まえがき[長村裕佳子・坪谷美欧子]
Ⅰ部 戦後日本をめぐる民族的マイノリティという経験
第1章 ある在日朝鮮人一世女性の「教育達成」――自分史『無窮花』を読む[橋本みゆき]
1.はじめに
2.在日朝鮮人の形成と教育機会の構造――『無窮花』の背景
3.盧成玉さんの人生物語――『無窮花』を貫く「教育」への道
(1)『無窮花』について
(2)渡日までのストーリー
(3)日本で生きる
4.高校卒業までの「苦難」――『無窮花』の多角的考察
(1)教育そのもの:受ける機会/生かす機会
(2)家族の経済生活
(3)民族的要因・民族間関係
5.おわりに
コラム1 いまあらためて、在日朝鮮人の民族的現実を問う[李洪章]
第2章 横浜中華街の「中華民国(台湾)系華僑」――双十節を祝っているのは誰か[岡野翔太(葉翔太)]
1.はじめに
2.「中華民国(台湾)系華僑」に注目する意義
3.「台湾系」という用語――台湾にルーツが無い「台湾系」?
4.語られない「中華民国」籍/支持の在日華僑
(1)「中華民国広東省」にルーツを持つ人びとの今
(2)日本のメディア報道・公的書類から消えた「中華民国」
(3)日本では「無国籍」、台湾では「無戸籍」となる人びと
5.横浜中華街で「双十節」を祝う人びと
(1)第二次世界大戦以前の「双十節」
(2)第二次世界大戦直後の「双十節」
(3)中華民国が台湾に移転して以降の横浜の「双十節」
(4)日華断交後の「双十節」
(5)中華民国の政治体制の変化と横浜の「双十節」
6.おわりに
コラム2 孫文記念館と神戸華僑歴史博物館――「多文化共生」の先駆け[安井三吉]
第3章 アメラジアンが拓く“共生”[野入直美]
1.ようこそ、アメラジアンスクール・イン・オキナワへ
2.アメラジアン研究に意義はあるのか?
3.「アメラジアン」を歴史的に解きほぐす
4.沖縄における「国際児」支援
5.アメラジアンスクールの卒業生たち
6.沖縄のアメラジアンから“共生”を問い直す
第4章 フィリピン日系人とは誰か――日本の帝国主義の歴史とかれらの現在進行形の社会運動[北田依利]
1.はじめに
2.戦前にフィリピンへ渡った日本人
3.第二次世界大戦終了と引揚
4.フィリピンの戦後
5.日系人の国籍
6.外国人労働需要とフィリピン日系人
7.おわりに
Ⅱ部 「帰還移民」の経験、日本社会の経験
第5章 老齢化した中国残留孤児の困難――エスニック・マイノリティ「日本人」という観点と介護場面を通しての検討[山崎哲]
1.はじめに
(1)エスニック・マイノリティ「日本人」との共生
(2)筆者の祖母の経験
2.中国残留孤児の歴史的背景
(1)中国残留孤児とは
(2)「中国残留孤児は今……」
3.中国残留孤児と介護
(1)医療場面で日本語ができないことの恐怖
(2)介護施設で「中国人」として人種化・他者化される中国残留孤児
(3)中国残留孤児の集う介護施設の誕生と増加
(4)中国残留孤児が多く通う介護施設の実際
(5)「同文化間介護」の需要
4.考察
5.おわりに
第6章 日伯移民の歴史を繋ぎ、紡ぐ――継承ポルトガル語教師の経験[拝野寿美子]
1.はじめに
2.ブラジルに移住した日本人
3.日系人/ブラジルの日系人
4.在日ブラジル人
5.日本に住むブラジル人の子どもたちと日本語/ポルトガル語
(1)教育の連続性と言語の力
(2)日本の学校とブラジル人の子ども
(3)求められるポルトガル語力の変化と継承ポルトガル語
6.移民の子ども/孫であった継承ポルトガル語教師の経験
7.おわりに
第7章 ペルー人と日本社会の35年――日本での多様性と文化資本[小波津ホセ]
1.はじめに
2.ペルーから日本へ
3.日本にいるペルー人
(1)沖縄県とのつながり
(2)日系人・非日系人とペルーでの居住地域
(3)日本のペルー人の人口動態と居住地域
(4)ペルー人二世以降の現状
4.地域のペルー人
(1)ペルー人と栃木県
(2)ペルー人と神奈川県
5.おわりに――ペルー人の35年
第8章 〈邂逅〉が創る地域社会――横浜市鶴見区に暮らす2つの沖縄系集団に注目して[藤浪海]
1.はじめに
2.沖縄からの離散と鶴見への集住
(1)アジア太平洋戦争以前の沖縄からの離散
(2)戦後の沖縄からの離散と1980~90年代の鶴見への集住
3.沖縄ルーツの日本人住民における〈邂逅〉
(1)南米系移民を否定的に捉えるAさん
(2)南米系移民を支援したBさん夫妻
4.南米系移民における〈邂逅〉
(1)沖縄県人会との関係を築くCさん
(2)移民支援団体で地域住民との関係を築くDさん
5.関わり合いのもとで創られる地域社会
(1)沖縄県人会との関係形成の進展
(2)移民への認知を社会に広げる取り組み
6.おわりに
Ⅲ部 グローバル化と新移民、そして多文化共生
第9章 日本における難民の受け入れ[石川えり]
1.はじめに
2.日本における難民受け入れの概要
3.難民申請の手続きと生活上の課題
4.社会統合における課題
5.地域で暮らす難民
6.日本における難民受け入れの特徴と展望
第10章 インドネシア人看護師の訪日経験――EPA制度の受け入れの現状と課題[村雲和美]
1.はじめに
2.日本社会の変容とEPA看護師の受け入れとニーズ
(1)日本社会での外国人労働者数
(2)外国人看護師受け入れの背景と現状
3.EPA看護師とは
(1)枠組みと特徴
(2)受け入れ機関と来日までの流れ
(3)制度の課題
4.EPAインドネシア人看護師2名の経験談
(1)日本とインドネシアを往来する女性看護師Aの経験
(2)第1陣の存在に憧れて来日した男性看護師Bの経験
5.おわりに
第11章 外国人住民の受け入れと「多文化共生」――高齢化が進む団地に住まうという経験[坪谷美欧子]
1.はじめに
2.移民史における外国人の団地居住
(1)住宅団地における外国人集住
(2)自治体や地域社会ベースの「多文化共生」
3.ネオリベラリズム下の地域福祉に取り込まれる「多文化共生」?
4.団地に住まうという経験――日本人女性と外国人女性のライフストーリーから
(1)日本人女性Aさん
(2)ベトナム人女性Bさん
5.考察
(1)団地での「共生」経験からの含意
(2)「難民性」と主体性の中で
(3)集住という経験の再評価と問い直し
6.おわりに――ともに老いるという経験へ
第12章 ブラジル人ディアスポラの視点からみる在日ブラジル人――コミュニティ形成と在外投票の分析を手がかりに[グスターボ・メイレレス]
1.はじめに
2.ブラジルにおける人の移動の小史
3.在外ブラジル人の動き
(1)ヨーロッパにおける移民政策の厳格化とブラジル人コミュニティ
(2)移民政策、国家安全保障、アメリカにおけるブラジル人コミュニティ
(3)日本の労働市場と在日ブラジル人への影響
3.ブラジル政府における在外ブラジル人政策
4.在外投票
5.結論
終章 重層化する「人の移動」と「多文化共生」――出入国管理体制を中心として[蘭信三]
1.はじめに
2.スポーツのグローバル化という帰結
(1)パリ・オリンピックの衝撃
(2)「スポーツのグローバル化」の背景
(3)「昭和のスポーツ・ヒーロー」を知っていますか?
3.帝国崩壊と「昭和のスポーツ・ヒーロー」
(1)「昭和のスポーツ・ヒーロー」の出自
(2)「単一民族」神話と「昭和のスポーツ・ヒーロー」
(3)「社会派アスリート」のさきがけとして
4.戦後日本における外国ルーツの人びとの動向
(1)帝国崩壊と占領が構築した戦後在留「外国人」
(2)冷戦が抑圧した国境を越える「人の移動」
(3)冷戦緩和と在留外国人の胎動
(4)冷戦崩壊、グローバル化と在留外国人の急増
5.戦後日本における入国管理体制
(1)敗戦後日本の変化
(2)戦後日本における国民の定義
(3)旧植民地出身者の国籍問題
(4)戦後日本の出入国管理体制とは――「一九五二年体制」をめぐって
6.「多文化共生」への歩み
(1)中国残留日本人の「遅れた帰国」の意義
(2)インドシナ難民がもたらしたもの――「内外人平等原則」というインパクト
(3)在日コリアンという経験
7.おわりに――「五二年体制」と「多文化共生」のせめぎ合い
あとがき[長村裕佳子・蘭信三]
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