造と核構造の違い)
二 これが鳥脳の謎だ! その1――鳥脳は分離脳か
三 これが鳥脳の謎だ! その2――DVRとはなにか
四 これが鳥脳の謎だ! その3――鳥型視覚脳
五 これが鳥脳の謎だ! その4――鳥脳に前頭葉はあるか
六 なぜ鳥脳は誤解されたのか
第3章 鳥脳はものを憶えられないか
一 生まれてすぐの経験と親子の絆
二 刻印づけによる自種認知(自種に対する愛着は生得的か/記憶形成の脳内部位)
三 短い記憶と長い記憶(短期記憶/長期記憶)
四 空間記憶と海馬(脳細胞は新生する/海馬の損傷/鳥脳海馬は何をしているか)
五 過去への心的時間旅行(記憶の種類/カケスのエピソード記憶/鳥にも思い出はあるか)
六 未来への心的時間旅行
第4章 道具をつくる鳥脳
一 道具を使う動物たち
二 道具使用の古典的実験(棒でスイッチを押すカラス/踏み台を使うハト)
三 ニューカレドニアカラスの超道具作成(木の枝を細工する/針金を加工する/道具を組み立てる/道具を準備する(プランニング)/学習・経験の可能性/ほかのカラスは?)
四 道具の作成と鳥脳(道具をつくる鳥脳)
第5章 鳥脳のナヴィゲーション・システム
一 伝書鳩の歴史(伝書鳩の盛衰/伝書鳩の脳)
二 太陽コンパスによるナヴィゲーション
三 磁気ナヴィゲーション(磁気弁別実験/磁気検出装置は体のどこにあるか/磁気感覚の本体)
四 視覚ナヴィゲーション・システム(帰巣航路の測定/GPSの利用/路線情報/夜間飛行とクラスターN)
五 鳥脳に地図はあるのか(聴覚地図/嗅覚地図/地図のための脳内機構)
六 飛行のリーダー
第6章 鳥脳に「美」を教える
一 鳥脳を解放する(コロンバン・シミュレーション/生物学的制約から解放できるか)
二 美の進化的基盤(美しさはなぜ好まれるか/動物たちの芸術活動)
三 鳥脳に絵画を見分けさせる(ハトにモネとピカソの絵を見分けさせる/弁別の手がかりはなにか/ゴッホとシャガールではどうか/水彩画とパステル画の区別はつくか/上手か下手かの判断)
四 鳥脳は絵画を楽しむか
五 鳥脳の絵に何を見るか(バラバラになったチャーリー・ブラウンがわかる/鳥脳の見方とヒト脳の見方は違う/鳥脳は二次元の絵から三次元の物体がわかる)
第7章 鳥脳に「音楽」を教える
一 鳥脳は音楽を区別できるか(バッハとストラヴィンスキーを聴き分ける/ブンチョウはバッハとシェーンベルクを聴き分ける/和音と不協和音が手がかり?)
二 鳥脳は音楽を楽しむか(ハトは音楽を楽しまない/ブンチョウはシェーンベルクが苦手?)
三 小鳥の歌は音楽か?
四 音楽に合わせて踊るオウム
第8章 鳥脳に「論理」を教える
一 合理的とはどのようなことか(鳥脳のコンコルド効果――ハトもヒトも不合理な判断をする/鳥脳の柔軟性――ハトのカード分類作業)
二 鳥脳は人間の論理を理解するか(「AはAである」/「AはBである」/「AならばB」であれば「BならばA」か/推移的推論――「AならばB」、「BならばC」であれば「AならばC」)
三 刺激等価性――ヒトの非論理的判断
四 鳥や魚ができてヒトや類人猿が苦手な判断
第9章 鳥脳に「言語」を教える
一 鳥脳にコミュニケーションを教える
二 鳥脳に音声言語を聞き分けさせる(抑揚を教える)
三 鳥脳に英語を教える(英語を話すオウム/オウムのおしゃべりに意味はあるか)
四 鳥脳に文法はあるか(文法の起源/鳥の歌文法/鳥の歌文法は生得的か/鳥文法とヒト文法の違い)
五 鳥の歌脳
第10章 鳥脳に「自己」を教える
一 内部環境の認知
二 哺乳類の鏡像自己認知
三 鳥に鏡を見せてみる(ハトの鏡への八つ当たり/カラスは鏡を攻撃する/ブンチョウは鏡が好き)
四 鳥の鏡像自己認知(カササギのマークテスト/ハトのマークテスト/遅延した自己映像の認知)
エピローグ 鳥脳への挑戦はつづく