医療法人の法律・会計・税務
監:野村資産承継研究所
編著:品川 芳宣
編著:成清 紘介
内容紹介
医療法人制度が創設されて以来、度重なる医療法の改正により医業を取り巻く経営環境は劇的に変化してきた。またそれに伴って医療法人の事業体としての形態も多様性を極め、その形態毎に適用される法律や会計基準、税法なども一律ではない。そこで本書では、医療法人(制度)の多様性を生むに至った経緯やその背景(沿革)を明らかにし、それに係る法律、会計、税務の諸問題を体系的に整理して解説。現在の医業税制問題の真相と解決の方向性にも言及した他に類をみない一冊。
● 多様な形態(種類)に応じた対応・処理が求められる医療法人の運営等に係る法律・会計・税務の諸問題を体系的に解説。
● 特に税務については、最近の税制改正等を踏まえて実務上もっとも問題となる「出資に係る税務」についても詳解。
● さらに、補論として、長年医業税制問題に取り組んできた筆者が「医業税制の二大課題」として執筆した「持分あり医療法人の今後の方向性」と「仕入れ消費税額転嫁の現状とその解決策」を収録した医業法人に係る法律・会計・税務の決定版となる一冊。
目次
1章 医療法人の沿革
第1節 制度の創成期
1 医療法人制度の創設(昭和25年)
2 医療法人に対する贈与税課税制度の制定(昭和27年)
3 特定医療法人制度の創設(昭和39年)
4 第一次医療法改正(昭和60年)
⑴ 改正の背景
⑵ 一人医師医療法人制度の創設
⑶ 自己資本の充実に関する規定の創設
⑷ 理事長、理事の要件
5 第二次医療法改正(平成4年)
⑴ 改正の背景
⑵ 附帯業務の範囲の拡大
⑶ 特定機能病院制度の導入
第2節 非営利性の強化期
1 医療法人の役員と営利法人の役職員の兼務に関する改正(平成5年)
⑴ 改正の背景
⑵ 医療機関の開設者に関する確認事項
⑶ 非営利性に関する確認事項
⑷ 平成24年の再改正
2 第三次医療法改正(平成9年)
⑴ 改正の背景
⑵ 医療法人の業務範囲の拡大
⑶ 特別医療法人制度の創設
3 第四次医療法改正(平成12年)
4 出資額限度法人制度の創設(平成16年)
5 第五次医療法改正(平成18年)
⑴ 改正の背景
⑵ 持分あり医療法人制度の経過措置型法人化
⑶ 社会医療法人制度の創設
⑷ 医療法人の監督体制の変更
⑸ その他の改正
第3節 持分なしへの移行期
1 第六次医療法改正(平成26年)
⑴ 改正の背景
⑵ 認定医療法人制度の創設
⑶ 医療法人の合併にかかる法人類型の見直し
2 第七次医療法改正(平成27年)
⑴ 改正の背景
⑵ 医療法人の経営の透明性の確保及びガバナンスの強化に関する事項
⑶ 医療法人の分割等に関する事項
⑷ 社会医療法人の認定等に関する事項
3 第八次医療法改正(平成29年)
⑴ 改正の背景
⑵ 認定医療法人制度の拡充
2章 医療法人の法律
第1節 医療法人の性格
1 非営利性
2 株式会社による医療機関の開設
3 MS法人
第2節 医療法人の設立
1 設立の意義
2 設立要件
⑴ 人的要件
⑵ 資産要件
3 設立手続の流れ
⑴ 事前相談・説明会
⑵ 定款・寄附行為の作成
⑶ 設立総会の開催
⑷ 設立の認可
⑸ 設立の登記
⑹ 開設の許可
第3節 医療法人の機関
1 機関とは
2 社員総会
⑴ 社員
⑵ 社員総会の権限
⑶ 社員総会の招集
⑷ 社員総会の決議
⑸ 社員総会の決議の瑕疵
3 評議員会
⑴ 評議員
⑵ 評議員会の権限
⑶ 評議員会の招集
⑷ 評議員会の決議
⑸ 評議員会の決議の瑕疵
4 理事
⑴ 理事の選任
⑵ 理事の職務
⑶ 理事の義務
⑷ 競業取引・利益相反取引の規制
⑸ 理事の報酬等の規制
⑹ 理事の終任
5 理事長
⑴ 理事長の選任
⑵ 理事長の権限
⑶ 表見理事長
6 理事会
⑴ 理事会の権限
⑵ 理事会の招集
⑶ 理事会の決議
⑷ 理事会の決議の瑕疵
7 監事
⑴ 監事の選任
⑵ 監事の職務の内容
⑶ 監事の権限
⑷ 監事の義務
⑸ 監事の報酬等
⑹ 監事の終任
8 役員等の損害賠償責任
⑴ 医療法人に対する責任
⑵ 第三者に対する責任
⑶ 役員等の連帯責任
第4節 医療法人の業務
1 本来業務
2 附帯業務
3 附随業務
4 収益業務
第5節 医療法人の持分
1 医療法人の持分とは
2 持分のない医療法人への移行
⑴ 定款の変更
⑵ 社員による持分放棄
⑶ 社会医療法人及び特定医療法人への移行
3 出資額限度法人への移行
第6節 医療法人の外部監督
1 事前監督
⑴ 定款変更の認可・届出
⑵ 事業報告書等の提出
2 事後監督
⑴ 報告要求及び立入検査
⑵ 改善命令
⑶ 業務停止命令
⑷ 設立認定取消
第7節 医療法人の合併
1 医療法人の統廃合
2 持分の譲渡
⑴ 持分譲渡の意義
⑵ 持分譲渡の当事者
⑶ 持分譲渡の手続
⑷ 入退社の手続
3 事業譲渡
⑴ 事業譲渡の意義
⑵ 事業譲渡の当事者
⑶ 事業譲渡の手続
⑷ 事業譲渡の効果
4 合併
⑴ 医療法人の合併
⑵ 合併の当事者
⑶ 合併の手続
⑷ 合併の効力
5 分割
⑴ 医療法人の分割
⑵ 分割の当事者
⑶ 分割の対象
⑷ 分割の手続
⑸ 分割の効力
第8節 医療法人の倒産
1 医療法人の倒産
⑴ 清算型と再建型
⑵ 法的整理と私的整理
⑶ 医療法人の倒産の特殊性
2 医療法人の私的整理
⑴ 地域経済活性化支援機構による再生支援
⑵ 中小企業再生支援協議会による私的整理
⑶ 事業再生ADR
⑷ 特定調停による私的整理手続
3 医療法人の法的整理
⑴ 民事再生手続
⑵ 医療法人の破産手続
3章 医療法人の会計
はじめに
第1節 医療法人の会計制度の沿革
1 医療法人制度創設時
2 病院会計準則の制定
3 第5次医療法改正
4 「医療法人における事業報告書等の様式について」の通知
5 四病院団体会計基準の制定
6 第7次医療法改正による医療法人会計基準及び運用指針の制定
第2節 医療法人の事業報告書等の作成、公告及び監査義務
1 医療法人会計情報の開示制度
2 作成義務
3 公告義務
4 監査義務
第3節 準拠すべき会計ルール
1 医療法人会計基準の特徴
⑴ 序言
⑵ 目的
⑶ 報告単位
⑷ 適用範囲
⑸ 原則主義の採用
2 病院会計準則・病院会計準則ガイドライン
⑴ 病院会計準則の役割
⑵ 病院会計準則適用ガイドラインの役割
3 中小医療法人が準拠すべき会計慣行
⑴ 医療法人の規模的分類と会計慣行
⑵ 中小会社の会計慣行との適合性
参考資料
⑴ 医療法人会計基準
⑵ 医療法人会計基準適用上の留意事項並びに財産目録、純資産変動計算書及び附属明細表の作成方法に関する運用指針
4章 医療法人の税務
第1節 法人税
1 医療法人種類別の課税
⑴ 総論
⑵ その他の留意事項
2 減価償却費
⑴ 医療機器の法人税法上の分類
⑵ 医療機器の耐用年数
⑶ 医療法人における特別償却又は法人税額の特別控除制度
3 社会保険診療報酬の所得の計算の特例
⑴ 制度概要
⑵ 特例の対象となる社会保険診療
⑶ 概算経費率
⑷ 制度適用の実態
4 役員給与
⑴ 役員給与の課税関係
⑵ 役員給与の例示
⑶ 役員の意義
⑷ 定期同額給与
⑸ 事前確定届出給与
⑹ 不相当に高額な役員給与(退職給与以外の役員給与)
⑺ 役員退職給与
⑻ 使用人給与・賞与・退職給与
第2節 医療法人のM&Aに関する税務
1 医療法人のM&Aスキームの選択
⑴ 医療法人を取り巻く現況とM&Aの関係
⑵ 持分譲渡
⑶ 事業譲渡
⑷ 合併
⑸ 分割
⑹ まとめ
2 スキームごとの税制上の取扱い
⑴ 持分譲渡
⑵ 事業譲渡
⑶ 合併
⑷ 適格吸収分割型分割
⑸ 税務上の取扱いにかかる比較表
3 M&Aにおける税務上の個別論点(役員退職慰労金の支給)
第3節 消費税
はじめに
1 消費税の課税の仕組み
⑴ 消費税の性格
⑵ 基本的な仕組み
⑶ 申告及び納税
2 納税義務者
⑴ 原則
⑵ 納税義務の免除
⑶ 課税事業者の選択の届出
⑷ 一般課税制度による原則課税が強制される場合
3 課税範囲
⑴ 概要
⑵ 非課税取引
⑶ 医療関係の売上に関する課税売上、非課税売上の区分
⑷ 介護関係の売上に関する課税売上、非課税売上の区分
4 納付税額の計算方法
⑴ 概要
⑵ 控除対象仕入税額の計算方法
むすびに
第4節 源泉所得税
はじめに
1 源泉徴収制度の概要
⑴ 納付税額の確定手続
⑵ 源泉徴収をする時期
⑶ 法定納期限
⑷ 未徴収又は未納付の場合
⑸ 過大納付の場合
2 源泉徴収税額の計算方法
⑴ 概要
⑵ 給与所得に対する源泉徴収
⑶ 退職所得に対する源泉徴収
⑷ 報酬・料金等に対する源泉徴収
3 現物給付課税
⑴ 概要
⑵ 非課税項目
⑶ 現物給付の評価方法
⑷ 医療法人における留意点
第5節 出資に係る税務
1 総論
2 医療法人の持分評価の概要
⑴ 持分の評価方法
⑵ 医療法人の出資の評価方法の特徴
⑶ 出資の評価方法の問題点
⑷ 出資額限度法人の出資の評価方法
⑸ 出資の譲渡の際の価額
⑹ 持分あり医療法人の払戻価額
3 持分なし医療法人への移行に係る税制について
⑴ 基金拠出型法人ではない持分なし医療法人に移行した場合の課税関係
⑵ 基金拠出型法人に移行する際、出資者全員が出資額部分のみを基金として振り替えた(剰余金部分は放棄した)場合の課税関係
⑶ 基金拠出型法人に移行する際に、利益剰余金部分も含めて基金として振り替えた場合の課税関係
4 認定医療法人制度について
⑴ 総論
⑵ 出資者に係る相続等の課税に係る納税猶予制度
⑶ 医療法人に対するみなし贈与税の非課税制度
⑷ 認定医療法人制度の手続き
⑸ 認定の取消しと課税関係
⑹ 小括
5 医療法人の新規設立にかかる留意点について
5章 補論 医業税制の二大課題
第1節 医療法人の経営形態の実態とその論点-持分あり医療法人の今後の方向性-
はじめに
1 医療法人制度における「持分」に対する変遷
⑴ 問題の所在
⑵ 持分制度の充実期
⑶ 公益性(非収益性)の強化と持分の制限
⑷ 持分制度の原則禁止
2 認定医療法人の発足とその問題点
⑴ 持分原則禁止の問題
⑵ 認定医療法人制度の発足
⑶ 認定医療法人制度の拡充(平成29年度改正)
3 持分あり医療法人に対する課税の現状と問題点
⑴ 問題の所在
⑵ 出資額限度法人
⑶ 出資額限度法人以外の法人
4 医療法人の出資の評価とその問題点
⑴ 出資(持分)の評価
⑵ 株式等の評価との異同とその問題点
5 医業における持分あり医療法人の存在意義
⑴ 問題の所在
⑵ 医業の本質(仁術と算術のバランス)
⑶ 法人成りの背景
⑷ 株式会社参入論との関係
⑸ 小括
6 持分あり医療法人の方向性
⑴ 問題の所在
⑵ 持分なし医療法人への移行
⑶ 持分あり医療法人として存続
⑷ 立法措置等による解決
むすびに
第2節 社会保険診療報酬非課税制度の課題-仕入れ消費税額転嫁の現状とその解決策-
はじめに
1 診療報酬非課税と仕入れ消費税額
⑴ 非課税の仕組み
⑵ 仕入れ消費税額の転嫁の現状
2 診療報酬非課税の社会的影響
⑴ 一般的影響
⑵ 神戸地裁平成24年11月27日判決
3 仕入れ消費税額転嫁の代替案
⑴ 代替可能な転嫁方法
⑵ 解決策統一の必要性
4 立法当局の動向と問題点
⑴ 問題の所在(税制は政治)
⑵ 平成25年度税制改正大綱(平成25年1月24日)
⑶ 平成26年度税制改正大綱(平成25年12月12日)
⑷ 平成27年度税制改正大綱(平成26年12月30日)
⑸ 平成28年度税制改正大綱(平成27年12月16日)
⑹ 平成29年度税制改正大綱(平成28年12月8日)
⑺ 平成30年度税制改正大綱(平成29年12月14日)
⑻ 平成31年度税制改正大綱(平成30年12月14日)
5 仕入れ消費税額転嫁の方向性
⑴ 政治的解決の問題点(限界)
⑵ 仕入れ消費税額転嫁の解決策
むすびに
索 引
ISBN:9784754727376
。出版社:大蔵財務協会
。判型:A5
。ページ数:496ページ
。定価:3800円(本体)
。発行年月日:2019年12月
。発売日:2019年12月30日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:MBN。