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研究叢書 470

歌謡文学の心と言の葉

著:小野 恭靖

紙版

内容紹介

日本の歌謡文学は庶民文化の産物としての要素が強く、日本人の心の歴史、すなわち精神史を考える際にきわめて重要な役割を担っています。本書は歌謡文学という視点から日本文化を捉え直し、周辺の芸道や芸能との関係にも及ぶ研究をまとめたものです。歌謡文学の平安時代以降の主題や表現にかかわる特徴を通史的に分析するとともに、歴史的に担ってきた役割のひとつである庶民教化の性格について追究します。また歌謡と同様に庶民教化の役割を果たした道歌についても、基礎的な資料を提示して考察します。その過程で、教化歌謡や道歌が仏教や神道などの信仰と深くかかわっていたことを具体的に明らかにし、庶民教育の一側面についても論じます。

目次



I 歌謡文学の諸相
1 歌謡の遊び心
 はじめに―当座の花としての歌謡―
 一 男性視点の歌謡
 二 意味のアクロバットを楽しむ歌謡
 三 口語を楽しむ歌謡
 四 擬人化を楽しむ歌謡
 五 雅俗の混淆を楽しむ歌謡
 六 音自体の面白さを楽しむ歌謡
 おわりに
2 平安文学と風俗圏歌謡―『枕草子』と『紫式部日記』に見る催馬楽・風俗歌―
 はじめに―『枕草子』に見る風俗歌―
 一 『枕草子』に見る催馬楽
 二 『枕草子』に見る東遊
 三 『紫式部日記』に見る催馬楽
 四 『源氏物語』に見る風俗歌
 おわりに
3 『梁塵秘抄』巻二相伝者の肖像続考―伝正韵筆古筆切二点紹介―
 はじめに
 一 新出「後撰和歌集切」
 二 新出「千載和歌集切」
 おわりに
4 親鸞和讃の表現美―『三帖和讃』の強さと美しさ―
5 室町小歌の遊び心―ことば遊び・慣用句摂取―
 一 歌謡とことば遊び・慣用句
 二 “しゃれ”
 三 “三段なぞ”
 四 “判じ物”
 五 “回文”
 六 “倒言”
 七 “早口ことば”“畳語”
 八 “物尽くし”
 九 慣用句
6 歌謡文学と茶の湯―堺文化圏と「わび」の心―
 はじめに
 一 隆達伝記とその歌謡
 二 隆達周辺の茶の湯―三好家の人々―
 三 隆達周辺の茶の湯―高三家の人々―
 四 隆達周辺の茶の湯―隆達交遊圏の人々―
 五 隆達周辺の茶の湯―隆達説話中の人物―
 六 隆達と茶の湯
 七 「隆達節歌謡」と茶の湯
 おわりに
7 俳文学作品に見る隆達・「隆達節歌謡」
 はじめに
 一 俳文学中に見る隆達・「隆達節歌謡」への言及
 二 俳諧作品中に見る隆達の名称
 三 俳文学中の「隆達節歌謡」摂取
 四 俳文学と「隆達節歌謡」の共通性
 おわりに
8 歌謡調の文体―仮名草子のリズムという視座から―
 はじめに
 一 『竹斎』と流行歌謡
 二 『恨の介』と流行歌謡
 三 その他の諸作品と流行歌謡
 おわりに
9 近世歌謡と出版―詞章本という観点から―
10 絵で読む流行歌謡
 はじめに
 一 『平家納経』と歌謡
 二 中世物語絵巻と歌謡
 三 風流踊絵と歌謡
 四 近世初期風俗画と歌謡
 五 近世美人画と歌謡
 六 禅画と歌謡
 七 赤本の判じ物と歌謡
 八 おもちゃ絵と歌謡
 おわりに
11 新出おもちゃ絵の歌謡考―『新板小供うたづくし』紹介―
 はじめに
 一 『新板小供うたづくし』解題
 二 『新板小供うたづくし』翻刻
 おわりに
12 新出大阪版おもちゃ絵の歌謡資料紹介
 はじめに
 一 井上市衛版おもちゃ絵 解題
 二 井上市衛版おもちゃ絵 翻刻
 おわりに
13 田植踊歌の風流
 はじめに
 一 近世流行歌謡とかかわる田植踊歌
 二 近世芸能の歌いものとかかわる田植踊歌
 三 周辺地域の民俗歌謡とかかわる田植踊歌
 おわりに

II 歌謡と教化
1 『うすひき哥信抄』翻刻と解題
 はじめに
 一 『うすひき哥信抄』概説
 二 『うすひき哥信抄』翻刻
 おわりに
2 「うすひき歌」研究序説
 はじめに
 一 薗原旧富『臼挽歌』
 二 『うすひき哥信抄』
 おわりに
3 薗原旧富『臼挽歌』再考―名古屋市立鶴舞中央図書館蔵本『神風童謡歌 全』紹介―
 はじめに
 一 藤田徳太郎旧蔵『神国石臼歌』について
 二 『神風童謡歌 全』翻刻
 三 『神風童謡歌 全』と『神国うすひき歌 全』
 おわりに
4 薗原旧富の教化歌謡―『神風童謡歌 全』から『絵入 神国石臼歌 全』、そして『宇寿飛起哥』へ―
 はじめに
 一 薗原旧富について
 二 大阪教育大学小野研究室蔵『絵入 神国石臼歌 全』紹介
 三 旧富作教化歌謡の成立と展開
 おわりに
5 國學院高等学校藤田・小林文庫本『麦舂歌』翻刻と解題
 はじめに
 一 藤田・小林文庫本『麦舂歌』翻刻
 二 藤田・小林文庫本『麦舂歌』解題
 おわりに
6 如雲舎紫笛『いろはうた』小考
 はじめに
 一 如雲舎紫笛『いろはうた』翻刻
 二 如雲舎紫笛『いろはうた』の特徴
 おわりに

III 歌謡文学の周辺
1 手鑑『披香殿』所収仏教関連古筆切資料三点
 はじめに
 一 伝向阿筆「西要抄切」
 二 伝法守法親王筆「槙尾切」
 三 伝蓮如筆「浄土和讃切」
 おわりに
2 『浄土百歌仙』翻刻と解題
 はじめに
 一 『浄土百歌仙』翻刻
 二 『浄土百歌仙』解題
 おわりに
3 『釈教和歌百人一首』翻刻と解題
 はじめに
 一 『釈教和歌百人一首』翻刻
 二 『釈教和歌百人一首』解題
 三 『釈教和歌百人一首』の編者順道
 おわりに
4 『一休狂歌雀 絵入』小考
 はじめに
 一 『一休狂歌雀 絵入』翻刻
 二 『一休狂歌雀 絵入』解題
 おわりに
5 「鸚鵡小町」の基底
 


収録図版一覧
索引(人名・書名・事項索引/歌謡・和歌・道歌・俳諧索引)

著者略歴

著:小野 恭靖
1958年 静岡県沼津市生まれ。1981年 早稲田大学第一文学部日本文学専攻卒業。1988年 早稲田大学大学院文学研究科日本文学専攻博士課程単位取得退学。現在 大阪教育大学教育学部教授。博士(文学)。日本歌謡学会常任理事。[主要著書]『中世歌謡の文学的研究』(1996年・笠間書院/1995年度日本歌謡学会志田延義賞受賞)、『「隆達節歌謡」の基礎的研究』(1997年・笠間書院)、『近世歌謡の諸相と環境』(1999年・笠間書院)、『ことば遊びの文学史』(1999年・新典社)、『歌謡文学を学ぶ人のために』(1999年・世界思想社)、『絵の語る歌謡史』(2001年・和泉書院)、『ことば遊びの世界』(2005年・新典社)、『子ども歌を学ぶ人のために』(2007年・世界思想社)、『韻文文学と芸能の往還』(2007年・和泉書院)、『ことば遊びへの招待』(2008年・新典社)、『さかさことばのえほん』(2009年・鈴木出版)、『ことばと文字の遊園地』(2010年・新典社)、『戦国時代の流行歌 高三隆達の世界』(2012年・中央公論新社)等。

ISBN:9784757607781
出版社:和泉書院
判型:A5
ページ数:352ページ
定価:8000円(本体)
発行年月日:2016年02月
発売日:2016年02月04日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:DC
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ