大阪市立大学人文選書 6
ヒュームの人と思想
宗教と哲学の間で
著:中才 敏郎
内容紹介
本書は、18世紀のイギリスを代表する哲学者であるデイヴィッド・ヒュームの思想を読み解こうとする試みである。第一部は、ヒューム哲学を醸成した三つの都市、パリ、ロンドン、エディンバラの情景を交えつつ、ヒューム思想の時代背景を跡づける。第二部は、ヒュームの主著と目される『人間本性論』を取り上げ、ヒューム哲学の基礎を成す「知性論」の読み方について論じる。第三部と第四部は、ヒュームの宗教哲学を取り上げる。ヒュームは宗教と哲学の間で自らの論理を徹頭徹尾追求した。第三部では、当時最も物議を醸したヒュームの奇蹟論が論じられ、第四部は、神の存在証明の一つである計画性からの論証に関するヒュームの議論とその哲学的意義を考察する。
目次
第一部 哲学三都物語―ヒュームとパリ、ロンドン、エディンバラ―
はじめに―スコットランド啓蒙
一 北のアテネ(1711―37)
二 ロンドンの憂鬱(1737―49)
三 エディンバラに錦を飾る(1749―58)
四 ロンドン―住めば都?(1758―62)
五 パリ―サロンの憂愁(1762―67)
六 再び、エディンバラ―終の棲家(すみか)(1767―76)
おわりに―啓蒙の行方
第二部 ヒュームの読み方―ヒュームの因果論と懐疑論―
はじめに―ヒュームのレッテル
一 ヒュームの「観念説」と人間の自然本性
二 因果論の構造
三 懐疑論の射程―哲学の自然史
おわりに―『本性論』と『知性研究』
第三部 奇蹟と蓋然性―ヒュームの宗教哲学(一)―
はじめに―ヒュームと宗教
一 奇蹟論の背景
二 ティロットソンの議論
三 蓋然性の原理
四 人間の証言:インドの王子
五 奇蹟と自然法則
六 反対しあう奇蹟
第四部 真なる宗教と偽なる宗教―ヒュームの宗教哲学(二)―
一 宗教的仮説―『知性研究』第11節
二 人間本性における宗教の起源―『自然史』
三 計画性からの論証―『対話』その一
四 真なる宗教と偽なる宗教―『対話』その二
おわりに―稀薄な理神論?
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