序章 中華人民共和国における腐敗と反腐敗研究の現状と課題
第1節 中国の腐敗に関する研究
1 改革開放以前の腐敗をカバーしている研究
2 改革開放後の腐敗に関する研究
第2節 中国の腐敗研究をめぐる課題――先行研究の再検討
第3節 中国の反腐敗に関する先行研究および問題点
第4節 研究課題と研究方法
1 研究課題
2 研究方法
第5節 本書の利用資料および研究の制限
1 利用資料
2 研究の制限
第6節 腐敗とは何か
1 腐敗の定義に関する5つのアプローチ
2 本書が利用する腐敗の定義
第7節 本書の構成と各章の概要
第Ⅰ部 中国の腐敗と反腐敗における連続性
第1章 改革開放前の中国における腐敗の深刻さ――黒竜江省王守信横領事件をめぐる検証
はじめに
第1節 王守信事件およびそれを生み出した制度的要因
1 王守信横領事件の概要
2 腐敗の発生を促進する制度的要因
3 小括:腐敗の発生を促進する制度的要因
第2節 王守信事件の摘発プロセスと『人妖之間』をめぐる攻防
1 王守信横領事件はいかにして摘発されたのか
2 『人妖之間』をめぐる攻防
3 小括:改革開放以前の反腐敗の制度化のレベルの低さ
おわりに
第2章 改革開放後「官商」の興起――党政機関・幹部およびその家族のビジネス関与
はじめに
第1節 1980年代の党政機関・幹部のビジネス関与
1 1980年代の党政機関・幹部のビジネス関与の概況
2 ビジネスブーム・公司ブーム中での腐敗現象の例
第2節 党政機関・幹部のビジネス関与の要因分析
1 党政機関・在任幹部のビジネス関与
2 幹部の若年化と機構改革
第3節 政府の対策――公司整理
1 1985年上海での公司整理
2 1989年「康華」公司への整理
3 公司整理の効果の不十分さとその原因
4 政策の反復
第4節 「官商」の別形態――幹部家族のビジネス関与
1 幹部の配偶者・子どものビジネス関与
2 幹部家族のビジネス関与のケース
3 なぜ幹部家族のビジネス関与が禁じられないのか
おわりに
第3章 「制度設計」を重視した反腐敗キャンペーン――1998年の反密輸反腐敗キャンペーンを中心に
はじめに
第1節 1990年代の密輸と税関腐敗
1 建国以来密輸の変容と1990年代密輸の規模
2 1990年代における密輸と腐敗の関係
第2節 密輸がもたらした影響および反密輸反腐敗キャンペーンの直接的効果
1 関税に対する影響
2 国有企業の生産に対する影響
第3節 1998年の反密輸反腐敗キャンペーンにおける制度の整備
1 1998年の反密輸反腐敗キャンペーン
2 反密輸反腐敗における制度の整備
おわりに
第Ⅱ部 改革開放前後の中国の腐敗と反腐敗の変容性
第4章 改革開放前後の中国における腐敗――なぜ中高級レベル幹部の腐敗が増加したのか
はじめに
第1節 改革開放前後の腐敗状況の変容
1 改革開放以前の腐敗の状況
2 改革開放以前における異なるレベルの幹部の腐敗の特徴
3 データから見た改革開放以降の腐敗状況
4 まとめ
第2節 なぜ中高級レベルの幹部による腐敗は増加したのか
1 毛沢東時代の腐敗――政治的成層と幹部階層化の影響
2 改革開放以降――経済的成層が支配的に
おわりに
第5章 改革開放前後の中国における法紀型権力濫用――その変容と含意
はじめに
第1節 法紀型権力濫用の概要
第2節 改革開放前の法紀型権力濫用
1 建国初期の法紀型権力濫用
2 1958年以降の「違法乱紀」
3 陳情から見る幹部の「違法乱紀」
第3節 改革開放前後の法紀型権力濫用の変容――時系列データを用いて
1 陝西省の状況
2 改革開放後の全国の「法紀案件」データ
第4節 まとめ
おわりに
第6章 改革開放前後の中国における反腐敗――制度化と濫用の可能性
はじめに
第1節 改革開放前の政治闘争と反腐敗
1 関連概念の整理
2 改革開放前の政治闘争の方式
3 改革開放以前の反腐敗――政治運動の付属物
4 まとめ
第2節 改革開放以降――路線闘争の衰退と反腐敗の制度化
1 改革開放後の路線闘争の衰退
2 改革開放後の反腐敗の制度化――反腐敗機関の整備をめぐって
第3節 濫用されかねない反腐敗――「晋江偽造薬案」を例として
1 晋江偽造薬事件の発生と中紀委の調査
2 福建省の対応と公式の調査結果
3 経済犯罪の背後にある権力の攻防
4 脱イデオロギーの下で濫用されかねない反腐敗
おわりに
終章 中国の腐敗と反腐敗――連続と変容の間
第1節 本書の結論およびそのさらなる含意
1 本書の結論
2 本書の結論がもつさらなる含意――「新特権」としての腐敗
第2節 中国の腐敗・反腐敗研究への展望――さらなる研究にむけて
あとがき
付録 1949~1963年「党規国法」で処罰された121人の幹部
参考文献
索引