「帝国」の文学・プロローグ
第一章 「国民」というスキャンダル
---島崎藤村『破戒』他
1 二つの視点
2 世俗化と他者性のスティグマ
3 「政治小説」としての『破戒』
第二章 「女」という非国民
---島崎藤村『春』、田山花袋「蒲団」他
1 『破戒』/「蒲団」/『春』
2 「戦士」たちの「父殺し」
3 「生命」という美学イデオロギー
4 「女は存在しない」
第三章 「非-真理」にいたる病
---田山花袋『生』、岩野泡鳴「耽溺』他
1 「自然」イデオロギーの成立過程
2 描写論のディレンマ
3 詩から散文へ
第四章 「冷笑」するオリエンタリズム
---永井荷風「花火」『あめりか物語』『ふらんす物語』他
1 ゾライズム脱却の課題
2 「自然」nature「もの」
3 マイノリティたち
4 享楽する父
第五章 「父殺し」 の二つの型
---田山花袋『東京の三十年』、徳田秋声『足迹』『黴』他
1 文学的「自殺」
2 「黴」としての父権
3 三つの葬儀
第六章 ファルスをめぐる「大逆」
---石川啄木「時代閉塞の現状」、森鴎外「かのやうに」、幸徳秋水「基
督抹殺論」、管野すが子「死出の道艸」他
1 「大逆」事件と自然主義
2 管野すが子と横山芳子
3 「王殺し」の回帰と帰結
第七草 漱石と天皇
---「思ひ出す事など」『彼岸過迄』『こゝろ』『道草』他
1 「国民作家」の沈黙
2 「大逆」としての修善寺の大患
3 「彼岸」への「道草」
エピローグ、あるいは地の果てへの「道艸」
---中上健次『地の果て 至上の時』
1 「国民作家」への道を閉ざす
2 大石誠之助の末裔
3 「王殺し」の不可能と、「違う」の一語
あとがき ・ 注